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25-May-2017

MOOC | グリーンソルベント

講義資料 非常勤講師:山本博志 2012.8.28

2013.8.5 Eastman社のグリーンソルベントを用いた溶解設計法を解説した。

今年のニュースで印刷関連で働く方に胆管がんが多発しているというニュースは非常にショッキングだった。印刷というのは”インク”を紙に塗ることだが、その乾いたインクを溶かすのに、ジクロロメタンやジクロロプロパンを使っていたらしい。除害設備もなく防毒マスク(2011年講義資料)も無しに使っていたということだ。古くはこうした溶媒にはシンナーが使われていた。シンナーに含まれる有機溶剤(特にトルエン)は中枢神経麻痺作用があり、蒸気を吸引すると酔っ払ったような状態になり、”シンナー遊び”として一時、社会問題化した。また、引火性があり、危険物第4類第1石油類として規制されている。その後フロン溶媒(CFC:クロロフルオロカーボン)の利用が盛んになったが、これは人体には無害であったがオゾン層を破壊することが明らかになり、1996年特定フロンは全廃された。分子中に水素を持つフロンは大気寿命が短い(2011年講義資料)ため、オゾン破壊係数が小さく全廃されるのはまだ先だが、地球温暖化係数が高いので、規制の前倒しが予定されている。このオゾンを壊すのは塩素ラジカルであり、また塩素含有物質を低い温度で燃焼させるとダイオキシンという猛毒が発生するので、近年塩素含有化合物は高分子も含めて”嫌われ者”になっている。しかし、分子中に塩素が入ると不燃性(発生する塩素ラジカルが火をクエンチする)になること、溶媒として溶解性バランスが非常に良いこと、フッ素が入っていなければ大気寿命が短く、成層圏のオゾン層まで辿り着かないのでオゾン破壊係数、地球温暖化係数が小さいことから、ドライクリーニングを含めまだまだ広く利用されている。ただし、塩素系溶剤と言えども有機溶剤の一部であるので保護具、除外設備など正しい使い方をしなければならない。また、可能であるならばグリーンソルベントと呼ばれる人体に無害な溶媒に置き換えて行かなくてはならない。その為に化学、化学工学ができることを考えてみよう。

ある、人体、環境に有害な溶媒を、グリーンソルベントに置き換える際にどのような指標で選択していけばいいだろうか? 化合物自体が不燃性であるためには、分子中に塩素、臭素、フッ素といったハロゲン原子を導入するか、燐系の難燃剤を併用するしか無い。しかし、そうした化合物は他の問題も引き起こす。それでは燃えにくくするにはどうしたらいいだろうか? 化合物の引火点に関しては2011年の講義を参照して頂きたい。基本的には分子が大きく沸点が高くなれば引火点も高くなる。しかし、インクなどを考えた場合には、沸点が高くなるということは、乾きにくくなることを意味し、RER(酢酸ブチルを100としたときの相対揮発度、2011年講義資料参照)の観点から余り高い沸点の化合物は使いにくい。

それでは人体に対する有害性はどうであろうか? 官能基ごとの有害性をラットの経口急性毒性(LD50)で見てみよう。

有機溶媒の経口急性毒性(LD50)

1級アルコールを一つ持つ化合物のLD50を炭素数に対してプロットすると下のようなグラフになる。

動物が食べる食物の中に、メチルエステル、エチルエステルは普遍的であろう。それが加水分解してできる低分子アルコールは毒性はあまり高くない。分子鎖が長くなるに連れまた毒性は低下(LD50は上昇)するが、炭素鎖が6ぐらいで毒性が最も高くなる。これは動物の体を構成する脂質とほぼ等しい極性となるからではないだろうか? logP(オクタノール/水分配比率、logKowとも呼ばれる)はC8のアルコールと水で、ある化合物がどちらにどのくらい分配したかを示す指標だ。生体毒性、生物蓄積性などを考える上での重要な指標になる。それにオクタノールが選ばれたのは偶然ではなく、このぐらいの極性の化合物が一番体に取り込まれやすい事を示している。フェノール性の水酸基は毒にも薬にもなる。詳しくは2011年講義資料を参照いただきたい。

次にエステル化合物を見てみよう。

ほとんどのエステル化合物は毒性が低い。これは動物が餌として長年摂取してきたことによるのだろう。唯一の例外はAllyl acetate(LD50: 130)だ。しかしVinyl Acetate(LD50: 2920)は毒性が高くない。

ケトン化合物もエステル化合物と同様に毒性は低い。

低分子のアセトンは急性毒性が低い。分子鎖の長いケトンの毒性データは持ち合わせていない。どなたかデータをお持ちの方は連絡を頂けるとうれしいです。

カルボン酸化合物もエステル化合物と同様に一般的には毒性が低い。

例外は2重結合を持つカルボン酸だ。Acrylic Acid (LD50: 33.5), Allyl Acetic Acid (LD50: 470)などが毒性が高い。またぜひとも注意しなければならないのが、Isobutylic AcidでLD50が280と非常に毒性が高い。何が原因なのだろうか?

