HSPiPのQSAR機能で経口吸収、皮膚透過性

HSPiPにはver.5からQSAR機能が搭載されている。その中に皮膚透過と経口吸収の例題がある。
このところ、皮膚透過のpathwayとハンセンの溶解度パラメータであるとか、ラットやうさぎのLD50, 経口と経皮の違いなどのブログを書いているが、とてもアクセス数が多いので関心のあるテーマなのだろう。(誰一人コメントもくれないが)

今、学生と始めたpirikaの研究会でも、動物実験代替法開発をやっている学生が2名いる。そこで研究会でHSPiPのQSAR機能を説明した。

HSPiPで皮膚透過のデータ(SkinPenetration.hsq)を読み込んでQSARボタンを押すとこんな結果が得られる。

求まった式は
logKp = 0.452 + 0.164.δD – 0.087.δP + 0.0794.δHDon – 0.312.δHAcc – 0.00477.MVol – 2.19.Ovality
になる。
つまり、このQSAR式が得られたら、化合物のSMILES構造式があれば、HSPiPで必要な物性を計算して、予測値を返してくれる。

実際に実験をやって結果が出たら、また、QSAR式を再構築するを繰り返すと、どんどん性能が高くなる。

元データは次の論文で、ネットからダウンロードできる。
International Journal of Engineering Science and Technology Vol. 2(6), 2010, 1526-1531 

経口吸収のデータ(OralAbsorption.hsq)を読み込んでQSARボタンを押すとこんな結果が得られる。

% Oral Absorption = 334 – 0.876.δHDon – 2.16.δHAcc + 0.208.MVol – 163.Ovality

こちらの元文献は次のもので、これもネットからダウンロードした。
European Journal of Pharmaceutics and Biopharmaceutics 48 (1999) 259-263 

このデータの日付を見ると、2015.6なので7年前にはこうした計算はHSPiPでできている事になる。HSPiPをお持ちなら是非試して欲しい。

変数を自動探索したり、制限を与えたり、自分なりの式の形にしたり、結構楽しめる。
(もともと私が作成してAbbott先生がHSPiPに載せている。少しバグがあって全部動いているわけでは無いが、研究会用には別途高機能なGROVE解析ツールなどを使っている。)

現在、私はHSPiP用の新しいパラメータを作成している。
それを使うとどうなるか? もpirika研究会の大事な課題だ。

例えば、新たに導入された、ED(Electron Donor)やEA(Electron Acceptor)はQSAR用のパラメータとしてはとても優れている。
EA(Electron Acceptor)と% Oral absorptionは逆相関がはっきり見えて取れるが、δHAccでは不明瞭だった。
つまり胃袋の中では胃酸で酸性で、EA(Electron Acceptor)が高い(ルイス酸が強い)ものは吸収されにくいという事だろう。
つまり、QSAR式の精度を高めるのにすごく貢献するということだ。

皮膚透過の場合には、δHDonではなく、ED(Electron Donor)と相関が出る。


HSPiPの理論ではHSP距離はとても重要で理解を深める。
しかし、HSP距離は一番小さくてゼロなのがQSAR上はとても問題になる。

このように、単にSOM描いて遊んでいるだけ、では無いことも理解しておいて欲しい。

「HSPiPのQSAR機能で経口吸収、皮膚透過性」への2件のフィードバック

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