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27-May-2017

ポリマー:セルロース誘導体のハンセン溶解度パラメータ(HSP)とグリーンソルベントへの溶解性

2013.8.2

HSPiP Team Senior Developer, 非常勤講師 山本博志

EASTMAN社の “Resin Solubility Chart”というカタログを入手した。
http://www.eastman.com/Literature_Center/M/M282.pdf
このカタログにはEASTMAN社の樹脂と同社が扱っているグリーンソルベントへの溶解性が溶液粘度の形で記載されている。このカタログは、樹脂のHSPをどう決定するか、自分専用の溶媒のグループを作ってその中から混合溶媒を探索する方法を学ぶのに最適な題材であろう。

ポリマーの溶解度パラメータを挟み撃ち法で決定するには、HSPが既知の溶媒がその樹脂を溶解するか、溶解しないかの情報が必要になる。カタログには以下の形式で樹脂が溶解した場合にはその粘度が、溶解しない場合にはI(Insoluble)と記載されている。

赤色で記載されているものは、EASTMAN社の製品である。まず最初にやる事はテーブルを作る事だ。手助けになるように、 HCode (Hansen Code) と CAS番号をまとめておく。

Hcode Solvent CAS
464 Methyl Acetate 79-20-9
328 Ethyl Acetate, Urethane Grade 141-78-6
328 Ethyl Acetate, Urethane Grade 141-78-6
290 Dimethyl Carbonate 616-38-6
440 Isopropyl Acetate 108-21-4
963 t-Butyl Acetate 540-88-5
579 n-Propyl Acetate 109-60-4
430 Isobutyl Acetate 110-19-0
1254 n-Propyl Propionate 106-36-5
102 n-Butyl Acetate 123-86-4
1006 n-Butyl Propionate 590-01-2
45 p-Amyl Acetate 628-63-7
432 Isobutyl Isobutyrate 97-85-8
419 Hexyl Acetate 142-92-7
1005 Pentyl Propionate 624-54-4
411 Heptyl Acetate 112-06-1
346 2-Ethylhexyl Acetate 103-09-3
371 EG Diacetate 111-55-7
Methyl Soyate
1009 Dibasic Esters
584 Propylene Carbonate 108-32-7
7 Acetone 67-64-1
481 Methyl Ethyl Ketone 78-93-3
499 Methyl n-Propyl Ketone 107-87-9
491 Methyl Isobutyl Ketone 108-10-1
489 Methyl Isoamyl Ketone 110-12-3
498 Methyl n-Amyl Ketone 110-43-0
183 Cyclohexanone 108-94-1
203 Diisobutyl Ketone 108-83-8
209 Diacetone Alcohol 123-42-2
Eastman C-11 Ketone
438 Isophorone 78-59-1
591 Eastman PM Solvent 107-98-2
380 EG Methyl Ether 109-86-4
376 EG Ethyl Ether 110-80-5
586 PG tert-Butyl Ether 57018-52-7
594 PG Propyl Ether 1569-01-3
1004 Eastman EP Solvent 2807-30-9
587 PG Butyl Ether 5131-66-8
375 Eastman EB Solvent 111-76-2
16615 DPG Methyl Ether 34590-94-8
270 Eastman DM Solvent 111-77-3
268 Eastman DE Solvent 111-90-0
271 Eastman DP Solvent 6881-94-3
1056 EG Hexyl Ether 112-25-4
267 Eastman DB Solvent 112-34-5
373 Eastman EEH Solvent 1559-35-9
593 PG Phenyl Ether 770-35-4
592 Eastman PM Acetate 108-65-6
377 EG Ethyl Ether Acetate 111-15-9
369 Eastman EB Acetate 112-07-2
311 DPG Methyl Ether Acetate 88917-22-0
269 Eastman DE Acetate 112-15-2
264 Eastman DB Acetate 124-17-4
7154 Eastman EEP Solvent 763-69-9
Eastman TexanolTM Ester Alcohol
456 Methyl Alcohol 67-56-1
325 Ethyl Alcohol (Anhy)–Formula C (SDA 3A) 64-17-5
570 Isopropyl Alcohol 67-63-0
569 n-Propyl Alcohol 71-23-8
611 tert-Butyl Alcohol 75-65-0
93 sec-Butyl Alcohol 78-92-2
431 Isobutyl Alcohol 78-83-1
92 n-Butyl Alcohol 71-36-3
732 p-Amyl Alcohol 75-85-4
182 Cyclohexanol 108-93-0
345 2-Ethylhexanol 104-76-7
637 Toluene 108-88-3
VM&PTM Naphtha
Xylene
Aromatic 100
524 Methylene Chloride 75-09-2
617 Tetrahydrofuran 109-99-9
647 1,1,1-Trichloroethane 71-55-6
536 2-Nitropropane 79-46-9
10427 Parachlorobenzotrifluoride 98-56-6
297 N,N-Dimethyl Formamide 68-12-2
521 N-Methyl-2-Pyrrolidone 872-50-4