芳香族のカルボン酸はフェノール性の水酸基と同様毒にも薬にもなるのだろう。Acetyl salicylic Acid (LD50: 200), Saliculic Acid(LD50:400)などがある。

アルデヒド化合物は、自然界では果物などのニオイ成分として存在する。

他のものと比べ毒性は比較的高い。やはり2重結合を持つものは毒性が高い。Acrolein (LD50: 25.9), Methacrylaldehyde (LD50: 111), Crotonaldehyde (LD50: 300)などだ。Formaldehyde(LD50: 800)、FurFural (LD50: 50)なども注意が必要だ。

アミン類は毒性が皆高いので溶媒には適さない。

ニトリル類もAcetonitrileを除き皆毒性が高い。

エーテル化合物は少し複雑だ。

他の化合物と違い、2重結合があっても毒性は高くない。Ethylene Oxcide(LD50: 72) Propylene Oxide (LD50: 380) Trioxane (LD50: 800) と環状の小さなエーテル化合物は毒性が高い。分子が大きな鎖状のエーテルは毒性が少ない。1,2-dimethoxyethane (LD50: 775)だけは注意が必要だ。

こうした急性毒性の結果だけから考えても、許される”グリーンソルベント”は2重結合を持たない、エステル、エーテル、アルコールのみから構成される化合物が候補となることが判る。

分子中にエステルとエーテル(ES-ET)を持つ化合物、エステルとアルコールを持つ化合物(ES-AL)、エーテルとアルコールを持つ化合物(ET-AL)はほとんど皆毒性が低いことが判る。例外は、Butoxyethanol (LD50: 470), Ethylene Glycol Mono n-Hexyl Ether(LD50: 830)で、大きな疎水性のアルキル基がつくと良くないことが判る。

そうした、いわゆるグリコール油は日油(日本油脂)、日本乳化剤、ダイセル化学、ダウ、ローディアなどから販売されている。

それでは、溶媒を”グリーンソルベント”に変更しようとした時に、沸点、引火点、毒性だけから選択できるだろうか? 溶媒は何かを溶解するために使うので、溶解度の指標なしには溶媒探索はできない。

次に溶解の指標について考えてみよう。

KB値(K.B.価)

 カウリ・ブタノール値(KB値)は主に塗料・接着剤の分野で使われていたが、最近ではほとんど使われることが無くなった。この測定方法はASTM D1133に記載されている。簡単に説明すれば、カウリ樹脂のブタノール溶液を三角フラスコに取り、試験溶媒を加えていき、濁りの出た時の試料のmlで表す。このカウリとは松と同族の木で、それから出る樹液が固まったものがカウリ樹脂である。この樹脂がさらに年月がたち化石化すると琥珀と呼ばれる。このカウリ樹脂はチューインガムの原型であり、また古くにはこの樹脂を溶解したものは接着剤として用いられてきた。天然樹脂であるから産地、年代によってKB値もばらつきが出る為、トルエンの値が100になるように規格化される。同じ”松やに”であるロジンが塗料に使われた経緯から、カウリ、ロジンをどのくらい溶解するかが塗料・接着剤の分野で重要であったためKB値という指標につながった。
 CFC(クロロ・フルオロ・カーボン)のうち特にCFC-113は電子基板の洗浄に多用された。その分野では、基板にハンダ付けする際に”松やに”入りのハンダを使っていたため、”松やに”を洗浄し、かつ、基板上の電線被覆材を溶かさない溶媒としてCFC-113は非常に優れた溶媒であった。ドライクリーニングの分野でも、プラスティックを痛めずに油汚れだけを落とすなどの機能が要求された。この観点から、クリーニング・洗浄などの分野でもKB値は重要な指標であった。しかし、現在ではKB値を測定する用のカウリ樹脂の入手が非常に困難でこの値を見ることはほとんど無くなった。しかし、塗料・接着剤・クリーニング・洗浄の分野では未だに使われている重要な指標である。
このKB値はカウリ樹脂が完全にブタノールに溶解する事から考えても、アルコール、ケトン、エステルなどの極性溶媒では非常に大きな値になり、溶解性を判断する指標にはならない。

アニリン点(A.P.)

