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25-May-2017

MOOC | 何故、資料やソフトを公開するのか?

講義資料 非常勤講師:山本博志  2012.9.10

 

何故、講義内容やソフトをインターネットで公開するのだろうか? 親しい先生からは、論文を書かずに公開してしまうのは余りに勿体無いと忠告される。確かにそうなのだが、自分のように趣味でやっている人は、(論文を出すのにはお金も時間もかかるので費用対効果を考えると)論文に拘る必要はない。昔、堺の商人が、”いろいろな道楽をしてきたが、学問をするほどの道楽はない”と言ったとか。Pirikaのポリシーは、道楽で学問するだ。ビデオゲームで隠しアイテムを見つけた時のうれしさと、特許を読んでなるほどなーと解ってうれしいというのが、自分にとって同列なだけだ。(もっとも自分はビデオゲームはもうしないが。)道楽というのは、楽しい道。道というのは剣道、柔道、茶道の道だ。人生をかけて追求していくもので、終わりはない。自分に妥協した時点で道ではなくなるものと肝に命じている。でも”楽”しいからやっていられる。


公開する10の理由。

1. 自分に対する甘えを断ち切る:公開しなければ、毎年同じ資料で講義できる。それは楽ではあるし、非常勤講師の給料なんて微々たるもので、準備の手間ひまを考えればものすごい持ち出しになるので公開しない方がいい。だけど、科学の進歩は待ってはくれない。甘えを断ち切って食らいついていかなければ自分が陳腐化してしまう。

2. 批判を受け入れる:ソフトウエアーに関する研究は、論文を書いても他の人は使えないので批判のしようがない。例えばハロゲン化合物が非常に手薄なデータセットから解析してすごく精度の高い推算式を作ったとクレームしても、「こんなもの計算したけど全然合わないかったよ」という批判を受けなければ次の進歩が無い。でも制限なしのバージョンを公開すると、使うだけ使われフィードバックは得られない。バランスも重要だ。論文は最初には査読という形で審査が入るが、通った後、批判が来ることはまずない。批判は欲しいが評論は欲しくない。日本は評論家の多いこと。ChemDrawと比べ描きにくいとかセーブ機能が無いとか、使わない理由だけはいくらでも考えついてくれる。

3. 企業の研究者にプレッシャーをかける:競争を勝ち抜いて就職しても正社員になったとたん、勉強はしない、言われた事だけをこなす人ではなく、人になってしまう研究者が多い。うかうかしていると、新しい技術を学んだ若手に追い抜かれるぞとプレッシャーをかけて人へ育てるためには資料の公開が効果的。特に中国、韓国からのプレッシャーが効果的。

4. 大学の先生にプレッシャーをかける:論文発表や学会発表、様々な役員が大事なのはわかるが、大学が教育機関である以上、就職してから困らない技術を学生に植え付けなければならない。社会に出た時に通用する技術を教わっているか、教わっていないか資料が公開されていないと判断できない。学生が「もっとこんな授業をしてくれ」と声を上げるためには比較の対象が必要。大学の先生のHPを見ると愕然とする。お金のある時に一斉に作ったものが置いてあるだけでその後のメインテナンスなど全くやられていないページが多い。当然、検索には引っかかってこない。

5. 学会にプレッシャーをかける:去年の震災以来、科学系の学会の専門家と呼ばれる先生の権威は地に落ちた。それ以前から、春、秋の学会はレベルが低く、聞くに堪えない発表ばかりで、参加するのを完全にやめてしまった。「化学工学をやっているとこんな良い事があるよ」というメッセージを発信する。そのレベルが企業のレベルに達してれば、必ずプレッシャーとして学会に跳ね返っていく。

6. IT化の最先端に位置する: 化学工学はIT化の波に乗り遅れてしまったと嘆いている先生方がおられるらしい。でもそれは、”化学工学”が乗り遅れたのではなく”あなた”が乗り遅れただけでしょと言い切れるようにIT化の見本を示し続ける。そのためには実は日本はどうでも良く、世界で認知される事が重要だ。

7. 問題意識を持った者が連携できる:最近大学でも入学した学生のレベルが余りにひどく、高校レベルを教える、企業も入社1、2年目は大学レベルの教育に時間を費やすと聞く。Pirikaの資料の教材としての評価が高まっている。自分もオールマイティでは無いので、資料を公開すれば先方の足りないもの、こちらの足りないものが明確になり連携が進む。

8. 情報発信技術を磨く:Pirikaの多くのページは化学系のキーワードで検索すると検索結果のトップに近い位置に入る。通常、検索する側からすると3ページ目以降は見ないらしい。そこに何時も居るようにするためには生半可な情報発信技術では駄目だ。論文とかで情報発信しない以上、ネットの情報発信では負けられない。

9. 解析技術を磨く:以前、東大の船津先生から聞いた話だが、日本の公開特許に対して、中国からは一日1万7千件、韓国から5万5千件アクセスがあるそうだ。IT技術が進んだこれらの国が日本の特許を読んで何をしているのだろうか? 想像力があれば、Pirikaで紹介しているような事をやっているのだろうと考える事ができる。特許を読んで到達できるレベルは、解析技術のレベルによる。pirikaの解析結果を見て、まだこんなものかと思う大学や企業は安泰だろう。そうでないなら、アクションを起こすための刺激が必要。

10. スピード感を維持する:原発がとまりエネルギーの供給が不安。足下を見られ原料が高騰。円高に対しては無策。リーマン以来、学生は就職面接では「海外勤務の可否」を聞かれるようになったらしい。原発問題が追い打ちをかけて、存続をかけた企業は外へ向かっている。一言で言ってしまえば「日本と一緒に沈没はいやだ」だろう。2次産業が外に出て行ったら1次産業3次産業だけで日本はどうするのだろう。時代に対応するスピード感なしには世界の一流企業の電機メーカーもあっという間に没落する。新しいプログラミング技術、新しい計算手法どんどん取り入れる。

こうした事を考えて情報発信を行っている。端的に行ってしまえば、1個人が道楽でやっているPirikaのサイトに、公費をかけてやっている大学の研究、会社の生存をかけてやっている研究が負けていてどうするっていうことだ。Pirikaはウイークデーは一日に1300人ぐらいの研究者が全世界から訪れ、平均4ページぐらい読んでくれる。論文書いたらそのぐらい読まれるのだろうか? 最近、サイエンス系のキーワードで検索をかけると、特許のページがほとんどを占める。特許は(文章としての)著作権を放棄しているので全文公開されているし、キーワードも豊富に入っているので、それらが上のページ来るのは当たり前だ。内容的にはもっと重要なものを含んでいても公開されているのはアブストラクトだけ、全文を読むのは有料では、学会系の論文などどんどん後ろに追いやられ誰も目にしない状況になりつつある。学会はどう考えているのだろう?

情報化学で大事な物は、情報収集、情報解析、情報発信の3つだ。自分にとって必要なものは、ネット接続環境とMacだけだ。DIYのページはまだ英語のページは作っていないが、10月の講義が終わったら英語のページも作ろう。自分も含め、うかうかできなくするために。

 

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