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27-May-2017

物性化学:オクタノール/水 分配比率 logP, logKow

2011.6.28

非常勤講師:山本博志 講義補助資料

 

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定義:

オクタノール/水分配比率(Kow)は、オクタノールと水の2相システムにおいて、ある化合物がオクタノール相に溶解している濃度と、水に溶解している濃度の比として定義される。

Kow = オクタノール相の濃度 / 水相の濃度

したがって、Kowには単位がない。このパラメータは、溶質の濃度にはあまり影響を受けないので、希薄溶液を使って測定される。多くの場合、Kowは室温(20°Cか25°C)で測定される。温度の影響はあまり大きくなく、1°Cあたり、log Kowにして、0.001から0.01程度で、プラスのこともマイナスのこともある。

有機化合物の場合、測定されたKowの値は 10-3 から107の間に入ることが多い。log Kowという使い方をしたときには、−3から7ということになる。log Kowの推算では0.1から0.2程度の誤差になる。

オクタノール/水分配比率(Kow)は、化合物のオクタノールへの溶解度と水への溶解度の比率ではない。なぜなら、オクタノールと水の2相システムでは水はオクタノールに溶解し、オクタノールは水に溶解し純粋な溶媒ではないからだ。平衡に達したとき、有機相には水が2.3 mol/L含まれ、水相には 4.5 X 10-8 mol/Lオクタノールが含まれる。その上、Kowは溶質の濃度の関数であることも、しばしば見出されている。そこで、問題となっている化合物を予想されるKowに合わせた量だけオクタノール/水に加える。用いるオクタノールと水は十分純粋なものを使う。そして、溶質の量は0.01 mol/L以下を目処にする。そして緩やかにかき混ぜ、15分から1時間、平衡に達すのを待つ。特にエマルジョンになってしまった場合には、2つの相を分けるのに、遠心分離が必要なことが多い。そして適切な分析方法で、各々の相の濃度を測定する。実験室でお手軽にKowを予測するには、高速液体クロマトグラフィーを用いて保持時間を測定する。保持時間の対数をとったものと、log Kowには直線関係が見出される。

近年では、オクタノール/水分配比率(Kow)は、有機化合物の環境影響を研究するのに鍵となるパラメーターになってきている。Kowは水への溶解度、土壌、堆積物への吸着係数、水生生物への生物濃縮性などと関係があることが見出されている。こうした他の物性を推算するのにKowが使われることが多くなったので、新規化合物や問題の多そうな化合物の研究になくてはならないパラメータになっている。

Kowの値は、ある化合物が有機相(さかなや土壌など)と水相のあいだのどちらに居たいかの傾向を表す。Kowの値が10以下の小さなものは、相対的に親水性で、水に対する溶解性が高く、土壌、堆積物への吸着係数も低く、水生生物への生物濃縮性も低い。Kowが104以上のものは、逆に親油性が高いと言える。

logKow推算式

オクタノール/水分配比率は、環境影響、毒性などの評価にも使われる極めて重要な指標である。人間の体は水と脂質からできている。その脂質と極性の近いオクタノールへ化合物がどのくらい分配するかを知れば、生体蓄積性なども予測できるからだ。この物性で問題になるのは、あくまでも比率である点だ。100/100でも0.001/0.001でも比率は1でlogPは0になる。また、オクタノール自体が水へ溶解し、水もオクタノールに溶解する。そこで水へ溶けた溶質が水ごとオクタノール相にミクロ分散したりすると、実験値はばらつきが大きくなる。

この物性値を推算する式は様々なものが開発されているが、式の形をオープンにしている推算式は少ない。市販のものとしてはClogP, ScilogPなどが著名だ。フリーのものとしてはpirikaで公開されているものはWikiでも取り上げられているほど著名だ。これは原子団寄与法をベースにしたニューラルネットワーク法でlogKowを予測する。741化合物の実験値を元に加算値を決め、以下のような精度でlogPを予測する。

logPの大きな領域、つまり疎水性の大きな化合物では比較的精度良く推算できる。しかしlogPがマイナスの領域、つまり、水への溶解性が高い領域では、ばらつきが大きくなる。これは水への溶解性が高いものの実験を行うと境界層にエマリが生じて分離が困難になるからだ。これが10年前に構築した推算式だ。

何故このように推算精度が高いのか、最近調べていたところ、実はこの物性値は分子の体積に主に依存する物性で有ることが解った。

炭化水素化合物のlogPを分子体積に対してプロットすると、非常にきれいな相関が得られる。

分子中にハロゲン原子を含む分子も、体積に対してプロットすると炭化水素化合物のものに完全に一致する。

含酸素化合物は炭化水素の線に平行で、線の上に来ることがわかる。アルコールはエーテル、ケトン、アルデヒドと比べ水溶性の化合物なので、logPは低いものになると考えていたが、全くの誤りで、水への溶解性も高い分、オクタノールにも溶解性が高く、比率としては他の含酸素化合物と変わらず、体積だけで効いていることがわかる。他のものについてもこちらにまとめたので参照いただきたい。従って、含酸素、含窒素などの分類ごとに補正係数を定めてしまえば、後は分子体積 のみでlogPを推算する事が可能となる。YNU-シミュレータには5692化合物から決めた加算値を使って以下の精度で推算する式が搭載されている。

対応するブラウザーをお使いなら、上のキャンバスに分子を複数描けばlogPがどのくらいかを得る事ができる。詳しい分子の描き方はPower ToolsのSmilesを参照して頂きたい。 他の原子を使う、原子数の制限をあげたバージョンは要望があれば考えよう。

この機能はHSPiP(Hansen Solubility Parameters in Practice)というプログラムに搭載されている。最新の研究はPowerToolsのプログラムで紹介している。どのような方向に進化しているのか知りたければ覗いてみて欲しい。

ちなみに、logBCF(Bio Concentration Factor) 生物濃縮性はlogPと相関がある。

環境影響評価では重要な指標であるので覚えておくと良い。

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