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2009.9.9
ある高分子があったときに、それを溶解する溶媒を探索したいという要望は多いと思います。
ハンセンのSP値を使った、溶媒、混合溶媒の探索方法を紹介します。
ポリマー同士の溶解性や相溶化剤の設計にも溶解度パラメータの考え方は重要です。
一つ一つは貧溶媒でも、混合溶媒になると良溶媒になる場合があります。
この現象を理解しようとするなら、HSPを使わなくてはダメでしょう。
詳しい内容は 化学工業社、化学工業2010年4月号をご覧ください。 ここには抜粋のみを置きます。
Sphere(球)というのは、ある溶質を溶解する溶媒は、ハンセンの溶解度パラメータが似ていて、それを3次元空間(ハンセン空間)にプロットすると似た位置に球を構成するという、ハンセン先生が考えた理論です。
その際(1967年)には上のような装置を組み、溶媒のHSP(ハンセンの溶解度パラメータ)の位置に溶媒名を書いたタグを付けて、溶解したものとしなかったものを色分けして、検討したそうです。
ハンセンの溶解度パラメータ(HSP)を用いた高分子の溶媒を探索する方法を簡単に紹介します。
通常のSP値(ヒルデブランドの溶解度パラメーター)を用いて溶媒探索をした場合にはその的中率は50%ちょっととされています。
どうしてそのように低い値になるのかはHSPを使う10の理由で詳しく述べていますが、HildebrandのSP値は蒸発潜熱が近いものは同じような値になってしまうからです。
それに対してHansen Solubility Parameter(HSP)はSP値を分散(dD)、極性(dP)、水素結合(dH)の3つに分解し、3次元のベクトルとして捉えます。
そして、そのベクトルが似たものがお互いを溶かすという理論で、的中率は非常に向上します。
さらにHansenの方法は相互作用半径(R0)というものを導入して、さらに的中率を向上させる仕組みを持っています。
これはポリマーを扱った事のある人なら感覚的によくわかる事だと思いますが、ポリマーには色々な溶媒に溶解しやすいポリマーと、フッ素系高分子のように溶ける溶媒がほとんどないポリマーがあります。
つまり、溶媒のベクトルがポリマーのベクトルと多少離れていても溶かしたり、ほとんど一致していても膨潤ぐらいしかしないもの、その中間に分かれます。
そこでHSPではポリマーごとに相互作用半径(R0)を定め、その半径に入れば溶解する、半径の外なら溶解しないと決めます。
そこで、溶媒とポリマーのHSP距離を計算し、それが相互作用半径よりも小さければ溶解する確率が非常に高くなります。
Drag=回転, Drag+Shift キー=拡大、縮小, Drag+コマンドキーかAltキー=移動。
PMMAを溶かす溶媒(赤い小さな球)と溶かさない溶媒(青い小さな球)をハンセン空間にプロットしたものです。
幾つかの例外もありますが、赤い溶媒は3次元的に似たような位置を占めていて、それらを取り囲むSphere(球:緑色の大きな球)があると理解します。
そこでPMMAを溶解する溶媒を探索したいのであれば、溶媒のHSPがこの緑の球の内側に来るようなものを選べばいいことがわかります。
中略
次に、各溶媒のハンセンの溶解度パラメータを入手します。
HSPiPというオフィシャルのソフトウエアーを購入すれば最新のHSPのデータベースも含まれていますし、データベースに記載の無い化合物については推算値を得ることができます。
そしてHSPの値が得られたら、次の表のようにまとめます。
ここでScoreは1が溶解するもの、0が溶解しないものです。
この表の化合物の名称から先をタブ区切りのテキストファイルでセーブ(拡張子をssdにする)すれば、それをHSPiPで読む込む事ができます。
その後はソフトウエアーがポリ塩化ビニルのHSPは[18.8, 9.2, 6.3]で相互作用半径は7.3であるとたちどころに計算してくれます。
Drag=回転, Drag+Shift キー=拡大、縮小, Drag+コマンドキーかAltキー=移動。
中略
2011.4.22
Drag=回転, Drag+Shift キー=拡大、縮小, Drag+コマンドキーかAltキー=移動。
こうしたSphereが2つあると仮定して探索する新しいアルゴリズムも付け加えられました。
Drag=回転, Drag+Shift キー=拡大、縮小, Drag+コマンドキーかAltキー=移動。
また、溶媒は混合溶媒でも同じように取り扱われます。ひとつひとつが貧溶媒でも上の例のように、HSPの混合ベクトルが球の内側に来ればその溶媒に溶解します。
ここではHSPiPをまだお持ちでないと仮定して、簡略的にポリマーのHSPを求めてみます。つまり、溶解する溶媒のHSPの平均値をポリマーのHSPと考えてみます。
平均値は[17.7, 7.9, 5.5]になります。
次に,ポリ塩化ビニルのHSPが [17.7, 7.9, 5.5]だとした場合に、各溶媒からのHSP距離を求めます。
ベクトルの距離なので差の2乗和のルートを取れば良いのですが、HSP距離と言った時にはdDの前に4.0という係数がつきます。
HSP distance(Ra)={4*(dD1-dD2)2 + (dP1-dP2)2 +(dH1-dH2)2 }0.5
それをプロットして見るといくつかの例外はありますが,HSP距離が5.4±0.5の領域では溶けるか溶けないか微妙になる。