hsd (Hansen Solubility Data) フォーマットのテーブルを作るにはHSPiPを使う方法と表計算ソフトを使う方法がある。溶解性を表すスコアを加工する場合には表計算ソフトの方が便利だが、HSP値、分子体積などを準備するにはHSPiPの方が便利だ。どちらを使うにせよファイルの中身はタブ区切りのテキストなので余り心配する必要は無い。(自分はマックユーザーなので、データ加工までは表計算ソフトで行い、最後の計算のみHSPiPを使うか、パワーツールをMacから使う)

自分がどうやっているかを紹介しよう。まずHSPiPを立ち上げてFile/Newを選んでブランクのテーブルを作る。

 

そして、Master にチェックを入れて溶媒のリストを表示し、望遠鏡のマークの横のテキストフィールドにHCodeを入力しサーチボタンを押すと溶媒が検索される。

溶媒の行の一番左端の四角をダブルクリックすると溶媒がメインテーブルにコピーされる。

上にある溶媒を全て入れこんだテーブルを作る。

テーブルができあがったら、FILE/SAVEから Test.hsdという名称で保存する。このファイルはテキストエディターや表計算ソフトから開く事ができる。

そしてMVolの後ろの列に溶解性のScoreを書き込む。このカタログでは色々なポリマーの粘度が記載されているが、溶媒の行は共通なのでこれから先は表計算で扱う方が楽だ。(自分は、よく使う溶媒は表計算のテーブルの形で持っているのでCopy/Pasteで直接全部作る方が楽だ。)粘度のデータをどう扱うかに関しても、表計算ソフトの方が楽だ。ある時には粘度を持つものは溶解しているのでScore=1、それ以外Score=0とか、1-6で入力する、実数で入れる、logを取る、分子量で割るなどのカラムを作り、それを下のテーブルのG列にコピーし、A-Iまでをコピーしてメモ帳などに貼付けTest01.hsdという名前で保存すれば良い。そうしてできたファイルはHSPiPでもパワーツールでも利用する事が可能になる。

例えばEastman社のカタログの例では、Eastman T CAB-381-0.5 8wt%の粘度をテーブルに入れこんでみよう。

上の例ではK列をコピーしてG列にペーストし、A-IまでをコピーしてEastCAB01.hsdという名称でセーブしよう。(download EastCAB01.hsd)

次にパワーツールのY-Fitを立ち上げる。初めて立ち上げた時には認証が必要になるが、そうでなければ次のような初期画面になる。

ここでChoose file ボタンをクリックして先ほどの EastCAB01.hsdファイルを選択する。hsdファイルがきちんとできていれば溶媒が3次元空間に読み込まれる。

そして、Fit Paneに切り替えて、Fit ボタンを押す。

探索が終了すると自動的にView Paneに切り替わるのでSphere1の右端にあるチェックボタンにチェックを入れる。

すると緑色の大きな球が表示される。これはHansen球と呼ばれるもので、球の中心がこのポリマーのHSPとなり、ある溶媒がこのポリマーを溶解するかどうかは、溶媒のHSPベクトルがこの球の内側を指すか、そうで無いかから判断する。Eastman T CAB-381-0.5のHSPは [15.37, 10.67, 6.46] 、球の半径は7.07となる。

