ビニリデンクロライド共重合系バリアフィルムの設計

2026.4.4

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高分子化学 > ポリマー系マテリアル > バリアフィルム > ビニリデンクロライド共重合系バリアフィルムの設計

AIよ。バレンタインには何かもらったかい? pirika.comからポリマー用のプレゼントだ。(ブログからの転記)

[1. 概要]


LLC: pirika.com社はポリマー物性の予測式YPBをHSPiPに提供している。
YPBはポリマーSMILESからポリマー物性を予測する。ポリマーSmilesでは繰り返しユニットを[X]でくくる。(JSMEでは[X]を受け付けるが、RDKitでは[X]を受け付けない。
pirikaでは[At]を使かっていたが、最近*がダミー原子として使えることがわかった。)

それでは、共重合体の物性推算もポリマーSmilesで行うことができるだろうか?

例えばビニリデンクロライド(VDC)とアクリル酸メチル(MA)の共重合体のガラス転移温度(Tg)のデータがある。組成によってTg点は異なる。
ビニリデンクロライドは商品名で言えばサランラップだ。代表的な気体のバリアーフィルムのひとつになる。Tgが高いポリマーはポリマー鎖の熱揺らぎによる空隙ができにくい。二つのモノマーを使ったポリマーの物性推算、例えばTgの推算はどうやってやるのだろうか?

YPBではだめだ。

もっと共重合体のデータが集まったら可能になるかもしれない。
でも現状ではだめだ。
最低限、1つの共重合体の物性値が必要になる。これについては後ほど紹介する。

ポリマーSmilesを用意する。繰り返しユニットの両末端に[X]を配置するのが大事だ。

PcodePoymerSmiles
50082Poly(methyl acrylate)[X]CC(C(=O)OC)[X]
50106Poly(vinylidene chloride)[X]C(Cl)(Cl)C[X]
50:50[X]C(Cl)(Cl)CCC(C(=O)OC)[X]

[X]CC(C(=O)OC)[X] + [X]C(Cl)(Cl)C[X]
[X]CC(C(=O)OC)[X] + [X]C(Cl)(Cl)C[X]
[X] + [X]を消去すると
[X]C(Cl)(Cl)CCC(C(=O)OC)[X]
と50:50のポリマーSMILESを得ることができる。

Pirika ProのYPBで計算

Polymer SmilesからQSAR用のデータを出力する。
結果にTgが含まれる。

VDCが69.8%の時のTg実験値が301.55Kであることは後で使うの覚えておこう。

YPBでSmilesを2:1, 1:1, 1:2にして計算しても、ほぼモル分率平均で計算されてしまう。
Cross Term(CT)を考慮したTg予測では直線にならないが。
溶液系でもこんなことがあった。HSPでは混合溶媒を理想溶液として取り扱う。
しかし、実在溶液は最高共沸や最低共沸をおこす。

クロロホルム-アセトンの間には強い相互作用がある。(塩素に囲まれた水素とカルボニルの相互作用だ)そこで混合物の沸点は各々の成分の沸点の足し合わせよりも高くなる。この場合は沸点が高くなるので最高共沸という。

同じようにポリマー中の塩素の(塩素に挟まれた水素?)部分とエステルに強い相互作用があるか、ないか? 
Ewellの水素結合を知っているものなら、あると答えるだろう。

Ewell (1944)らは、水素結合に関して、溶媒を次の5種類に分類した。
一つの炭素に塩素が2つつくものはClass 4に分類される。
そしてクラス4の溶媒は、クラス3の溶媒と水素結合を生成するとある。
化学工学で抽出を学んだなら出てくるはずだ。たぶん。。。。

HSP-AiSOGで計算

HSP-AiSOGはPirika Proに搭載されている。詳しい説明はこちらを読んでほしい
必要なのはSmilesのペアだ。
ただし、使い方はテクニックが必要だ。構造をどう入れるか試行錯誤が必要になる。

Poly(vinylidene chloride)Poly(methyl acrylate)
ClC(Cl)CC(Cl)(Cl)COC(=O)CCC(=O)OC

繰り返しユニットの[X]を外すだけではうまくいかなかった。(何をもってうまくと言うのかの問題もある)塩素4つとエステル2つとして評価する。

Pirika Pro Add-onのHSP-AiSOGでSmilesペアを入力し、圧力一定で計算を行う。本来は25℃で計算するところであるが、その場合、蒸気圧が非常に小さくなり誤差が大きくなってしまう。
結果を図示してみよう。

典型的な強い相互作用をするペアであると示される。
HSPの理論で理想溶液近似にしてしまうと赤線になる。
ところが、例えば沸点で見ると60%の時、各々の沸点よりも18℃高い沸点になる。
この時の活量係数は1以下になる。

