MOOC | 太陽電池と化学工学
横浜国大:2012年度講義予定資料 非常勤講師:山本博志 2012.9.6
覗き見されないように、
、 httpsと鍵マークが無い場合には、読み込み直してください。
https://pirika.com/JP/DIY/Solar.html
日本でしか通用しない携帯電話をガラケーというように、日本でしか通用しない労働者をガラレバ(ガラパコス労働者=Labor)というらしい。Pirikaは、MOOC(Massive Open Online Course:世界中の大勢の人々が参加できるオンラインのオープン授業)を(単位はあげられないが)目指している。アメリカのMITなどの授業がオンラインで受講(しかもただで)できる今、どんな大学に在籍しているか?は意味が無くなって行く。コンピュータとネットワーク、後は、やる気さえあれば世界最先端の教育を受ける事ができる。もちろん社会人であっても。世界のその変化について行かれなければ、大学の先生であってもガラレバになってしまう。「ガラレバを採用するぐらいなら中国、韓国の学生を採用しよう」って言われないように頑張って勉強しよう。
「このままではガラレバだよ」と感じたら、まずこのMOOCから始めて徐々に読み進めよう。

YMB12E(Chromeなどのブラウザー上で分子をお絵かきし、様々な物性を瞬間で計算するソフトウエアー)2012年度版YMBとVSMRの使い方はこちらを参照
企業からの訪問者はYMB12Eではなく、HSPiP ver. 4に搭載のY-Predictをお使いください。HSPiPを買うと何ができるか? 概要をお読みください。
(赤文字の会社名は横浜国大の卒業生がいる会社を表す)
化学工学の中で最も重要なのは蒸留であろう。これは蒸気圧と温度との関係の学問だ。

ある化合物を熱をかけると、一部が蒸発し蒸気圧が発生する。それをプロットすると上のようなPressure-Temperature(P-T)線図が得られる。その蒸気圧が大気圧(760mmHg)に等しくなった点が標準沸点だ。化合物によってこのP-T線図は異なるので、2つの化合物を分けたい時には蒸留を用いる。このP-T曲線をチャートから読み取るのでもいいが、多くの場合Antoine式などを使ってFittingを行い、任意の温度での蒸気圧が計算で簡単に出せるようにしておく。このAntoine式へのFittingに関してはこちらのページに詳しく纏めてあるし、P-TのデータからAntoine定数を決定するプログラムもそこにおいてあるので参照して欲しい。
Antoine式とは以下の式の定数、A,B,Cを化合物ごとに求め温度から圧力Pを求める式だ。
log(P[mmHg])=A-B/(T[℃]+C)
この式のおおもとは、Clausius‐Clapeyron式である。
ln(Pvp)=A-B/T B=ΔHv/RΔZv
ΔHv:蒸発潜熱,R:気体定数,ΔZv:圧縮係数の差(狭い範囲でBは温度によらず一定)
つまり、 Clausius‐Clapeyron式の定数Bは化合物の蒸発潜熱と相関があるはずである。この式とAntoine式を比べてみると、Cの項が無いだけで、同じものであることが判る。すなわち、Antoine定数のBは蒸発潜熱と相関があるはずである。
また、Antoine Cのパラメータは分子間相互作用によって、加えた熱が蒸発に有効に使われない(蒸気圧曲線が寝てきてしまう)ことを補正するパラメータだ。水酸基を分子中に多く持つ化合物などではCの値が小さくなる。非極性の炭化水素などでは、230近辺の値になる。

前ふりはこんな所で、実際に塗る色素増感太陽電池の設計について見ていこう。
とは言っても、ここで扱うのは、ポルフィリン骨格を有機合成した際にできたものを、原料や副生成物から蒸留分離しようという話ではない。(もっとも、それをやりたいなら、YMB12Eを使えば任意の構造の化合物のAntoine定数は求まるので、可能ではあるが。)かといって、ハンセンの溶解度パラメータを使って溶解度の推算をしようというのでもない。
この塗る太陽電池で脚光を浴びているのが、三菱化学が開発したものだ。

特許を調べてみよう。
JP 2011-166062
ビシクロポルフィリン化合物及び溶媒を含有する光電変換素子半導体層形成用組成物、それを用いて得られる光電変換素子
これが一番わかり易いだろう。何をやっているのか簡単に説明しよう。
色素増感太陽電池にはポルフィリン骨格(下の図の右の化合物)を持ったものを使うのだが、この構造の化合物は溶媒にはほとんど溶解しない。そこで、下の図の左の化合物(これは溶媒に可溶)を作って、塗布して熱をかけることによってMe2C=CH2を飛ばして太陽電池を作ろうというものだ。

