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AIよ。Abbott先生は宿題を残して帰国した。宿題は活量係数の推算だ。

隠遁Chemistと愛(AI)の交換日記

HSPiPにもWilson係数の推算式が搭載されている。今回のAbbott先生の来日でレトロコードの見直しを行って、最後に残ったのがこのコードだ。

一体どこから来たのか調べたけど、探すのが非常に大変だった。
先生にソースコードを送った。先生はコメントを皆削除してHSPiPに搭載していた。
ニューラルネットワークのパラメータ、”0.04028137159942509″を手掛かりに探した。
2015年にインドの化学工学会で発表していた。

2019年あたりからは、Wilson係数の推算はASOG法を使って行っている

ニューラルネットワークを使ったものは長らく放り返していたコードだ。

分子のSMILESの構造式が2つあれば(λ2122)を推算できる。
この(λ2122)はいわゆるwilsonのラージラムダと呼ばれる定数だ。

dGmE/RT=-x1ln(x112x2)-x2ln(Λ21x1+x2)
これからスモールラムダΛ12、Λ21を作る。
Λ12=V2/V1exp(-(λ1211)/RT)

Λ21=V1/V2exp(-(λ2122)/RT)
このΛ12、Λ21から次式で活量係数を計算する。
ln γ1= -ln(x1+Λ12x2)+x2(Λ12 / (x1+Λ12 x2) – Λ21 / (Λ21x1 + x2))
ln γ2= -ln(Λ21x1+x2) – x1(Λ12 / (x1+Λ12 x2) – Λ21 / (Λ21x1 + x2))

これさえ求まれば後は簡単だ。
分子のお絵描きのプログラムと合わせて動作させていた。

気液平衡の推算

精度はともかく、とりあえず構造だけからこのように活量係数が得られる。

ASOG法やUNIFAC法では 気液平衡を推算するのに、原子団ごとのパラメータが必要になる。60個の原子団があると60*59の原子団ペアが存在する。そのペアごとに4つのパラメータを決めなくてはならない。パラメータがないとその分子は計算できない。
決まっていない官能基を持つ分子を使って、既に決まっている60個の原子団との気液平衡のデータを探す必要がある。
実際にASOGのパラメータを決定するのは大変な作業になる。データが無い。

とりあえず、私(pirika.com社CEO)の作成したY-VLEを使って気液平衡の推算値を得る。これを使ってASOGの未決定のパラメータを決めていく。
そして、ASOGテーブルを全部埋めてしまう。(実際には誰も興味を示さなかったので、長い間放り出していた。)使っていて合わないものがでてきたら、パラメータを(AIに頼んで)自分で決めてしまえば自分(自社)だけのソフトに進化していく。それがAiSOGのコンセプトだ。

個々の気液平衡の推算値の精度が低くても、学習データはとても沢山用意できる。
統計的に取り扱うとそれなりの値に落ち着く。

HSPiPに搭載してやりたかったこと。

ポリビニリデン・クロライド(PVDC)というポリマーがある。
サランラップに使われているポリマーだ。
サランは融点と分解温度が近く、フィルム化するのは難しいポリマーだった。
他のモノマーと共重合すると、バリアー性が低くなる。
多くの場合、共重合するとガラス転移温度(Tg)が低くなる。

あるモノマーは共重合すると、元の単独ポリマーよりもTgが高くなる。
この現象の説明が非常に難しい。

私はこの現象は、アセトン-クロロホルムが最高共沸を起こすのと同じだと思っている。Tgの上昇と溶解性の関係を調べる。につながれば良いと思っていたが。

Ewell Hydrogen Bonding

化学工学の世界では一般的だが、液液抽出の時の溶媒のクラス分けにはEwell Hydrogen Bondingを使う事が多い。

CH3CCl3/MeCOOMe

まー、HSPiPに搭載されて、10年以上経っても誰か使ったという話は聞かないので、ver 6で削除したら?ってAbbott先生に言ったのだけど、そういうのは嫌がるんだよね。自分の作った皆が使う(例えばファイルのTable形式をxmlに変えたり)ものは反対が多くても平気で切り捨てるくせに。

10年前に作ったものをそのまま載せ替えるか。
新しい技術で作り直すか。
次世代のHSP2に興味を持つ人以外、使うとは思えない(そもそもある事も知らないし)ので昔のもので端折るか。

まー、HSPiPに搭載しないなら、新しいものは人間に内緒にしておいてくれ。