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2022.7.31

関西大学、山本秀樹教授がハンセン溶解度パラメータの推算法を自称している件について

自らが作成した、恣意的な値を返すソフトウエアーで、返す答えを「ハンセンの溶解度パラメータ」と呼ぶと、やりたい放題になってしまうことを、前回書きました

自称-HSPを使えば、「HSP法を用いたXXX・システム」はいくらでも作れてしまうからやりたい放題なのです。

そのような事をすれば、

常に疑われる事になります

関西大学の山本秀樹教授とミルボン社の伊藤氏の、日本動物実験代替法学会の機関紙(AATEX:Alternatives to Animal Testing and EXperimentation)に掲載された論文があります。

Len Ito, Nobuyuki Fujiwara, and Hideki Yamamoto

AATEX 25(1), 13-18, 2020
Highly Accurate Predictor of Eye Irritation That Utilizes Rabbit Eye Potential Parameters Calculated Based on Hansen Solubility Parameters


タイトルを訳すと、"ハンセン溶解度パラメータから算出したウサギの眼刺激性パラメータを利用した高精度な眼刺激性予測ツール"になるのでしょうか?(DEEP L翻訳です)

この論文でやろうとしていること

ウサギの目のハンセンの溶解度パラメータ(HSP)を定めてあげる。
化合物のHSPからウサギの目のHSPのHSP距離を計算する。
Modified Maximum Average Scores (MMASs) と言うスコアがこのHSP距離と高い相関があった。

この結果自体は、何も問題視するものではありません。
これまでにも、皮膚透過性などで同じような研究はたくさんなされています。

この論文は自称-ハンセン溶解度パラメータでしょうか? 公式なハンセンの溶解度パラメータでしょうか?

公式ソフトウエアー、HSPiPと言う記載は一切ありません。

科学論文は、読者による再現試験が可能になるように書かれなくてはなりません。 そこで、論文中で、ソフトウエアーを使い、その出力が論文中で重要な意味を持つ場合には、ソフトウエアーの名称とバージョンを記載しなくてはなりません。

さもなければ、恣意的な数値を載せて、「やりたい放題になってしまう」からです。

HSPiPと言う記載がない以上、HSPiPがなければ出てこない値を使って議論してはいけないと言う事です。

試験を行なった化学品のHSPの入手先は?

この論文中では、33化合物のHSPを扱っています。
どうやって、これらの化合物をHSPを入手したのでしょうか?

論文中では次のように記載されています。
we calculated 3 components (dispersion force, dipolar interaction, and hydrogen bonding strength) of 33 types of chemical compounds whose HSP scores have been reported (Hansen 2007)

参照の、Hansen 2007とは、Hansen, C.M. (2007) Hansen Solubility Parameters: A User’s Handbook. (CRC Press).となっています。(second editionが抜けている)

「HSPスコアが報告されている33種類の化合物について、3成分(分散力、双極子相互作用、水素結合力)を計算した」(DEEP L翻訳)

と言うのはどう言う意味でしょうか?
参照したハンセン先生の著書には、もともと、化合物の3成分(分散力、双極子相互作用、水素結合力)が記載されているので、計算する必要はありません。
持って来れば良いだけです。

すると、この33化合物のハンセンの溶解度パラメータは、「自称-ハンセンの溶解度パラメータ」の計算値という事でしょうか?
そこで、”we calculated 3 components ”と言っているのでしょうか?
関西大学版HSP法(JKU-HSP法)を使って計算したと。

しかし、自分達だけが使える、恣意的な値を返すソフトウエアーを使う事は科学論文として認められないので、あたかも、すでにお墨付きのある”ハンセン先生の著書"を引用しているように書いているのでしょうか?

と常に疑われます。

疑われる根拠

簡単です。
33化合物のうち、1化合物はハンセン先生の著書に無いからです。
著書に無い化合物を”we calculated 3 components ”といえば、JKU-HSP法で計算した以外考えようがありません。

従って、この論文で言う、ハンセンの溶解度パラメータは”自称”の勝手な値と疑われても仕方ありません。

また、論文の結論で次のように書いています。

Once the HSP score database is expanded, which would allow HSP scores to be predicted from the molecular framework, HSP may be utilized as an important tool in in silico predictions of the eye irritation.

HSPスコアのデータベースが充実し、分子構造からHSPスコアが予測できるようになれば、」

公式ソフトウエアーHSPiPのデータベースは彼らが増やすことはできません。

HSPスコアのデータベースを充実させ、分子構造から予測するシステムは彼らの「自称」のものだと推測されます。
データベースの値を適当に調整して、原子団のパラメータを動かせば、いくらでも見かけの精度が高いシステムは作れるでしょう。そんなデータベースを作ろうとしているのでしょうか?