カーテンや、ビルの外装、車の外装などに塗って太陽電池にできてしまうので非常におもしろい。
ついでに、もう少し特許を調べた所、広島大学からも出ていた。
JP WO2008/108442
新規ポルフィラジン誘導体およびその中間体、新規ポルフィラジン誘導体及びその中間体の製造方法、並びにその利用
そこでは、チオフェン骨格を導入することによって、高い有機溶媒溶解性を出すとクレームしている。

長鎖のアルコキシ基を導入すると溶解性はあがるが、アルキル基間のファンデルワールス力が強くなるため、分子同士が規則正しく整列した構造を取ることが難しくなり、結晶性薄膜を作りにくくなる。そのため、高い分子配向性(高い結晶性)が要求される電子物性の発現において不利であり、高性能の機能性デバイスを作製する上で障害となるという問題がある。と記載されている。
それではこれを題材に”化学工学的”にポルフィリンやフタロシアニンの溶解を考えてみよう。
ポルフィリンやフタロシアニンは共役化合物と呼ばれる化合物で、2重結合が交互に、しかも2次元の平面上に広がっている。そうしたものの最たるものはグラフェンだろう。

こうした化合物は、平面上にπ電子が広がった構造をとり、πーπスタッキングという力によって分子同士が強く相互作用しており、溶解性は非常に低い。では、どうしたらこのπーπスタッキングという力を定量化できるだろうか? 分子動力学(MD)や分子軌道法を使って様々な研究がなされている。
これを、圧力と温度の関係から見てみよう。文頭で述べたようにこの関係は、Antoine定数で表現される。
YMBを使って、各化合物の絵を描き、物性を計算し、Antoine B とAntoine Cの値を表に入れなさい。
| Name | Formula | Antoine B | Antoine C |
| benzene | C6H6 | ||
| naphthalene | C10H8 | ||
| anthracene | C14H10 | ||
| naphthacene | C18H12 | ||
| cyclohexane | C6H12 | ||
| trans-decahydronaphthalene | C10H18 | ||
| 3cHex | C14H24 | ||
| 4cHex | C18H30 |
また、三菱化学や広島大学の特許の化合物の物性を見る上で、ピロール、チオフェン類縁化合物の以下のものを同様に計算しなさい。
| Name | Formula | Antoine B | Antoine C |
| dibenzopyrrole | C12H9N | ||
| indole | C8H7N | ||
| pyrrole | C4H5N | ||
| 2,5-Dimethyl Pyrrole | C6H9N | ||
| Skatole | C9H9N | ||
| 2-ethylthiophene | C6H8S | ||
| 2-propylthiophene | C7H10S | ||
| thiophene | C4H4S | ||
| 2-METHYL BENZOTHIOPHENE | C9H8S |
3cHex, 4cHexは文献値が無いが、他の化合物についてはDipper801データベースに温度と蒸気圧のテーブルがあり、それを元にAntoine定数を決定した(決定方法はPirikaのこちらのページを参照)。それをYMBでの計算値と比較した所、下のように良好にAntoine定数を推算できている事がわかった。


この値のうち、Antoine Bは蒸発潜熱を示している。つまり分子間力に打ち勝つためのエネルギー差を示している。

それをC6の環の数に対してプロットすると上のような図になる。つまり、同じ炭素の数であっても、芳香族のAntoine Bの値は環状アルカンの値よりも大きくなる。つまり分子間力に打ち勝つには多くの熱エネルギーが必要になる。また容易に類推できるだろうが、共役系が大きくなるとその差はどんどん広がる。これが化学工学的にπーπスタッキングという力を評価する一つの方法だ。

極性を示すAntoine Cの値は芳香族と環状アルカンで差はない。
ここで行いたいのは、三菱化学の化合物(M-Pat)とPhenyl Pyrrolの差を見たい。
M-Pat
PhPyrrol
ところが、下のグラフに示すように、Antoine Bの値は分子が大きくなるに連れ、値が大きくなるので炭素数の違うものは直接的には比べられない。

