Pirika logo
JAVAと化学のサイト

Pirika トップ・ページ

Pirikaで化学

ハンセン溶解度パラメータ(HSP):

雑記帳

片々草はじめに

片々草(I) 目次

片々草(II) 目次

悲しき酒(片々草抜粋)

 

 

 

 

 

Last Update

02-Jan-2013

天   国           (41)
  
 初めて銀座の「歩行者天国」というのを見た。どんな用事があるのか知らないが、何とまあ呆けたような顔をした群衆が、うじゃうじゃと右往左往していることか。
 それだけならまだいゝ、どういう了見か、その人ゴミの中で物を食ったり飲んだりするのが、一種の流行みたいになっていてーーー、ラムネやアイスクリームなんてのはまだ可愛い方で、やきそば、おでん、ホットドッグ、とうもろこし・・・といった類のものを、みさかいもなく、いゝ年頃のお嬢さんまでが歩道でパクついている。歩きながらのあり、歩道にしゃがんでいるのあり、電話ボックスや街灯によりかかっているのありーーーまさに乞食の群れではないか。

 いつか、軽井沢で会議があって出かけたとき、上野駅で横浜製油所のM・Yさんとホームで一緒になった。
 夏の軽井沢と言えば、避暑地として有名なところであるが、その軽井沢行の専用列車が、男・女を問わずほとんど若者ばかりで満席なのである。元陸軍士官学校出身のM・Yさん慨嘆して曰く ”おい、こんなこっちゃあ、いずれ日本は滅びるぜ”・・・。
 これらの銀座の様子を、軽井沢行の列車の様子を、平和な風景XX天国、と喜んでいていゝのだろうか。それとも、そのように感じるこちらが“ふる〜い男なんでござんじょうか”。

 いつか、扇谷正造さんが、”かって日本は「滅私奉公」一色だったが、今は日本を取り巻く中国・ソ連・台湾・韓国・・・いってみれば、アメリカでさへ滅私奉公である。ところが日本の状況はどうか?、まさに「滅公奉私」である” と嘆いておられたが、本当に、日本だけがーーー日本の若者だけが、平和だ、平和だと、あふれる物に埋まってウツゝを抜かしていて、こんなことでいゝのだろうか。

         幸   せ          
  
 毎日、毎日が平凡で ”事もない日々を送れる ”ということは、本当には何ものにも代えがたい幸せである筈である。ところが、人間贅沢なもので、そういう幸せな毎日が長く続くと、今度はその毎日毎日が刺激がなく、どうもぬるま湯につかっているような日々で不満を抱くようになってくる。

 そのような家庭で、ある日、亭主が交通事故か何かで突然亡くなったとする。奥さんは当然、自分の力で残された子供の教育に心を砕き、なみなみならぬ努力をするだろう。そして、その奥さんは、不満どころか亭主の遺影にぬかずきながら ”あなたの遺した子供達も、あなたの生前のご意志どおりに立派に育っています”・・・と、その日その日の苦しい生活に、むしろ生き甲斐を感じ、ひそやかな幸せを感じるのではないだろうか。

 この二つの生活を比較すると、平々凡々な波風のたたない生活の方が、本当は幸せな筈なのだがーーー一体、幸せとは何なのだろうか?。
                                  ( 73・S48・2)