その時に「ハンセンの溶解度パラメータ」と勝手に名乗って良いか?という問題です。
値がなければ、評価の高い、ハンセン先生の著書から持ってきたようなフリをしていれば良いか?という問題です。

我々の信用を汚す行為なので「ハンセンの溶解度パラメータ」を自称するのはやめてほしいと言う事です。
これは、公式ソフトウエアーHSPiPのユーザーにとって、他人事では無い問題です。

Sphere法を用いたターゲットのHSP決定法

ハンセン先生は1967年に、ハンセン溶解度パラメータ法を発表しています。
”The Three Dimensional Solubility Parameter and Solvent Diffusion Coeffcicent" Therir Inportance In Surface Coating formulation
by
Charles M. Hansen

Copenhargen Danish Technical Press 1967

HSP1967

蒸発潜熱を持たないポリマーや無機物のHSPを、HSPが既知の溶媒を使った溶解性試験(分散試験)から決定するSphere法を発表しています。

既知のHSPを用いて、良溶媒をハンセンの溶解球の内側、貧溶媒をのハンセンの溶解球の外側に配置します。その時のハンセンの溶解球の中心をターゲットのハンセンの溶解度パラメータ、ハンセンの溶解球の半径を相互作用半径と呼びます。


Hansen先生にお聞きした話では、最初に作ったSphere用のプログラムは、Commodore 64(1982年)上で開発したという事でした。
(息子さんに手伝ってもらった)
私が始めてプログラミングを始めたのが、NEC-PC8801(1981年)なのでほぼ同時期にプログラミングを行なっていた事になります。

その後、2008年にHSPiPが販売され始めてからは、Sphere法は徐々に改良され続けています。GA法、Double Sphere法、Data法は私(山本博志)によって開発されました。

従って、Sphere法を用いて算出したのであれば、ソフトウエアーの名称とバージョンを記載する必要があります。
また、どのSphere法を使ったのか、パラメータはどう指定したのか?の情報を記載する必要があります。
それが無いと、読者は再現性を見ることができません。
(数は少ないのですが、Sphereを求める別のアルゴリズムなどの論文もあります。)

この論文ではウサギの目のHSPをどう求めたか?

Sphere法で求めたと記載がありますが、HSPiPを利用したとはどこにも書いていません。

また、Sphere法でターゲットのHSPを求めるには、既知の溶媒のHSPが必要になります。
彼らの使っている、既知の溶媒のHSPがどのような素性なのかは、先に書きました。

自分達で恣意的に定めた自称-HSPを入力して、HSPiPのSphere機能を使ってターゲットのHSPを決めたというのでしょうか?

彼らが、「関西大学版の3次元溶解度パラメータ」を開発したと言わないのは、正式ソフトウエアーの便利な機能を借用する為でしょうか?


それとも、記載していないだけで、全てHSPiPを使ってやっているのでしょうか?

すると、彼らの言う結論は何を言いたいのでしょう?

HSPスコアのデータベースが充実し、分子構造からHSPスコアが予測できるようになれば、」

HSPiPのデータベースを充実させているのは我々です。分子構造からHSPスコアが予測できるシステムを開発しているのは我々です。

その我々が出している、正式ソフトウエアーとは異なる値を「自称-ハンセンの溶解度パラメータ」と呼ぶ。その自称-HSPを算出するプログラムをJKU-HSP法と呼ぶ。

論文の中では、何が自称で、何が本物なのかわからないように正しい記載をしない。

HSPの利用者に混乱を与える事が目的でしょうか?

疑われても仕方ありません。


引用間違い
Hansen divided cohesive energy, indicated by the SP value, into three components (dispersion force, dipolar interaction, and hydrogen bonding strength) in defining the Hansen solubility parameters (HSP) (Hansen et al. 2004).

Hansen et al. 2004:Hansen, C.M. and Smith, A.L. (2004) Using Hansen solubility parameters to correlate solubility of C-60 fullerene in organic solvents and in polymers, Carbon, 42(8–9), 1591-1597. 

アスファルテンの研究からコピペしたのか関係ない論文。

反論も含め、ご意見をお待ちしています。

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どんなに良い発表を行っても、自称しているだけなら信用されない。

学位論文も特許も、「自称-ハンセンの溶解度パラメータ」

HSP推算法を自称するために、自称を重ねる。


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