そこで、Antoine Bを分子量で割ったものについてプロットしてみる。

すると赤四角のフェニルピロールに対して、M-Patの化合物(緑三角)は分子量あたりの蒸発潜熱が小さいことがわかる。すなわち分子間力が小さく溶解しやすい構造であることが定量的にわかる。チオフェンの化合物ではチオフェンにフェニルがついたものが、分子間力が小さく溶解しやすい構造であることがわかる(一番右の紫のX)。この両者がAntoine B/MWの値がほとんど同じなのが面白い。これ以上凝集力を下げると、結晶性薄膜にならなくなるのだろう。
このようなやり方で分子間力を評価できるのは、化学工学を学んだ者だけができる特権なので是非使いこなしてみよう。
ポルフィリン側はp型半導体になる。これだけでは太陽電池にならず、n型半導体と組み合わせる必要がある。三菱化学の特許ではn型半導体にフラーレンを使っている。


これらの修飾されたフラーレンの溶解性のデータは記載されていないが、2011年講義資料でフラーレン単独の溶解性について解説している。参考にして欲しい。
そうして、できたものを積層させ太陽電池を作るのだが、これらの素材は湿気や酸素に弱いのでバリアーフィルムが必要になる。フィルムの酸素の透過性については2011年講義資料を参照のこと。太陽電池のレベルになると樹脂単独では無理で無機物の蒸着フィルムが使われる。
バックシートにはPETに無機物をコーティングしたものが使われる。
三菱樹脂:テックバリア、PETにシリカをコーティング
凸版印刷:SiOx, ITO
クレハ:セレール
三容真空工業:X-Barrier シリカ
など。
DPP(TBFu)2 :3,6-Bis[5-(2-benzofuranyl)-2-thienyl]-2,5-bis(2-ethylhexyl)pyrrolo[3,4-c]pyrrole-1,4-dione、
Adv. Funct. Mat. 19, 3063 (2009), HSP determination in Adv. Funct. Mat.1, 211 (2011)には、実験から求めた値として、HSP値、[19.3, 4.8, 6.3]が記載されているという。側鎖の設計などは、HSPiPユーザーは自分でやってみよう。
Drag=回転, Drag+Shift キー=拡大、縮小, Drag+コマンドキーかAltキー=移動。
もしiPadやChrome、Safari (iPad/iPhoneのMobile Safari)、FireFoxなどのHTML5対応のブラウザーをお使いなら、上にキャンバスが現れるだろう。 溶媒をクリックすれば溶媒の名前が現れる。
どの溶媒がどの領域を溶解しているかを、溶媒をクリックしながら確認して欲しい。
もっと化学工学的な太陽電池
シャープ集光型太陽電池セルで世界最高変換効率43.5%を達成(頑張れ、シャープ!!)とある。
太陽電池パネルの発電効率は、パネル温度に依存していて、パネル温度が上昇すると低下することが知られている。それを避けるためにパネルを冷却する必要がある。化学工学的にはあるものの温度を下げるのは熱交換器だろう。特許を調べてみると2種類の方法が見つかった。
1つ目は、JP 2010-278405 A スマートソーラーインターナショナルの「太陽光発電システム及び太陽光発電装置」という特許で、新聞発表では代替フロンを用いていると発表されているが、特許ではエタノールを使っている。モジュールを冷却装置(62)に封入した。装置内は冷却液(64)で満たされている。 図示すように、レンズ(61)により集光され、シリコンセルとガリウムアルミニューム アーセナイドセルの動作時のセル温度が上昇しても、瞬時に冷却液が熱を奪い、導管(6 5)を通じて温度が上がった冷却液が、放熱器(63)に輸送され冷却される。この冷却液が導管により集光部に戻されるため、再びセル・モジュールが冷却される。とある。つまりドブ漬けで冷却するシステムだ。放熱先では水をあたため温水としても利用する。

2つ目は、JPA_2011077379 ジャスト東海の「太陽電池パネルの吸放熱システム」という特許でヒートパイプを利用したものだ。

ヒートパイプとは、密閉容器内に少量の液体(作動液)を真空密封し、内壁に毛細管構造をつけたものだ。ヒートパイプの一部が加熱されると
加熱部で作動液が蒸発(蒸発潜熱の吸収)
低温部に蒸気が移動
蒸気が低温部で凝縮(蒸発潜熱の放出)
凝縮した液が毛細管現象で加熱部に還流
という一連の相変化が連続的に生じ、熱がすばやく移動する。
これはつまり蒸留と同じ原理だ。

