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悲しき酒(片々草抜粋)

 

 

 

 

 

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02-Jan-2013

無  題・(Ⅲ)

 川柳が好きである。五・七・五・・・たった十七文字の中に、世の中の森羅万象あらゆることを詠みこんであかせない。その観察眼のするどさ、表現の的確さ、すべての無駄を省いたスマートさーーー。

「文章を書いて、読者を “おこらせる”のは易しい。”泣かせる”のもまあまあ。いち番難しいのは ”笑わせる”ことだ。さらに”笑わせて、すとんんと納得させるのは、もっと難しい”ことだ」という。

 だとすれば、この川柳はどうだ。すべてこの世の出来事を十七文字の中に凝縮して、さらりと笑わせ、すとんと納得させてくれるではないかーーー。
 まあ、いろいろ講釈を並べるより、土筆生の特選川柳四十題。古いの、新しいの雑多に並べて「無題」その第三弾ーーー。

    借金へ 押す実印の 出来のよさ

    いくらだと 正宗の値を 訊きは訊き

    がま蛙 蹴とばされたが 腑に落ちず

    懐へ 手を入れるのは 無い証拠
     
    嫁いまだ これが悪友だと 知らず

    ケンカには 勝ったが亭主 飯を炊き
   
    死んでから 一緒になろう 馬鹿な奴  
     
    この世から 離れ離れに 浮き上がり   

    病人の 顔を金魚の 方も飽き

    飲まぬ席 だけへ代理と して出され

    侠気(おとこぎ)を 出して 女房に叱られる

    貝ひろい 伴奏つけりゃ 安木節

    挨拶が ちと長すぎる 箸を割り

    発車ベル 知らぬ男と かけっくら

    博士ふと 米の値段を 妻に聞き

    血相を 変えて乗り越し 立ち上がり

    柔らかに 人分けていく 勝ち相撲

    女房を 怖がる奴は 金ができ

    歯医者まだ 突っつきたらず 又のぞき

    根気よく 牧師与作に 説いている
  
    うたたねも 上品なのは 本を持ち

    棒押しに 勝ったが時計 どうかなり

    釣れぬ奴 ビクをのぞくと かくすなり

    本降りに なって出て行く 雨宿り
 
    あくびかと 思や八木節 歌いだし

    ひとりもの うなされるだけ うなされる
  
    耳に栓 つめて寝てみる ノイローゼ

    ”用心”の マイクを すりも聞いている

    身に覚え あるしくじりを 攻めあぐね

    親類に 碌なのはない 玉の輿

    牛後たらん より鶏口の 旅役者

    使うべき 金に使われ 暮れにけり
    
    もう五年 遅いと達磨 首ばかり

    犬の名を 太郎と呼んで 夫婦きり  

    武者修行 裸にされて 山を降り

    爪立てて 見えぬところは 口を開け

    骨あげに 泣き泣き金歯 さがして居

    建てたらと 思うところに 誰か建て

    名人の 碁は夕刊に 二目打ち
(83・S・58・11)