アニリン点はアニリンと石油系溶剤が混合された均一透明溶液を冷却した際に、濁りが生じた温度を言う。環状や芳香属系の溶剤は脂肪族溶媒よりもアニリンに溶解しやすくアニリン点は低い。この事はKB値と同じように環状、芳香族系溶媒の含有割合を表すものとも言える。しかし、KB値は値が大きいほど溶解性が高くなるが、アニリン点は値が大きいほど溶解性が低くなる。

SP値

SP値(Solubility Parameter)は溶解度パラメータ、溶解性パラメータと呼ばれる指標だ。よく使われているのはHildebrandのSP値であろう。おおもとの研究はHildebrand と Scottによって”The Solubility of Nonelectrolytes (1964)”に発表された。


溶液から分子を一つ取り出して,そこへ他の分子を戻す事を考えた時に,混合の自由エネルギーは
ΔG=ΔH-ΔTS      式(1)
であらわされ,これがゼロかマイナスの時に混合がおこる。その時のΔHを
ΔH=φ1φ2V(σ1-σ2)2     式(2)
φ:volume ratio,σ:SP value
とした時に,初めて溶解度パラメーター(SP値)の概念が生まれた。SP値が近いもの同士はΔHが小さく,ΔGがゼロかマイナスになりやすい。 そこで,”似たものは似たものを溶かす”という原理が生まれた。
σ={(ΔH-RT)/V}0.5      式(3)
ΔH:蒸発潜熱、R:ガス定数、V:分子体積
一般的には蒸発潜熱から、式(3)を使ってSP値が求められ,様々なデータベース,ハンドブックにその値が記載されている。先駆的な研究としては,このHildebrandのSP値は非常に優れている。しかし、蒸発潜熱だけから決定されるため,自ずと限界がある。つまり,本来,似たものは似たものを溶かすと言った場合,化学構造が似たものは,化学構造が似たものを溶かすのであって,蒸発潜熱が似たものは,蒸発潜熱が似たものを溶かすのではないからである。Hildebrandの研究が世に出るのとほとんど同時に、それは塗料やラッカー業界に取り上げられた。そしてユーザーとHildebrand自身も単一のパタメーターだけでは十分な能力を発揮できない事にすぐに気がついた。Hildebrandの式に他の項を付け足した多くの異なった式が現れたが、たいした成果は無かった。しばらくして、Hildebrandのパラメータは分散(dD)と極性項(dP)に分割された。その式でさえアルコール類が全く合わないため、この分割法も支持されなかった。

SP値を簡便に入手できるため、日本ではHildebrandのSP値がいまだに広く利用されているが、日本以外ではSP値を3次元(4次元)に分割したハンセンの溶解度パラメータ(HSP)が主流になっている。

このHSPを溶解指標に使うのであれば、化学工学の知識は非常に役に立つ。詳しくは「ハンセンの溶解度パラメータと化学工学」の記事を参照して頂きたい。

それでは、実際にジクロロメタンやジクロロプロパンの代替溶媒を考えてみよう。

ジクロロメタン、KB値=136
ジクロロプロパン、KB値=129(推算値)

シンナーの主成分であるトルエンのKB値は、KB値測定の基準である100であるので、このインクを溶解する溶媒のKB値は100近辺が好ましいことがわかる。そこで、KB値のデータベース(とは言っても、KB値の解っている溶媒は55溶媒しか持っていないが)から該当する溶媒を抜き出してみる。

name Formula KB値
d-limonene C10H16 68
1,1,2,2-Tetrachlorodifluoroethane C2Cl4F2 70
trans-1,2-Dichloroethylene C2H2Cl2 89
Tetrachloroethylene C2Cl4 90
Ethylbenzene C8H10 95.5
p-Xylene C8H10 97
m-Xylene C8H10 103
Toluene C7H8 105
Benzene C6H6 107
o-Xylene C8H10 107
Carbon Tetrachloride CCl4 114
1,2,3,4-Tetrahydronaphthalene C10H12 117
1,1,1-Trichloroethane C2H3Cl3 124
1-bromopropane C3H7Br 125
Trichloroethylene C2HCl3 133
Dichloromethane CH2Cl2 135