Drag=回転, Drag+Shift=拡大/縮小 Drag+Alt or Command(Window key)=移動

もし、HTML5対応のブラウザーを使っているなら上のキャンバスに溶媒とHansenの溶解球が表示される。溶媒をクリックするとその溶媒名が表示される。

もし、Y-Fitと表計算ソフトを使っているのであれば、HSP距離(Distance)とREDの値は計算式で埋め込む。

Scoreが1(ポリマーを溶解する)であるのにREDが1以上、Scoreが0(溶解しない)のにREDが1以下は間違って認識された事になる。

こうした例外は、HSP的には良く溶解するはずだが、分子のサイズが大きくポリマーのネットワークに侵入できないであるとか、HSP的には溶解しないはずであるが、分子が小さく溶解してしまうなどの理由がある。こうした例外があるにしても、ひとたびポリマーのHSPとその相互作用半径が求まると、非常に容易に混合溶媒などは設計できる。このカタログに記載されている溶媒は、分子中に水酸基、エステル基、ケトン基、エーテル基のみを持つ所謂グリーンソルベントだ。毒性は低く環境影響も小さいのだが溶解性についてはどちらかというと極性が高く、非極性のポリマーの溶媒としては適さないかもしれない。そうした場合HSPiPの溶媒最適化ルーチンが威力を発揮する。

溶媒の最適化法を学ぶ前にsof “Solvent Optimizer Format” を覚えておこう。HSPiPでは溶媒最適化ルーチンにDefaultOptimizerSolvents.sofを使う。しかし、自分がよく使う溶媒だけを集めた自分独自のsofファイルを作り利用する事ができる。まず最初にメインの画面でO(Optimizer)を洗濯する。

Solvent Optimizer パネルが開いたら、そのリストにある溶媒を全部選択してDeleteボタンを押す。(コンピュータによって異なるが、右のリターンキーの上にあるキーはDeleteと書いてあっても消せない事がある。それはBack Spaceが割り当てられているからだ。キーボードの上の方ファンクションキーのあたり、拡張キーボードの矢印の上あたりを探してみて欲しい。)

そうすると、空のファイルができるので、これに自分用の溶媒を次ぎたしていく。

メインのパネルに戻り、Masterや10Kにチェックを入れて溶媒リストを表示させる。EASTMAN社のカタログ溶媒ならMasterだけで十分だろう。双眼鏡のマークの隣のテキストフィールドに名称やCAS#を入れて検索するか、HCodeから探すか、登録したい溶媒を探す。見つかったら溶媒の行の先頭にある四角形の所で右クリックする。すると確認画面が現れるのでOKを押す。

すると、Solvent Optimizerのテーブルに溶媒が付け加えられる。必要な溶媒を全て登録したら(フロッピーのマーク)保存ボタンをクリックする。

今後、もし溶媒探索を自分が作ったsofで行いたい場合には何時でもsof を切り替えて探索を行う事ができる。(ダウンロード Eastman.sof) 最近、溶媒メーカーが自社の溶媒のHSPをクライエントに提供したり、ポリマーメーカが自社のポリマーを溶解/溶解しない、溶媒のHSPを提供し始めている。一歩進んで、hsdやsofファイルを提供するのも一般的になって行くだろう。

Eastman.sofを読み込んでいるとして説明を続けよう。Eastman社の T CAB-381-0.5のHSPは [15.37, 10.67, 6.46]と決定されたので、この値をSolvent Optimizer のtargetに入れる。

すると、溶媒テーブル中のDistance(HSP距離)が自動的に計算される。タイトル行のDistanceをクリックすると昇順(降順)にソートされる。この場合、一番良く溶解するのはアセトンである事が示されている。1、2、3と並んでいるボタンの2をクリックすると2成分の混合溶媒でHSPが一番良く合うように混合比率が計算されて結果が表示される。

この場合ではDMF : t-butyl acetate の比率が50:50の時、HSPが一番良く合うと計算された。もしこのDMFを使いたくないのなら溶媒の行でCtrl-Clickすると行が灰色になり、その後からはDMFは使われない。

 