液体は温度が沸点に達すると、全てが気化するまでは温度が上がらない。つまり沸点が30℃の液体が発熱体に接していると、発熱体が30℃になると蒸発潜熱を奪いながら蒸発するので発熱体は蒸発潜熱分冷却される。30℃の蒸気が上の方にたどり着いて、そこの部分が30℃以下であれば蒸気は液化して凝集熱を出す。例えばビルの空調に利用する場合には、部屋の温度が30℃に達すると気化して、ビルの屋上が27℃(パイプの端にガーゼを巻いて水で湿らせる。風が吹いていて、水の気化熱が奪われればさらによい)だと液化(放熱)して毛細管現象で室内に戻る。パイプラインを温める、コンピュータのCPUを冷却するなどに使われている。LiBなどのバッテリーも温度が高くなると性能が落ちるので、ヒートパイプは有用だろう。特許ではアルコール、アセトン、HCFC-141b、142bなどが記載されている。
最初の特許の冷媒を評価するのであれば、熱伝導方程式、
![]()
を解くために、比熱と熱伝導度が必要になるが、これはYMBで計算できる。
次の特許の作動液を評価するのであれば、液体の沸点における蒸発潜熱がわかればいいが、これもYMBで計算できる。
熱伝導度の推算に関してはPirikaのこちらの記事を参照
蒸発潜熱にの推算に関してはPirikaのこちらの記事を参照
それでは代表的な溶媒を実際に評価してみよう。
| 溶媒 | 示性式 | BP(℃) |
| エタノール | CH3CH2OH | 78.29 |
| アセトン | CH3C(=O)CH3 | 56.29 |
| HCFC-141b | CCl2FCH3 | 32 |
| HCFC-141a | CHCl2CH2F | 73 |
| HFE 7000 | CH3OC3F7 | 34.18 |
| HFE 7100 | CH3OC4F9 | 60.05 |
| Pentafluoroethyl methyl ether | CH3OC2F5 | 5.51 |
| 2-fluoro-1-butene | CH2=CFCH2CH3 | 24.5 |
自由研究
耐熱性高分子もその多くは芳香環を多く持った構造をしている。そうしたポリマーのTg点と繰り返し単位のAntoine定数を比較してみよう。
例えば、カルボン酸が2つベンゼン環に付加した化合物は、付加した位置によってo-,m-,p-体が存在する。そのAntoine定数を比較してみる。
o- 7.7449 2122.6 111.178
m- 7.7387 2653.5 65.949
p- 7.6750 2876.6 40.552
p-体はテレフタル酸と呼ばれ、PETの原料になる。汎用ポリマーでは耐熱性が高く硬めのポリマーになる。o-体はフタル酸と呼ばれ、これは可塑剤の原料だ。粘調な液体となりポリマーを柔らかくするのに使われる。Antoine Bの値からも明らかだろう。
企業からのコメント:
C社:特許の解析は実践的で、自分の大学時代にこのような授業があったならばと思います。しかし、場合によると特許に記載のデータは”思想”であることも多いのでご注意ください。2012.9.11
(ご忠告感謝します。特許に関してはなるべく複数の会社のものから、最大公約数的な情報の抽出に務めています。)
S社:「多孔質カーボンの精製とバイオ電池」でSony独自開発の塗れる有機半導体が紹介されています。炭素素材も紹介されているのでご参照ください。2012.9.26
(ありがとうございます。Antoine B/分子量を学生さんに計算してもらいます。H.Y)