ほとんどが、トルエンの類縁体か塩素系の溶媒しか無いことが判る。これでは塩素系の溶媒の代替を探すとシンナーに戻るというナンセンスな結果になる。そこで、上で求めたようなグリコール油のKB値をSP値から推算することを考える。

KB値はブタノールに溶解したカウリ樹脂が析出を始めるまで加えた溶媒の量で表される。そこで、アルコールなどを加えても中々析出せず、KB値は非常に大きな値になってしまう。そこでこの式を使ってKB値を計算できるのは、グリコール油の末端がエステルやエーテルでキャップされた溶媒のみとなる。

略語 化学名 示性式
DMM ジプロピレングリコールジメチルエーテル CH3(OCH2CHCH3)2OCH3
DPMA ジプロピレングリコ-ルメチルエ-テルアセテ-ト CH3(OCH2CHCH3)2OCOCH3
PGDA プロピレングリコールジアセテート CH3COOCH2CHCH3OCOCH3
1,3BGDA 1,3-ブチレングリコールジアセテート CH3CH(OCOCH3)CH2CH2OCOCH3
CHXA シクロヘキサノールアセテート C6H11OCOCH3
MA メチルアセテート  CH3OCOCH3
AE エチルアセテート C2H5OCOCH3
 IPAC イソプロピルアセテート (CH3)2CHOCOCH3
NPA n-プロピルアセテート  C3H7OCOCH3
BA ブチルアセテート  C4H9OCOCH3
MMPGAC プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート/PMA  CH3OCH2CHCH3OCOCH3
BMGAC エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート C4H9OCH2CH2OCOCH3
EDGAC ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート  C2H5(OCH2CH2)2OCOCH3
BDGAC ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート  C4H9(OCH2CH2)2OCOCH3
MBA 3-メトキシブチルアセテート  CH3CH(OCH3)CH2CH2OCOCH3
DRA-150 トリアセチン  CH2(OCOCH3)CH(OCOCH3)CH2OCOCH3
IP 3,5,5-トリメチル-2-シクロヘキセン-1-オン  C9H14O(分子式)
MMGAC エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート  CH3OCH2CH2OCOCH3
EGA エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート C2H5OCH2CH2OCOCH3
DOL 1,3 ジオキソラン OCH2CH2OCH2
MMM エチレングリコールジメチルエーテル CH3OCH2CH2OCH3
MMPOM プロピレングリコールジメチルエーテル CH3OCH2CHCH3OCH3
DO 1,4 ジオキサン OCH2CH2OCH2CH2
MDM ジエチレングリコールジメチルエーテル CH3O(CH2CH2O)2CH3
MDPOM ジプロピレングリコールジメチルエーテル CH3O(CH2CHCH3O)2CH3
EDM ジエチレングリコールエチルメチルエーテル C2H5O(CH2CH2O)2CH3
EDE ジエチレングリコールジエチルエーテル C2H5O(CH2CH2O)2C2H5
BDM ジエチレングリコールブチルメチルエーテル C4H9O(CH2CH2O)2CH3
MTPOM トリプロピレングリコールジメチルエーテル CH3O(CH2CHCH3O)3CH3
MTM トリエチレングリコールジメチルエーテル CH3O(CH2CH2O)3CH3
BDB ジエチレングリコールジブチルエーテル C4H9O(CH2CH2O)2C4H9
BTM トリエチレングリコールブチルメチルエーテル C4H9O(CH2CH2O)3CH3
MTEM テトラエチレングリコールジメチルエーテル CH3O(CH2CH2O)4CH3

代表的な溶媒を上に示す。YMBを使って溶媒を描き、各溶媒のHansen totHSPをテーブルに付け加えるように。

課題

totHSP=0.0475*KB値+13.762

を使って、各溶媒のKB値を計算し、ジクロロメタンやジクロロプロパンに一番近い溶媒を探してみよう。

このtot HSPというのは、HildebrandのSP値と同じものだ。実はこれはもう余り使われていない。それは、例えばエタノールとニトロエタンは分子のサイズが似ていて、蒸発潜熱も似ているので、HildebrandのSP値はほぼ同じ値になってしまう。しかし、エタノールとニトロエタンの基質溶解性が全く異なることは容易に判るだろう。

ハンセンはそのSP値を3次元(現在は4次元)に分割し、それをベクトルと捉え、ベクトルの向きと長さが”似ているものは似ているものを溶解する”と溶解度の理論を拡張した。ベクトルの類似度はHSP距離と呼ばれ次式で計算される。