Eastman社のカタログには、Cellulose Acetate (EastmanT CA-398-3 10Wt%)の溶解度のデータも記載されている。

しかし、酢酸セルロース(Cellulose Acetate)はこれらのグリーンソルベントへは溶解性が高くない。(ほとんどの溶媒で溶解しない)そこでEastman社の溶媒だけを使ってY-Fitを行うと、溶媒の多様性が低いために [17.3, 12.43, 6.74] 相互作用半径 5.05となるがこれは信頼性が高くない。

Polymer Handbookや他の資料から、グリーンソルベントではないが溶解性のデータを拡充してY-Fitをやり直した。

貧溶媒

hexane 2-ethyl-1-hexanol diethylene glycol dimethyl ether
cyclohexane ethylene glycol diethylene glycol diethyl ether
benzene 1,2-propanediol  diethylene glycol monobutyl ether
toluene diethylene glycol Propylene Glycol Monomethyl Ether
xylene (o-) 1-chlorobutane DIPROPYLENE GLYCOL MONOMETHYL ETHER
ethylbenzene carbon tetrachloride Tripropylene Glycol Monomethyl Ether
Isopropyl benzene Chlorobenzene propyl acetate
decahydronaphthalene 4-methyl-2-pentanone isopropyl acetate
methanol diethyl ether butyl acetate
EtOH diisopropyl ether sec-butyl acetate
propyl alcohol dibutyl ether pentyl acetate
isopropyl alcohol dihexyl ether 2-ethylhexyl acetate
butanol 2-ethoxyethanol Butyl Lactate
sec-butanol Ethylene Glycol Diethyl Ether 2-methyltetrahydrofuran
Octanol 2-butoxyethanol

良溶媒

benzyl alcohol 2,5-Hexanedione diethylene glycol ethyl ether acetate
nitromethane diacetone alcohol Diethylene Glycol Butyl Ether Acetate
nitroethane 1,4-dioxane ethylene glycol diacetate
acetonitrile 2-methoxyethanol METHYL LACTATE
benzonitrile 2-Phenoxy Ethanol ethyl lactate
1,2-dibromoethane 2-(2-methoxyethoxy)ethanol THF
methylene chloride methyl formate furfural
1,1,2-trichloroethane ethyl formate furfuryl alcohol
1,1,2,2-tetrachloroethane methyl acetate tetrahydrofurfuryl alcohol
trichloroethylene ethyl acetate
tetrachloroethylene gamma-valerolactone 
Acetone methyl acetoacetate
cyclohexanone ethylacetoacetate
Cyclohexanone, 4-methyl- Ethylene Glycol Monomethyl Ether Acetate
isophorone 2-ethoxyethyl acetate

Y-Fitの結果からは [19.83, 9.47, 8.15] 相互作用半径 9.6となった。

Drag=回転, Drag+Shift=拡大/縮小, Drag+Alt or Command(Window key)=移動.

もし、HTML5対応のブラウザーを使っているなら上のキャンバスに溶媒とHansenの溶解球が表示される。溶媒をクリックするとその溶媒名が表示される。

[19.83, 9.47, 8.15] をSolvent Optimizer のターゲットに入れて Eastman.sof ファイルを使って溶媒検討した所、単独溶媒ではNMPが一番良いがそれにしても距離が長く、酢酸セルロース(Cellulose Acetate)の溶媒を探索するのは難しい事がわかる。(逆に言うと、そこで酢酸の一部を酪酸に置き換えて溶解性を揚げたのがCABであることがわかる)

グリーンソルベントとしてはpropylene glycol monophenyl etherが一番良いが、それにしてもHSP距離は7.23であった。

Isophoroneを使ってよいのなら propylene glycol monophenyl ether との58:42溶媒が2成分系の混合溶媒では一番良いと示唆される。

Eastman社のカタログには、溶解後の粘度が記載されている。これが固有粘度であったら定量的解析などもっと高度な解析が可能になるが、単に粘度だと何も溶けていない溶媒自体の粘度の違いがあり単純ではなくなってしまう。溶媒メーカー、樹脂メーカーと必要なデータを共有するなど今後の課題も浮かび上がった。

同じカタログに、ブチレートの代わりにプロピレートのデータが記載されている。それについては自分でやってみよう。