No.4 ハンセンの溶解度パラメータ(HSP)を使った、AI-SOMリエの開発

2023.3.15

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概要:

コンピュータに味覚や嗅覚を理解させるにはどうしたら良いでしょうか?
匂い物質の分子情報からハンセンの溶解度パラメータ(HSP)を取り出し、SOM(自己組織化ニューラルネットワーク法)を使ってパターン化します。
ワインの香りは、どんな花の香りとパターンが似ているのでしょうか?
pirika.comのプロモーションビデオになります。

対応するブログ:

Tech-Potでワイン講座のイベント
ハンセンの溶解度パラメータ(HSP)を使った、AI-SOMリエの開発

初めに:

Tech Potというのは、かながわサイエンスパーク(KSP)の中にある、レンタルオフィスです。pirika.comは2022年10月からTech-Pot +iで活動をしています。
このTech-Potでは入居者向けのイベントが数多く催されています。
そのうちの一つに、ワイン講習会がありました。
Tech-Potの高橋さんはソムリエの資格を持っていて講習会をやってくださいました。
その後に、新規入居者のpirika.comはPRをする時間をもらえましたのでプロモーションビデオを作りました。

ワイン講習会なので、それにちなんでAIに嗅覚を教え込んで、ワインの香りを識別するように育成するにはどうしたらいいかを解説するビデオを作ることにしました。
アバターは、高橋さんをイメージしたキャラクターです。

AIに香りの違いを教えるには?

コンピュータに何かを教えるには、数値化しなくてはなりません。コンピュータが理解できるのは数字だけです。そこで、香物質を数値化する必要があります。
香物質とかいうと難しく思うでしょう。
例えば、お酢の匂いは、酢酸(CH3COOH)という香物質です。
こうしたCH3COOHという記号は高校では習うかもしれませんが、そんな物は覚えていても、普通何の役にも立ちません。化学で食べて行こうと思わないなら、忘れましょう。
大事なのは、空中を漂っている香物質が鼻の粘膜に溶け込んでくると、”こんなふうなの匂いを感じているよ”という信号を脳に送るということです。カレーの匂いでも何でもOKです。
香物質によって粘膜への溶け込み方が変わるので、色々な信号が脳に届きます。
哺乳類だとだいたい1000種類ぐらいの匂いを嗅ぎ分けられると言われています。

1000種類の嗅細胞があるのではなく、光の三原色のように、例えば3種類の信号の強弱で区別しているだけと考えられています。
つまり3種類の嗅細胞への”刺激の違い”を数値化できれば香りを区別することができるようになります。

溶解度パラメータ(Solubility Parameters)

香物質を数値化するには色々なやり方があります。例えば分子の大きさだとか、棒状の物質なのか球状の物質なのかとか。少し計算機化学に詳しければ、電子の状態だとかも数値で出すことができます。

ここでは、鼻の粘膜への溶解性の違いを表す数値としてハンセンの溶解度パラメータという数値を使ってみます。

詳しいことはこちらのページ(香りとハンセン溶解度パラメータ(HSP))を読んでいただくとして、香物質にまるッと、香物質ごとに3つの数字を割り振ることができます。

例えば、お酢は赤い三角が大きくて、酸っぱく感じるとか、都市ガスの硫黄の匂いは緑が大きいとか、分子特有のHSPを得ることができます。3つの大きさを嗅上皮にあるセンサーで測ってその信号を脳に送っていると考えます。

問題なのは、人間の脳が感じる臭いというのは、色々な香物質が混じったものを嗅いで、混じった情報が脳に届いているということです。

ワインのソムリエや、香水の調香師は、鼻の中で、香物質を嗅ぎ分けているのかもしれません。でも残念ながら、分析装置はそこまで高度なことはできません。
そこで、人工知能にソムリエ的なことをやらせるのはとても難しいことです。
まー、私の脳はアルコール以外はあまり重視していないので。。。

