バッタもんの「ハンセンの溶解度パラメータ計算方法」

講習会で、「ハンセンの溶解度パラメータ計算方法」を教えているものがあるようだ。
そんなものがあるなら、是非とも教えて欲しいものだ。

参加者にテキストを見せてもらったところ、Van Krevelen(テキストではKreverenと誤記)とHoftyzerの凝集エネルギーの原子団テーブルを示して、これからハンセンの溶解度パラメータを計算する(と説明している)。

これは、Van KrevelenとHoftyzerの凝集エネルギーだ。
凝集エネルギーを体積で割ってルートを取ると溶解度パラメータになるが、それはあくまでも、Van KrevelenとHoftyzerの溶解度パラメータであってハンセンの溶解度パラメータではない。彼らのものは3次元の溶解度パラメータであるが、ハンセンのものとは別物だ。

原子団からハンセンの溶解度パラメータを計算する方法は、私が開発しているY-MB法が唯一だ。
そして、そのパラメータはテーブルにできるような代物では無いので公開していない。
HSPiPを購入すれば使える。

そこで、原子団寄与法で「ハンセンの溶解度パラメータ計算方法」を教えてくれる講習会があったら、それは皆、バッタもんだ。

このY-MBというのはYamamoto-Molecular Break法というのもので、私の作った分子の分割アルゴリズムのことだ。計算の用途に合わせて原子団の組みを自動的に作り出す。自分が名付けたのでは無く、先生が名付けたものだ。

ハンセン先生もハンセン溶解度パラメータというのは自分が名付けたのではなく先生(Beerbower先生)が名づけたものだとおっしゃっていたっけ。

溶解度パラメータというのは、実は2つの系統がある。
凝集エネルギー密度(CED: Cohesive Energy Density)のルートは、Fedors, Small, Van Krevelenなどのポリマー屋の方から見た溶解度パラメータだ。

体積あたりの蒸発潜熱のルートは, Hildebrand, Hansenなどで、低分子の溶媒からみたものだ。

私は元々はポリマーの合成屋だった。
その後は代替フロンのコンピュータでの設計など低分子をやったので、どちらの方法も馴染み深い。

長い間、ハンセンの溶解度パラメータには、ポリマーの溶解度パラメータを予測する機能は無かった。

ハンセンの溶解度パラメータは、HSPが既知の溶媒を使って溶解試験をすることによって溶質のHSPを決めている。いわゆる挟み撃ち法だ。

良溶媒、貧溶媒は実験をしている人の定義による。
そこで、溶媒に50g/100g溶解しないと良溶媒と呼ばない研究者と、0.1gでも良溶媒なのとでは結果が変わるので、ポリマーの構造が決まったからといってHSPがいくつとは予測できない。

逆に良い面もある。
光学異性体のように原子団にしてしまえば同じものが、溶解試験で異なれば異なったHSPが定義できる。
構造が確定しない活性炭の違いを溶解試験の結果で決める事ができる。

しかし、構造が明らかな(繰り返しのユニットセルが明らかな)ものの予測値が得られないのは不便なので、Y-PB(Yamamoto Polymer Break)をver.5.2から搭載してある。

まー、これも、原子団のテーブルで与えられているわけでは無いので、「ポリマーのハンセン溶解度パラメータの計算方法」という講習会があったら、それもバッタもんだ。

先週、いわゆる講習会企画屋から、HSPの講習会をやってくれないかという問い合わせが来たが、即断った。

無責任な、いい加減な講習は、開発者としては行えないし、学生とやっているpirika研究会も忙しいし。
でも、悪貨は良貨を駆逐するのだろうな。
そんな講習会が大盛況なようだ。

せめて、HSPiPのソフト上でユーザーが困らないように機能を提供していこう。


Van Krevelenだけでなく、Fedors法、Hoy法での計算までHSPiPには搭載されている。(Fedors法はver.5.4.から)
Stefanis-Panayiotou法も搭載されている。
講習会で習う必要はない。

ポリマーは繰り返し単位をXで囲んだ、ポリマーSMILESで計算する。

このXは実は色々な事に利用できる。マニュアルには書いていない裏技だ。
pirikaの研究会で学んでいる学生にはきっちり教えていこう。

現在作成している、ver.6 用のY-PBはかなり改良されたので、乞うご期待だ。