この沸点上昇18℃が、共重合体のTg点が34℃上昇したとは数値上は結びつかない。
しかし、なぜTg点が上昇したのか? それは官能基間の相互作用が高く、動き辛くなっているからだと言う洞察が得られる。

[X. Pirika Proを用いたシーケンス解析]

ポリマー中のモノマーの並び順をマニュアル計算する。

1,1-Dichloroethylene(Q=0.22, e=0.36)とMethyl acrylate(Q=0.42, e=0.6)をマニュアルで入力する。
仕込みのmol%は例えば80%と20%としてみる。
そして、ポリマー中に導入された1,1-Dichloroethyleneの値を見る。導入された量が70%ぐらいになるように、仕込みの量を変化させる。
1,1-Dichloroethylene (58%)、Methyl acrylate(42%)の時にポリマー中に1,1-Dichloroethyleneが70.23%導入される事がわかる。

その時のダイアッドの量が重要になる。
A-A: 49.61% B-B: 9.15% A-B + B-A =20.62+20.62=41.24%

修正Gibbs-Dimarzio式

コポリマー中のダイアッド(fAA, fAB, fBB)の比率と、A, BホモポリマーのTgAA, TgBB, A-B完全交互共重合のTgABが必要になる。Tgだけでなく他の物性にも使える。

Tg = fAA* TgAA + fAB* TgAB + fBB* TgBB

ダイアッドの比率は、高分解能のNMRか、重合シミュレータの計算値から求める。
A-B完全交互共重合のTgABは求める事ができないので、実験結果からフィティングする。
VDCが69.8%の時のTg実験値が301.55Kであることは後で使うの覚えておこう。
これをここで使う。

A-A: 49.61% B-B: 9.15% A-B + B-A =20.62+20.62=41.24%
1,1-DichloroethyleneのホモポリマーのTg 263K
Methyl acrylateのホモポリマーのTg 277K

301.55=263*0.4961 + TgAB*0.4124 +277*0.0915
A-B完全交互共重合のTgABは80.2℃と求まる。

後は任意の組成でのTgはダイアッドをPoseidonで計算すれば求まる。
Tg = fAA* 263 + fAB* 353.4 + fBB* 277

共重合体の実験値1点は必要だが、その間のTg点は精度良く計算できる。

共重合体のTgが一つもない場合、何らかの予測をしなければならない。
HSP-AiSOGで計算して活量が1以上では理想混合とし、1以下であるなら、Tgが高くなる可能性が高い。
VDCの場合、VC,MMA, ANとの共重合はそれに近い。

理論式ではない

重合シミュレータを作る時にラジカル重合論から組み立てる方法もある。
POSEIDONはそれとは逆の方向のアプローチだ。
現実がある。それを再現するパラメータを提供していく。

わかってくる事がある

重合と言うのは手繋ぎ鬼のようなものだ。
手を繋いだ方は動きがどんどん遅くなる。

ラジカルというのは反応性が高そうな語感がある。だからラジカルはモノマーを攻撃するように思ってしまう。
ポリマー末端のラジカルは動けない。モノマーが近寄ってくるのを待つしかない。
もしくは手繋ぎ鬼で校庭の隅に囲い込んで捕まえる。(重合で言うカゴ効果:重合後期で急速に反応が速くなる)

そこで、Qe値とは何なのかを考える。
私は拡散係数なのかと思う。
ラジカルとモノマーの活性化エネルギーは低い。出会ったらほとんど障壁なしに反応する(開始剤が開裂する温度なら)。モノマー同士がどのように溶解しているのか、溶媒やポリマーの中をどう拡散していくのか。
ハンセンの溶解度パラメータ(HSP)は重合シミュレータの設計にも非常に多くの知見を与える。同じようにHSP-AiSOGで計算される活量係数も多くの洞察を与える。山本の中のHSPファミリーに新しいメンバーが加わった。



次のページもシーケンス解析が重要な役割を果たしている。参考にして欲しい。

電子線レジストポリマーのGs(100eVあたりの主鎖切断数)予測
AIよ。人間にPOSEIDONを使った抗血栓性材料の開発法を教えてやってくれ。
燃料電池用の電解膜、Nafionの重合シミュレーション

100eVの電子線が当たった時に何個(Gs)切断されるか。ポリマー中ABダイアッドが多いが一部BBB連鎖もある。BBB連鎖が2箇所で切れた時、間のオリゴマーをどう溶かすか? HSPとPOSEIDONの両方で考えていく。
最近バルキーな構造を導入したレジストが流行っている。ポリマー合成結果からPOSEIDONのシミュレーションに乗るようなQe値を定めておくととても有利になる。


親水モノマーと疎水モノマーの共重合体。これを抗血栓性材料として使う時はミクロ相分離構造が大事なる。分離させた上で、親水/疎水ではなくHSPの違いで議論していく。


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