
マランゴニ数(Ma:Marangoni Number)は、コーティングに対して自発的に生成する表面張力によって駆動される対流の傾向を捉える指標だ。
極端なケースでは完璧な6角形(ベナードセル)の紋様をコーティングに生成し、一般的に言って(特にインクジェットでの)印刷/プリント層を台無しにしてしまう。
Ma=δσ/δTLΔT/(μ.α)
これが何を意味するかというと、表面張力の温度変化率(δσ/δT)が大きくなれば、表面張力の変化によって駆動される対流も大きくなる。
もちろん、コーティング/プリント層から表面までの温度変化(ΔT)が大きくなっても、対流は大きくなる。
コーティング層が厚い (L)と結果はより悪くなる。
2013年頃は海外の研究者からよく質問があった。
日本のHSPiPユーザーにはWebアプリを提供していたのだけど、12年間一人も問い合わせはなかった。さすがにもう対応できない。
表面張力の理解のためにで説明しているが表面張力は温度依存性がとても大きい。

化合物の種類の違いは 1-Tref/臨界温度に変換すると吸収される。
つまり、水は25℃での表面張力が高い。それは25℃が臨界温度から離れているからだ。フロンは25℃での表面張力が低い。それは25℃が臨界温度に近いからだ。
これを勘違いしている研究者は多い。
マランゴニ数も表面張力駆動の対流であるので、温度依存性がある。
しかも表面張力と同じで、1-Tr(1-Tref/臨界温度)で解釈すると良い。

ここでの、臨界温度はY-MBの推算値を使っている。ある化合物、例えばSi系の化合物で大きくハズレる。(臨界温度の推算値が悪いのか、それ以外が効いているのかはわからない。それを解明したら論文がかけるだろう)

マランゴニ数というのは、この式で計算される。
つまり、表面張力、粘度、密度、熱伝導率、熱容量の5つの物性値の温度依存性で計算できる。各物性値も独自の温度依存性があるのに、トータルとしては1-Trで済んでしまうのはとても面白い。

HSP-MIRAI法を使ってマランゴニ数をHSP成分に分割する。
1-Trが大きく外れるものは、やはり大きくハズレてしまうが、成分分割ができる。

次世代のHSP2ではdDをdDvdwとdDfgに分割する。
マランゴニ数に一番大きな影響を与えているのは、dDvdwであることがわかる。
これまで、表面張力やマランゴニ数は極性の高い溶媒が注目されてしまう。すると、dP(分極項)やdH(水素結合項)が大事に思えてしまう。
しかし、dPやdHが大きいと、臨界温度が高くなる。(1-Tref/Tc)が大きくなる。するとマランゴニ数は小さくなる。
その温度の効果を差し引くと、大事なのはdDvdw(分散項の分子の大きさ分)となる。
また、大事なのはdDvdw(分散項の分子の大きさ分)といった時に、普通の研究者はもう一つ誤解する。dDvdwは分子が小さいほど値が大きくなる。

小さい分子ほどマランゴニ数に一番大きな影響を与えることになる。
dDfgは官能基をたくさん持った大きな分子ほど大きくなる。こちらはdDvdwの半分ほどの係数である。そこで小さく、dDfgの大きな水が一番大きく関与する。
水以外の溶媒で解釈するなら、温度や分子の形状、臨界温度、臨界圧力など複雑であるので、式で評価するべきだろう。
この記事に対するコメントがつくのは何時のことだろう。また、12年後かな?