ハンセン溶解度パラメータ(HSP)とパッキンの膨潤性

2022.11.24改訂(2010.5.26)

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概要:

特にパッキンに使われるようなポリマーであれば、どんな溶媒に使えて、どんな溶剤には使えないかの情報は豊富に存在するだろう。
しかし、単独では貧溶媒なのに、貧溶媒同士が組み合わさると良溶媒になってしまうケースについては、他の溶解度理論ではお手上げになってしまう。
そのような場合でもHSPは良好なガイドラインを示すことができるため、広く応用されている。

内容:

この記事に関しての詳しい内容は
化学工業社、化学工業2010年8月号をご覧ください。(化学工業社はなくなってしまったのでpdfを置いておきます)

化学工学の分野では、様々なパッキンが使われています。
そうしたパッキンがどのような溶媒で使えるかは、Packing landなどでも詳しく紹介されています。
しかし混合溶媒を使った時の耐溶剤性などについては情報はほとんどありません。

今回はこうしたゴムの耐溶剤性をHSPを使って評価する方法を紹介します。
データは次の資料から得ました。ネットで検索すればすぐにダウンロードできるでしょう。

DuPont Dow Elastomers, Technical Information Kalrez
VitonGeneralInfo_05-Jul.PDF、Viton05.pdf
正確には分からないのですが、この溶解度のデータはViton Aのものだと思います。

これはvinnylidene fluoride と Hexafluoro propylene の共重体です。
(PVdFについてはこちらも参照
ここでは50%以上膨潤するものをscore 1とおいてみます。

そして,表を作り、HSPiPで読み込み、球を計算します。
するとViton AのHSPは [14.63, 9.98, 1.59] そして相互作用半径は 8.8とたちどころに求まります。

Drag=回転, Drag+Shift キー=拡大、縮小, Drag+コマンドキーかAltキー=移動。
溶媒をクリックすれば溶媒の名前が現れる。

ポリマーのHSP値と相互作用半径が求まれば、後はどんな混合溶媒に強く膨潤してしまうかは簡単に計算できます。

混合溶媒のHSPは下式で簡単に計算できます。

混合溶媒のHSP


[dDm, dPm, dHm]=[(a*dD1+b*dD2), (a*dP1+b*dP2),(a*dH1+b*dH2)]/(a+b)

混合比率は体積分率で計算します。

そして、この [dDm, dPm, dHm]とポリマーのHSP距離が8.8以下であれば50%以上膨潤すると判断されます。

例えば、Viton Aは ethanol[15.8, 8.8, 19.4](5-20% 膨潤 B ランク) そして isooctane [14.1, 0, 0](5%以下, A ランク) はどちらも貧溶媒です。

しかし、エタノールとガソリンを混ぜたガホールはVitonAを強く膨潤させる事が知られています。

Drag=回転, Drag+Shift キー=拡大、縮小, Drag+コマンドキーかAltキー=移動。
溶媒をクリックすれば溶媒の名前が現れる。

エタノールの比率を変えながら混合溶媒のHSPを計算し、先ほど求めたViton AのHSPからの距離をプロットしてみると、エタノールの比率が15−35%で50%以上膨潤する相互作用半径(8.8)以下になる事がわかります。

第3成分を入れる時にも、このようにHSPの3次元ベクトルで考えると非常に効率よくパッキンを設計できます。

2011.4.16 パッキン用のポリマーの設計者になってみよう。

下のプログラムは、このフッ素系のパッキンに使われるモノマーの比率を入れて計算ボタンを押すと、そのポリマーのモノマー・シーケンス(並び順)を答えてくれるソフトです。

いろいろな値を入れてどんなポリマーができるか、試してみてください。(この詳しい原理はposeidonのページを読んでほしい)

VdF(A) mol%
HFP(B) mol%
TFE(C) mol%
Ety(D) mol%
Pro(E) mol%



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