HSP距離=sqrt(4*(dD1-dD2)^2+(dP1-dP2)^2+(dH1-dH2)^2)

dD:分散項(ファンデルワールスのエネルギー項)
dP:分極項(ダイポールモーメント、誘電率に相当するエネルギー項)
dH:水素結合項(水素結合、その他のエネルギー項)

課題

従って、ハンセンのやり方では、ジクロロメタンやジクロロプロパンのHSPベクトルからのHSP距離が近いグリコール油が同等の溶解性を示すと考えられる。上のテーブルの化合物をYMBを使って計算すれば、計算結果にdD33, dP33, dH33とver. 3.3相当の最新のHSP値が計算される。それを使って

ジクロロメタン、[dD, dP, dH]=[17, 7.3, 7.1]
ジクロロプロパン、[dD, dP, dH]=[17.3, 7.1, 2.9]

からのHSP距離を求め、最も近い溶媒はどれか求めてみよう。

また、HSPを使うと混合溶媒のHSPも簡単に計算できる。

混合溶媒のHSP

[dDm, dPm, dHm]=[(a*dD1+b*dD2), (a*dP1+b*dP2),(a*dH1+b*dH2)]/(a+b)

混合比率は体積で計算する。

Pirikaの混合溶媒を設計するJAVAアプレット・デモ、GSDはこちら。
dHをdHdo,dHacに分割した混合溶媒の探索は最新の研究はPowerToolsのプログラムで紹介している。どのような方向に進化しているのか知りたければ覗いてみて欲しい

単独溶媒ではHSP距離が長い時には、混合溶媒で探すことも可能だ。

また、HSPを使うと、単に溶解するかどうかだけでなく、ポリマーの固有粘度との関係も得られる。

それに関しては、2011年講義資料を参照するように。

グリーンソルベントの製造プロセスについては、2012年講義資料を参照のこと。

不飽和カルボン酸のエステルも立派なグリーンソルベントだ。不飽和カルボン酸についてはこちらの2012年講義資料を参照

 

オクタノール/水分配比率(log P, logKowとも呼ばれる)

オクタノール/水分配係数は物質の親水性・疎水性を判断する基礎的な数値として用いられ、医薬品の吸収率や生物学的利用能、薬物受容体との疎水的相互作用のモデル化、土壌や地下水中での移動予測などに利用されている。これについては2011年抽出の講義資料を参照のこと。この値は溶解度の比であることを強く認識する必要がある。0.01/0.01でも100/100でもlogKowは同じ値になってしまう。この値が大きくても溶ける絶対量は10000倍違うことも多々ある。次のHLBと同じ程度の意味合いしか無い。

 

HLB(Hydrophile-Lipophile Balance: 親水親油バランス)

これは溶解の指標では無いが、界面活性剤を使って化学品を水に乳化、分散させるときには重要な指標になる。この概念はグリフィンによって提唱された。HLB値は0から20までの値を取り、0に近いほど親油性が高く20に近いほど親水性が高くなる。

HLB値=20×親水部の式量の総和/分子量(グリフィン法)

HLB=7+Σ(親水基の個数)-Σ(親油基の個数) (デイビス法)

グリフィン法が一般的であるが、フッ素のような原子がついた場合、分子量が大きくなるのでHLB値は見かけより小さくなる。その場合には分子の体積を用いると炭化水素系と同様に扱える。(詳しくは界面活性剤の資料を参照)

ライオン花王などでは非常に多くの界面活性剤を利用した商品を上市している。

乳化重合などの際にモノマーを乳化したいなどの場合必要になるので覚えておくと良い。

自由研究

KB値の所でも触れたが、塩素系の溶媒とトルエン類縁体はKB値が似通っている。人体への影響という観点では芳香族は毒にも薬にもなると説明した。フェノールは殺菌剤に使うくらいなので好ましくないが、ベンジルアルコールはLD50:1230と毒性は高くなく、そのエステル、酢酸ベンジルは、ジャスミン、イランイランの芳香成分としても有名だ。これをベースにしたグリコール油を設計し、KB値、HSP距離を求めてみよう。

このページで紹介した、LD50が非常に小さな値を取る特異的な例外化合物をYMBを使って計算してみよう。計算値の中で何か特徴はないか調べよう。

各溶媒の物性値を、日油(日本油脂)、日本乳化剤、ダイセル化学のカタログ値と比較してみよう。特に相対揮発度(RER)に注目して、インクの乾きやすさを考察してみよう。

 

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