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25-May-2017

MOOC: 蒸留

講義資料 非常勤講師:山本博志  2012.1.12

 

抽出蒸留:

沸点の近いもの、共沸するものは蒸留では分離できない

日本ゼオンのブタジエン合成法、GPB法は戦後の日本化学史上最高の技術開発と言われている。これは、DMFに対する溶解度の差を利用して、抽出蒸留によってブタジエンの見かけの沸点を変えて蒸留を行うものだ。

DMFでの比揮発度のデータは見つからなかったが、含水フルフラールを使った時の比揮発度のデータが入手できた。
溶媒が無い場合の比揮発度は沸点順になり、イソブテン、1−ブテン、1、3ブタジエンでほとんど差がなくなり蒸留できない。抽出溶媒をうまく選べば比揮発度を大きくかえる事ができる。

C4留分

比揮発度(溶媒なし)

比揮発度(フルフラール)

沸点

イソブタン

1.209

2.6

-11.7

イソブテン

1.07

1.666

-6.9

1-ブテン

1.046

1.718

-6.3

1,3-ブタジエン

1

1

-4.5

n-ブタン

0.871

2.02

-0.5

t-2-ブテン

0.843

1.19

0.9

c-2-ブテン

0.776

1.065

3.7

C4留分をYMBを使って計算し、VSMRを使って比揮発度のモデル式を作製してみよう。

モデル式= -A*沸点 -B*Hansen dH +C

A-Cの係数を求めよ。何故、このようにハンセンの溶解度パラメータの水素結合項が非揮発度を変えるかというと、ブタジエンは2重結合を2つ持ち、下図のように、イソブテン、1−ブテンよりも大きなdHを持つ。そこで、抽出蒸留溶媒が大きなdHを持つと相互作用が大きくなってブタジエンだけ飛びにくくなる。そこでDMF、NMP、フルフラールのようにdHの大きな溶媒が比揮発度を大きく変えることになる。

それは、一種ヘンリー定数にも似ている。ヘンリーの法則(2011年講義資料参照Pirikaのヘンリー定数推算のページを参照)とは、揮発性の溶質を含む希薄水溶液が気相と平衡にあるときには、気相内の溶質の分圧pは溶液中の濃度cに比例する。(一種の活量係数)その比例定数をヘンリー定数と呼ぶ。(YMBが推算するのは水に対するヘンリー定数)このヘンリー定数を比揮発度に対してプロットすると下図のように高い相関が認められる。つまり、ブタジエンのヘンリー定数はイソブテン、1−ブテンの半分以下になる。(ヘンリー定数が半分という事は同じ温度で、同じ濃度あった時に蒸気圧が半分になるということ)フルフラールに対するヘンリー定数は水へのヘンリー定数と似ているのだろう。

このように、沸点の似たものを蒸留で分けようとするなら、ターゲットと分けたいものの分子間力の構成の差を利用するのがもっとも有効であろう。

相互作用のタイプ エネルギー ハンセンの分類

ファンデルワールス相互作用:
理想気体からのずれを説明するために導入された概念。引力の主体は分散力(ロンドン力)分子の極性、非極性に関わらず普遍的に働く力

<1 KJ/mol

分散項(δD)

静電的相互作用:
分子が部分的な電荷をもつか、電荷に偏りがある場合に働く力。クーロン力、配向力、誘起力などとも呼ばれる。

10-30KJ/mol

分極項(δP)

水素結合的な相互作用:
水、アルコールなどに働く力。CHやπ電子系にも拡張されている。

10-30KJ/mol

水素結合項(δH)

その他:
π/πスタッキング:芳香環同士の相互作用
配位結合
電荷移動相互作用

  (δH)

単純にはハンセンの溶解度パラメータの分散項(δD), 分極項(δP), 水素結合項(δH)の差から抽出溶媒を選定するのが早道である。この考え方は抽出蒸留だけでなく、共沸蒸留に於いても有効である。

気液平衡と蒸留:

気液平衡がわかると蒸留の段数が計算できる。

P yi = γi xi Pis

P: 全圧, yi: 気相のモル分率, γi : 液相の活量係数, xi: 液相のモル分率, Pis: i成分の蒸気圧
このうち、活量係数というのが分かりにくい。単純には”純物質の蒸気圧が相互作用によってどれだけ変わるかの尺度”と覚えておいてほしい。

Wilson(蒸気圧データのWilson定数へのフィティングはこちらを参照
Margules(蒸気圧データのMargules定数へのフィティングはこちらを参照
Van Laar
NRTLなどの定数がある。

その中で、ここでは、Magulesの活量係数式を取り上げよう。

Magulesの活量係数式:

Ln γ1=x22[A+2(B-A)x1]
Ln γ2=x12[B+2(A-B)x2]

Wilsonパラメータと違い、両末端(無限希釈活量係数)付近でのみ精度がある。物理的意味合いが高いので値を推算することが可能である。

モデル式= A*ハンセンdD -B*ハンセンdP -C*ハンセンdH -D

VSMRを用いてA~Dの係数を定めて見よう。

一部の溶媒で乖離が大きいが、上記モデル式でエタノールに対するMagules Bの値を推算する事ができる。この式にエタノールの値を入れれば、-0.124になるのでほぼ0になる。つまりエタノールとなら活量係数は1になる。それを模式図的に表せば、下のようになる。


こうした活量係数を求める一般式にまで拡張すれば、ASOG法やUNIFAC法になる。(ASOG法を用いた気液平衡の推算はこちらから。分子構造のみから気液平衡を計算できる)

注目したいのは、この活量係数であっても分子間力、つまりハンセンの溶解度パラメータで表されるという事だ。”似たものは似たものを溶かす”という単純な原理に深い原理が潜んでいるようだ。

このハンセンの溶解度パラメータ法を使った気液平衡の推算のプログラムを、2013年講義用に準備した。また、そうしたプログラムをどのように作成するのか解説した。

 

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