2022.11.24改訂(2010.12.18)
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ポリマー・トップページ > 硫黄含有導電性ポリマーとハンセン溶解度パラメータ(HSP)
概要
硫黄を含む導電性のポリマーのHSPを決定した。
そのメイン骨格のHSPはC60、フラーレンのHSPに非常に近く、バインダーとしての高い性能が期待できる。
Double Spheresの機能を使った解析では、ポリマー中に非極性な部分と、ケトン程度の極性の領域が現れる。
その出処がとても興味深い。
内容
硫黄を含む導電性のポリマーはこのようなものがある。

Polythiazyl | Polythiophene | Poly(3-alkyl thiophene) |

Poly(2,5-thienylene vinylene) | Poly(isothianaphthene) |

Poly(3,4-ethylenedioxythiophene) | Poly(1,4-bis(2-thienyl)-2,5-dialkoxyphenylene) |
たまたま、Poly(3-hexylthiophene) と Poly(3-docosylthiophene) の溶解度のデータを入手した。
このような溶解度のデータが入手できると、HSPiPを使い、ポリチオフェンの誘導体のハンセンの溶解度パラメータ(HSP)を決めることができる。
HSPiPに搭載の通常のSphereプログラムを使うと、
Poly(3-HexylThiophene)のHSPは [19.1, 3.9, 6.4]で相互作用半径は6.43、
Poly(3-docosylThiophene)のHSPは [17.9, 2.3, 3.4]で半径は3.39と求まる。
アルキル基の長さが長くなる (6->22) とdPとdHが小さくなるという合理的な結果だ。
この情報があれば、どんな混合溶媒に溶けるか?、とか溶液粘度を考える上で重要な固有粘度はどのくらいか?などを考慮することができる。
これだけでも十分有用な情報だが、Ver.3.1.xからは新しいテクノロジー、Double Spheresが搭載されている。このDouble Spheresを使って解析すると、ポリチオフェンの誘導体には2つの領域が存在することが理解される。
まず、Poly(3-HexylThiophene)について違いを見てみよう。
Drag=回転, Drag+Shift キー=拡大、縮小, Drag+コマンドキーかAltキー=移動。
球が一つだとすると、Sphere: [19.10, 4.61, 3.88] Ra=6.43となる。
Drag=回転, Drag+Shift キー=拡大、縮小, Drag+コマンドキーかAltキー=移動。
球が2つあるとすると2つはこのように求まる。
- Sphere A: [17.8, 5.6, 6.2] Ra=3.27
- Sphere B:[18.0, 0.2, 1.0] Ra=5.37
次にPoly(3-docosylThiophene)を見てみよう。
Drag=回転, Drag+Shift キー=拡大、縮小, Drag+コマンドキーかAltキー=移動。
球が一つだとすると、Sphere: [17.91, 2.3, 2.97] Ra=3.39となる。
Drag=回転, Drag+Shift キー=拡大、縮小, Drag+コマンドキーかAltキー=移動。
球が2つあるとすると2つはこのように求まる。
- Sphere A:[15.9, 4.2, 6.1] Ra=2.9
- Sphere B:[18.5, 1.8, 3.4] Ra=4.05
JSMEを使って、Polymer Smilesを作る。

HSPiP ver. 5.3でポリマーを計算してみる。

最新のY-PBの推算機能を使ってメイン骨格のHSPを推算してみると、上のようになる。
この結果は自分にとっては非常に奇妙に思える。
つまり、 Sphere B [18.3, 1, 2] はポリマーのメイン骨格に相当することになる。
しかし、ヘキシル基やドコシル基は長いアルキル基で、これは疎水的な構造だ。
それでは、 Sphere A [17, 4.8, 6.1]に相当する、少しdPとdHが高い領域はどこから来たのだろう?
もし、未修飾のポリチオフェンの溶解度のデータの所在を知っている方がおられたら、ぜひお教えて欲しい。

以前の、球をひとつ使ったSphereでは、球の外側の2つの溶媒溶媒、例えば、赤い玉で示した物でも、水色の玉で示したものでも、混合溶媒は球の中心のHSPと同じになるので、どちらの混合溶媒でも溶解すると考えてしまっていた。

しかし、新しい、Double Spheres を使うと、赤い玉で示す混合溶媒の方が、より良い混合溶媒であることは明らかだろう。
混合溶媒の考え方も変えなくてはならない。
論文では、このポリマー溶液にC60を加えていた。
C60のHSPは[20,3,2]なので、ポリマーのメイン骨格とほぼ一致する。
そこで、このポリマーはC60の良好なバインダーになると思われる。
それでは、グラフェンやCNTを入れたらどうなるだろうか? HSPを比べてみて欲しい。
2012.9.3
世界最高レベル性能の塗布型カーボンナノチューブ分散高性能薄膜TFTを開発
ディスプレイ用途の実証研究進む-東レ・慶應大
東レは,CNTの表面に導電性を阻害しないような半導体ポリマー(ポリ-3-ヘキシル
チオフェン(P3HT))(HSPは [19.1, 3.9, 6.4])を付着させることにより単層CNTの凝集を抑制できることを見出していたとあります。
CNTのHSPが[19.4, 6.0, 4.5]なので、似たものは似たものを溶かすの原理で凝集を抑えているのだろう。
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