固体電解質の組成設計は難しい。(多)峰性のデータの解析(前編)

トヨタと出光が固体電解質の開発を共同で行うらしい(2023.10.12)。日系の企業には頑張ってほしい。
そうした開発をコンピュータでやるのは難しいものだ。2004年頃にニューラル・ネットワーク法で多峰性の解析をやろうとして失敗したのが懐かしい。

固体電解質の組成開発を例に多峰性データの解析方法を解説します。

リチウム・イオンバッテリーの溶媒が燃えてしまう事故が多発しています。
それならLiイオンが拡散しやすい燃えない固体を使えば良いです。

そのような、Liイオンが拡散しやすいガラスのデータが公開されています。 色々な元素が使われていて、多次元ベクトルになっています

多次元ベクトルの分類方法としては自己組織化マップ法を用います。
何がやりたいかというと似たベクトルを2次元上の似た位置に配置することです。
ある組成ベクトルのLiイオンの拡散係数が高ければ、その領域は有望です。
でも、どうやって?それをやるかです

コホネンの発表したSOM法とは、まず、初期値としてメッシュ1つ1つにn次元乱数ベクトルを入れます。
そして例えば組成1のベクトルと一番よく似ているベクトルを選び出し、そのベクトルと、その周辺を少しだけ入力ベクトルの方向へ動かします。
次に組成2を同じように一番よく似ているベクトルを選び出し、そのベクトルと、その周辺を少しだけ入力ベクトルの方向へ動かします。
これを繰り返すと似たベクトルは似た位置に自己組織化して行きます。

実際にやってみましょう。
readボタンを押してデータを読み込みスタートボタンを押します。
ラベル表示に切り替えます。

赤丸の領域はLiイオンの拡散係数が高くなる組成領域を示しています。
処方によって、ベクトルは異なります。
ベクトルが異なれば2次元上では異なる位置に来ます。
どの領域を選んで研究を進めるか大事な戦略になります。

Liイオンの拡散係数が高い山となる、ガラスの組成領域が複数あります。
こうした問題に対して、コンピュータで、拡散係数の高くなるであろう組成を逆設計させたい。
その場合には定量的解析が必要になります。

前半は以上です。