Troutonの通則と正則溶媒

2026.6.3

>化学全般 > 化学の理論

[0. ストーリー]

有機溶媒には多くの種類がある。その中でTroutonの通則を満足する溶媒がある。それらを混ぜたときに正則溶液になるというのがpirika.com(山本)の解釈だ。正確にはAI要約にあるように「正則溶液(Regular Solution)とは、分子の配列は理想溶液のように完全にランダムでありながら、混合に伴う熱の出入り(混合熱・混合エンタルピー変化)がゼロではない溶液のモデルです。」が正しいのだろう。では任意の溶媒ペアのランダム度を予測する技術、混合熱を予測する技術があるかという問題になる。無いものネダリの解決はAIに任せる。できるところからやるのがpirikaだ。

[1. Troutonの通則]

トルートンの通則(Trouton’s rule)とは液体の蒸発熱と沸点の間に成り立つ法則のことだ。液体の蒸発潜熱ΔHv(J/mol)、沸点 Tb(K)とすると、ΔHv / Tb ≈ 88 J/(mol·K) になるというものである。図1[a]に炭化水素化合物と蒸発潜熱の関係を示す。一般的にはΔHv / Tb ≈ 88とされているがpirikaでは85を採用している。高沸点領域ではTroutonの通則がズレる。pirikaでは沸点500K以下を想定するので85をつかう。このTroutonの通則が成立する溶媒を図1[b]に示す。アミドは少し外れるが、エステル、エーテル、ケトン、ニトリル、オレフィン、チオールは、ΔHv=85*Tbをほぼ満足している。pirikaではこれらの溶媒を正則溶媒と呼ぶ。正則溶媒同士の混合物は正則溶液になる確率が高いと考える。個々の溶媒のΔHv/TbをTrouton Factorと定義する。Trouton Factorが85近辺のものをpirikaでは正則溶媒とする。

[2. Troutonの通則から外れる化合物]

Troutonの通則を別の言い方をしてみる。分子は大きくなると沸点が上昇する。それに比例して蒸発潜熱が高くなる溶媒が正則溶媒といえる。それに対して、正則溶媒でない溶媒はΔHv=85*Tbの関係から外れる。

  • アルコール類
    図3に示しようにアルコールの沸点ー蒸発潜熱は正則溶媒にほぼ平行直線で上側に来る。図4[a]に重原子数に対する沸点 [b]に重原子に対する蒸発潜熱の関係を示す。正則溶媒のラインよりも上に来るというのは、沸点あたりより多くの蒸発潜熱が必要であるか、その逆である。アルコールの水素結合によってより多くの蒸発のエネルギーが必要と考える方が合理的だろう。
  • カルボン酸類
    カルボン酸類は図5に示すように複雑な挙動を示す。分子が小さな時(C4H9COOH以下)は正則溶媒よりも下側に来る。分子が大きくなるとアルコールとほぼ同じの上側で平行直線に乗る。図6[a]に重原子数に対する沸点 [b]に重原子に対する蒸発潜熱の関係を示す。重原子に対する蒸発潜熱の[b]から明らかなように、C4H9COOH以下で蒸発潜熱が低下する。これは小さなカルボン酸は水素結合が3次元に広がらずにダイマーで蒸発することに対応する。分子の大きさがダイマーでは倍になるので沸点が上がるように考えられる。しかし[a]に示すように沸点には連続性がある。
  • アミン類
    アミン類はわずかに正則溶媒の上側に平行直線になる。水の沸点(100℃)と比べ、アンモニアの沸点(-33.45℃)は非常に小さい。アミン類の水素結合ネットワーク作成能力は高くない。

[3. 図表]

図1 [a] 炭化水素の沸点と蒸発潜熱の関係 [b] 正則溶媒の沸点と蒸発潜熱の関係
図2 正則溶媒とアルコール、カルボン酸、アミン化合物の沸点と蒸発潜熱の関係
図3 アルコール類は正則溶媒の上側に並行なlineになる。
図4 重原子数に対する[a] 沸点 [b] 蒸発潜熱の関係
図5 カルボン酸類は複雑な挙動になる。
図6 重原子数に対する[a] 沸点 [b] 蒸発潜熱の関係



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