ポリスチレンの溶解性をHSPiPで解析

2022.11.5

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概要:対応するブログ

HSPiP(実践ハンセンの溶解度パラメータ)ソフトウエアーを用いて、ポリスチレンの溶解性を検討した。ポリスチレンのHSPの決定の仕方、新規溶媒の溶解性予測、貧溶媒の混合による溶解現象を解説した。アバターは前回と同じ博士くんだが、仮想カメラを変更した。また、iMovieの使い方を覚えてもう少し細かい修正を行なった。

HSPiPの基本的な使い方を理解する

  1. ポリスチレンの溶解性データの収集
  2. HSPiP用のデータ作成
  3. ハンセンの溶解球の計算
  4. 溶解性を予測する
  5. 貧溶媒の混合物がポリマーを溶解する

ポリスチレンの溶解性データの収集

どんな溶媒がポリスチレンを溶解するか?
どのくらい溶けたら溶解したと言うか? =>データソースや研究者に依存
今回のデータソース

  1. PolyInfoデータベース
  2. Polymer Handbook
  3. 溶媒ハンドブック
  4. ネット上の情報

そして1つに統合してHSPiP用のデータを作成する。

データのクレンジング

ここで問題になるのは、データソースによって評価が異なることも多々あることだ。
ポリマーは、重合方法、重合触媒、分子量、タクティシティー、精製方法などによって同じポリスチレンでも物性値は異なることが多い。

実に溶解性の判定でも異なるものが存在した。
そのデータを入れるか、入れないかを含めて多くのバリエーションがあって当たり前だ。
HSPiPを持っているなら、次のデータを使って自分の思うデータセットを作ろう。



テーブル
HCode Solvent δD δP δH δHD/A Score RED MVol CAS SMILES Results 溶解性
52 benzene 0 0 0 1 89.5 71-43-2 S
120 Carbon Disulfide 0 0 0 1 60.6 75-15-0 S
156 Chloroform 0 0 0 1 80.5 67-66-3 S
181 Cyclohexane(Above 35C) 0 0 0 1 108.9 110-82-7 S
183 Cyclohexanone 0 0 0 1 104.2 108-94-1 S
300 Dimethyl Phthalate 0 0 0 1 163.4 131-11-3 S
306 Dioxan 0 0 0 1 85.7 123-91-1 S
328 Ethyl Acetate 0 0 0 1 98.6 141-78-6 S
333 Ethylbenzene 0 0 0 1 122.8 100-41-4 S
307 Glycol Formal 0 0 0 1 69.9 646-06-0 S
524 Methylene Chloride 0 0 0 1 64.4 _75-09-2 S
521 NMP 0 0 0 1 96.6 872-50-4 S
535 1-Nitropropane 0 0 0 1 89.5 108-03-2 S
563 Phosphorus Trichloride 0 0 0 1 87.6 _7719-12-2 S
617 THF 0 0 0 1 81.9 109-99-9 S
641 Tributyl Phosphate 0 0 0 1 274 126-73-8 S
237 1,1-dichloroethane 0 0 0 1 84.7 75-34-3 S
224 cis-1,2-dichloroethylene 0 0 0 1 76.6 156-59-2 S
5 Acetic Acid 0 0 0 0 57.6 64-19-7 I
7 Acetone 0 0 0 0 73.8 67-64-1 I
325 EtOH 0 0 0 0 58.6 64-17-5 I
255 Diethyl Ether 0 0 0 0 104.7 60-29-7 I
364 Ethylene Chlorohydrin 0 0 0 0 67.3 107-07-3 I
16717 Isobutyl Phthalate 0 0 0 0 268 84-69-5 I
559 Phenol 0 0 0 0 88.9 108-95-2 I
3341 1,2,3,4-Tetrafluorobenzen 0 0 0 0 104.6 551-62-2 I
570 isopropyl alcohol 0 0 0 0 76.9 67-63-0 I
92 butanol 0 0 0 0 92 71-36-3 I
672 Tripropylene Glycol Monomethyl Ether 0 0 0 0 213.5 30373-82-1 I
405 furfuryl alcohol 0 0 0 0 87.1 98-00-0 I
364 2-chloroethanol 0 0 0 0 67.3 107-07-3 I
297 DMF 0 0 0 0 77.4 _68-12-2 I
58 benzyl alcohol 0 0 0 103.8 100-51-6 P
491 4-methyl-2-pentanone 0 0 0 125.8 108-10-1 P
404 furfural 0 0 0 83.2 _98-01-1 P
182 cyclohexanol 0 0 0 105.7 108-93-0 P
637 toluene 0 0 0 106.6 108-88-3 S, I
156 Chloroform 0 0 0 80.5 67-66-3 S, I
306 1,4-dioxane 0 0 0 85.7 123-91-1 S, I
328 ethyl acetate 0 0 0 98.6 141-78-6 S, I
181 cyclohexane 0 0 0 108.9 110-82-7 S(35)
715 p-dichlorobenzene 0 0 0 117.4 106-46-7 ??
481 MEK 0 0 0 90.2 78-93-3 P
481 MEK 0 0 0 90.2 78-93-3 S, I

CAS番号を使ってhsdxフォーマットのHSPiP用データ作成

CAS#を使ってHSPiPのデータベースから検索を行う。
(CAS番号が日付になる化合物は先頭に_が付いている。検索の時には含めない)
ファイルを読み込むとに処理する方法は別に説明する。

CAS#で検索

Scoreの設定

P(artially Solv.) S,I(Solve, Insolv.)をどうするのかを決めてScoreに0か1を入れる。

Sphere(ハンセンの溶解球)を計算する

CPStの溶解球

Sphereプログラムは、良溶媒(Score=1)をハンセンの溶解球の内側、貧溶媒(Score=0)を溶解球の外側に配置するような大きな緑色の球の半径と球の中心を探索する。

もちろん例外は存在するが、Genetic Algorithm(GA:遺伝的アルゴリズム法)は例外のが最小になるように探索する。

RED値(Relative Energy Difference:相対的エネルギー差)

相対的エネルギー差



簡単に言えば、溶媒のHSPが溶解球の外に位置すれば値は1以上、溶解球の内側に位置すれば1以下になる。
Scoreが1なのにREDが1以上ならWrong out(間違って出ている)になる。
Scoreが0なのにREDが1以下なならWrong in(間違って入った)になる。

テーブルにない溶媒を予測する

今回提供したデータセットの後半には、Scoreに”-“が入っている。
その化合物は、Sphereの探索には含まれないが、求まったSphereとのREDは計算される。
つまり、Score=”-“と入れておき、REDを見れば、その溶媒が良溶媒か貧溶媒かを判断することができる。

2009年ごろ、カップ麺にお湯を注いだところ、防虫剤の臭いがしたと問題になった。



テーブルにない溶媒を予測する



結局はカップ麺と防虫剤を同じ袋に入れていたのが原因だと判明した。
防虫剤の成分、パラ・ジクロロベンゼン(PDCB)とPStのREDが幾つになるか確認しよう。

混合溶媒の溶解性予測

Polyinfoのデータベースには、次の混合溶媒がポリスチレンを溶解するとあった。
THF/DMF [9/1(v/v)]
MEK/isopropanol(6/1)
cyclohexane/acetone
decahydronaphthalene/diethyl oxalate
Phenol/acetone

混合比率が書いていないものは、体積比50:50として自分で計算してみよう。

混合溶媒

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