コメントを下さった企業、大学の方へ:
コメントを下さった方、本当に有難うございます。大学での教育は横浜国大が初めてで、試行錯誤の塊です。しかも、集中講義なので軌道修正も余裕がありません。非常に(多分学生にとっても)参考になります。大学が「社会に望まれる人材を輩出する」ためには「社会が求めるニーズ」を把握する事が不可欠です。学生と組み上げたモデル式は2011年資料のようにページ中で計算できるように発表していきます(遅れています。しばしお待ちを。)。2013年も講義します。資料をHPに載せはじめました。どしどしコメントをお願いします。
YMBとVSMRを使った例(2011年講義分)
こんな基礎的な物性を推算するプログラムが何の役に立つのか? 現実の開発はもっとずーっと高度で難しいんだ。とよく言われる。まー、それほど難しい事をやっている研究者は置いておいて、実際にどういうものなのかやってみよう。プログラムの使い方を学ぶ例題として、まず、引火点を考えてみよう。引火点の推算方法はpirikaの物性推算の中にあるが、練習がてら推算式を構築してみよう。次に、日本の化学のお家芸とも言える炭素材料について考えてみよう。LiBや炭素繊維、吸着剤様々な所に使われている。環境関連の研究はさけて通れない。コストアップにつながると考えてはいけない。新しいビジネス・チャンスに満ちている。重要な分離操作として、抽出を考えてみよう。これは溶解性が基本だ。今の日本の化学界ではコスト競争は不可避だ。プロセスの合理化に対して何ができるか考えてみよう。自分がもと高分子屋のせいもあるがポリマーにはこだわりたい。食品、医薬品、サプリメントにもYMBの利用は有効だ。最後に蒸留について考えてみよう。気分を変えるために、蒸留の際に飛び回る分子をMDで見てみよう。このようにPirikaで扱う物性化学の基本を押さえると様々な事に使える。最も大事なのは分子間力であろう。
2012年講義
一度講義ノートを作ったら、後は毎年それを繰り返す。学生は毎年変わるのだから、それで良いだろう。それも一つの考え方だが、自分は去年の授業で本当に色々勉強した。横浜国大生の就職先である化学系企業が、どんな特徴ある材料やプロセスを保有し、世界の中でどういう方向で戦っているかを目のあたりにできたからだ。また、企業はどんな事に興味を持っているのか、学生に何を学んでから社会に出てきて欲しいのか、多くの方からフィードバックを頂いた。今年も勉強させてもらおうと思う。今年度は、学生自身が分子を描いて実際に計算する部分を増やそうと思う。また例題には特許を増やそうと思う。最終的にはまとめ直すがどんな分子を描く事にしようか、下調べを始めた。ディスプレー素材(有機EL化合物)関係。 これは韓国との争いの中でホットな話題だ。化学工学の学生が何ができるか觀ていこう。印刷所で使われるインクの洗浄剤、ジクロロプロパンは胆管ガンの原因物質ではないかと疑われている。そうした溶媒をグリーンソルベントに置き換える試みは色々なされている。アメリカでは、発行部数が1,500部以上の新聞のうち95%が大豆インクを使って印刷を行っている。大豆油の脂肪酸組成はリノール酸約50%、オレイン酸20%強、パルミチン酸約10%、リノレン酸約10%、ステアリン酸約5% だ。不飽和カルボン酸がほとんどだ。(グリーソルベントを製造するプロセスの最適化を考えてみよう。プロセスデータのモデル化が必要になる。)安全な溶媒を使ってディスプレー素材や太陽電池素材を塗るインクジェット技術は日本のお家芸とも言える。粘度や表面張力、化学工学の知識は不可欠だ。化学工学の中で最も重要なのは蒸留であろう。これは蒸気圧と温度との関係の学問だ。この技術を持ってすれば”塗る太陽電池”だってお手のものだ。シェールガス革命で炭化水素とその異性体の物性も重要になってきている。化学工学の基礎中の基礎だ。2012年版物性推算ソフトウエアーYMB12Eには分子軌道計算の部分が省略されている。それらについてはPirikaの分子軌道を参照してください。
2013年講義
さー、そろそろ2013年度の講義の準備を始めよう。まずは2012年度の講義から外した、分子軌道法だ。MOPACの環境の構築の仕方とY-Molを使って3次元構造を構築する方法を解説した。このMOPACを使ってラジカル重合を検討してみよう。次は化学工学の単位操作で最も重要な蒸留、それを理解する上で欠かせない気液平衡を学ぼう。
2012.8.2 この授業をとっている学生は化学工学の学生がメインだ。”企業における研究開発には化学工学の出身者が不可欠”と言われるためには? ハンセン溶解度パラメータ(HSP)と化学工学を読んで頂きたい。
化学工学と物性推算 2013.4.5
化学工学では多種多様な化学品を取り扱う。しかしそれらの物性が全て既知かと言ったらそんな事は無い。そこで物性推算が重要になる。それは業界の誰もが認めていることだろう。だけれど、それではどう動いたらいいのかとなると、色々難しい問題があり、日本特有の意思決定のスピード欠如に陥っているように思える。化学工学を目指す学生として世界最先端の研究はどのようなスピード感で仕事をしているのか例を示そう。