それ以下だと溶解する。それ以上だと溶解しない。そう考えた時に的中率は約80%になります。
外れるものは,DMF,DMSO,Dioxane, Toluene, Vinyl Chlorideの5つです。
HSP距離が短いのに溶けない理由としては,例えば分子のサイズが大きくポリマーの中まで浸透しない,溶解する方向ではあるが溶解するのに非常に長い時間を要する,特に室温でガス上の化合物など,液密度が低いなどが考えられます。
逆にHSP距離が長いのに溶解する溶媒は解釈が難しいです。
例えばポリマー中に数%水酸基が入っただけで(ポリマー全体としてのHSPはあまり変わらないのですが)溶解度が大きく変わる事(そのような系の解析方法はこちらを参照)はよくあります。
またHSPの現バージョンでは未考慮ですが,ドナーーアクセプターの考え方(こちらの記事を参照)が必要な場合,ポリマーの分子量,分子量分布の効果,開始剤,添加剤の効果など様々な要因でいくつかの例外が出てきてしまいます。
中略
HSPiPには”Solvent Optimizer”が搭載されており,こうした(混合)溶媒の探索がたちどころにできます。
こうした混合溶媒を取り扱える溶解度理論はHSPだけではないでしょうか。
ポリマーのIPNを設計したい場合などは、ポリマー同士の球がどのくらい重なり合っているかを調べる必要がある。
ポリマーの相互作用半径が重なるものはポリマー同士も相互溶解しやすい。
相溶化剤を設計したいなら片方の球に溶解する部分ともうひとつの球に溶解する部分とをひとつの分子に持たせる必要がある。
エポキシ系やウレタン系の接着剤などを検討する場合には注意が必要である。
エポキシ基やウレタン基はどちらかというと極性が高く、それ以外の部分は極性の低いポリオールであることが多い。
そのようなミクロ相分離構造をとるポリマーの場合、オーバーオールのHSPを考えても溶解性は理解出来ないことがある。
V.3.1.xに搭載のDouble Spheresの機能を使うと、両方の部分構造に相当する球が見つかる。相溶化剤やオリゴマーなどにも適用することをおすすめする。
2010.12.2 追記
化学工業の連載第2回でポリマーの溶媒探索に関してPMMAの解析の失敗例を説明した。
これは溶媒の多様性が足りなく、限られた溶媒だけでHSPを決めると正しい答えにならないよ、というものだ。今回、データを継ぎ足して、新しくPMMAのHSPを決め直してみた。
求まったHSPは[17.7, 6.7, 6.2]で相互作用半径は8.96になった。
使った溶媒は57種類。溶解しないとされる溶媒で、緑色の球の中に入ってしまった例外が4点あるが、
53/57=93%の確率で溶解する、しないを判定できるという結果になった。
Ver.3.1.xのDouble Spheresの機能を使うと、
[16.7, 9.7, 8.4] 半径7.24 の球と
[18.4, 3.2, 2.9] 半径4.22の球があり、例外となる溶媒は2つある事が解る。
(この2つの例は、JAVA3Dを使い方を勉強する為に作ったプログラムで見ています。)
2011.4.22
Drag=回転, Drag+Shift キー=拡大、縮小, Drag+コマンドキーかAltキー=移動。
これは、これできれいな結果ではあるが、今回強調したいのは、ポリマーハンドブックによるとPMMAはエタノール/水の混合溶媒に溶解するという記載がある点だ。
PMMAは透明性の高い樹脂で、水族館の水槽などにも使われている。これがエタノール/水の混合溶媒に溶けるという現象をHSPを使ってさらに解析してみる。
water |
EtOH |
dDm |
dPm |
dHm |
Ra |
HildebrandSP |
100.0 |
0.0 |
18.1 |
17.1 |
16.9 |
14.939 |
30.1 |
90.0 |
10.0 |
17.9 |
16.3 |
17.2 |
14.543 |
29.7 |
80.0 |
20.0 |
17.6 |
15.4 |
17.4 |
14.202 |
29.4 |
70.0 |
30.0 |
17.4 |
14.6 |
17.7 |
13.925 |
29.0 |
60.0 |
40.0 |
17.2 |
13.8 |
17.9 |
13.710 |
28.7 |
50.0 |
50.0 |
17.0 |
13.0 |
18.2 |
13.565 |
28.3 |
40.0 |
60.0 |
16.7 |
12.1 |
18.4 |
13.489 |
28.0 |
30.0 |
70.0 |
16.5 |
11.3 |
18.7 |
13.484 |
27.6 |
20.0 |
80.0 |
16.3 |
10.5 |
18.9 |
13.550 |
27.2 |
10.0 |
90.0 |
16.0 |
9.6 |
19.2 |
13.687 |
26.9 |
0.0 |
100.0 |
15.8 |
8.8 |
19.4 |
13.891 |
26.5 |
dD |
dP |
dH |
Hildebrand |
|||
EtOH |
15.8 |
8.8 |
19.4 |
26.5 |
||
Water |
18.1 |
17.1 |
16.9 |
30.1 |
||
PMMA |
17.7 |
6.7 |
6.2 |
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