いろいろなの香物質の混合物

例えば、カレーの匂いという香物質はありません。
色々なスパイスの混合物を嗅いだときに、それをカレーと脳は認識します。
1つのスパイス成分が入っていなくても、まるッとこれはカレーというように感じます。
あるワインが酸っぱめが強いとか、フルーティーな香が多いとか、細かい差はあっても、脳がざっくりワインと認識するのは、脳が香りのパターン認識をしているからといえます。
でも、桃のワインとか、イチゴのワインとか、私の脳はいい加減ななので、まるッとしか認識しないかもしれませんが、ワインのソムリエの脳は厳密に区別します。

香物質の分類。

そこで、香物質が3つの数字を持つ(イメージ的には丸、三角、星型)というのを認めた上で、これは酸っぱい匂い、甘ったるい匂い、清涼感ある匂いというように香りを分類できるととても便利になります。
香りを(ハンセンの溶解度パラメータという)数字に落とし込めれば、それは比較的簡単な作業になります。
古典的なデータ・サイエンスの方法でSOM(自己組織化ニューラル・ネットワーク)法というの使うと、ポチするだけで後はやってくれます。
そうすると、似たような香(丸、三角、星型のバランス)物質は似たような2次元的な位置にマッピングされます。

うん。意味不明の文章ですね。

言い換えましょう。○が大きい部族は地図上の北東に多く住んでいます。△が大きい部族は地図上の赤道西に多く住んでいます。⭐︎部族は南真ん中に多いです。
交流はあるので、中間地点では○△両方大きめも居ます。
そんな地図をデータサイティストさんに描いてもらいます。

香りの(SOM)地図

地図上の同じような位置にある香物質は、嗅覚細胞への溶け方が似ていて、同じような匂いであると脳に信号を送るとしましょう。(これもある意味仮定の話です。)
香物質の周りに色が付いています。この色は花を表してあります。
例えば、濃いピンクの香物質は、ラベンダーという花に含まれる香物質です。
ラベンダーの花の香りは、単一の香物質ではなく、複数の香物質の集合体としての匂いです。
地図の上の色々な部族のメンバーが部隊を結成しているのです。その部隊編成は同じ色のところを囲むと見えてきます。

水色の部分だけを囲むと、バラ部隊の編成が見えてきます。

集合体として香りのパターン構成

どんな花がどんな香成分を含んでいるかを、正確に言い当てる事は、香水の調香師でもない限り難しいでしょう。
でも、逆に匂いを嗅いだ時に、これはあの時のこういう香と認識するすることは比較的可能です。

金木犀(orange-colored olive)はとても良い香りですが、トイレの芳香剤に使われるようになり、金木犀=トイレというパターン認識が進み、アンケートでは悪いイメージを持つ人が多くなり使われなくなりました。

ワインの香り

それでは、ワインに戻りましょう。
コンピュータに香りをパターン認識させる準備は整いました。
それでは、ワインに含まれる香り物質です。


***


LOOPボタンを押して構造を見ても99%の人は面白くも何ともありませんよね。
単に読み物だけだと飽きてくるので刺激を入れただけです。

大事なのは、この代表的なワインの香り物質たちも、先ほどの地図の中で所属する部族のパターンがあるという事です。

先ほどの地図にプロットしてみると、ワインのパターンはバラのパターンにとても近いことがわかります。

後は、さまざまなワインの違いのパターンをAIに教育していくと、ワインの違いを正しく認識していくAIに育っていきます。

ワインの味

味であっても同じです。
ワインは育った土地によって味の成分も変わります。
そうした研究をテロワール研究というそうです。

このように、香りをガスクロマトグラフィー、味を液体クロマトグラフィーで分析した結果をAIに教える。そうすればAI-SOMりえを作ることができます。

でも、僕は、遊びではそんなAIを作ったりもするけど、それをネタに高橋さんとお話しする方がよっぽど楽しいと思っています。

こうした技術を使って香りセンサーを開発してインクジェット技術を使って「スタジオの香りを家庭に送るには?」なんていう授業は毎年ネタに使っています。
まー機会があったらTech-Potサイエンスカフェで話しても良いかもしれませんね。

人工知能ってどう学習するんだ?って年配の研究者に聞かれたら? part2


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