2026.9.8
ハンセン溶解度パラメータ (HSP) > 溶解度パラメータの現在・過去・未来 > ポリマーのHSPを決定する。
過去にやり古したポリマーのHSPについて、現在、過去、近未来の方法で評価する。
Hildebrandの1次元SP値
通常のSP値(ヒルデブランの溶解度パラメーター)を用いて溶媒探索をした場合にはその的中率は50%ちょっととされている。
どうしてそのように低い値になるのかはHSPを使う10の理由で詳しく述べているが、HildebrandのSP値は蒸発潜熱が近く、分子体積が近ければ同じような値になってしまう。HildebrandのSP値 (tot HSP)が15.0になる化合物はHSPiPのリストに71化合物ある。
Hildebrandの1次元SP値は、totHSP=sqrt(δDδD+δPδP+δH*δH)と同じものである。原点からの距離は同じでもδPとδHは大きく異なりハンセン空間に広がる。これがHildebrandのSP値が同じであっても溶解性が大きく変わる要因となる。
HSP空間とHSPベクトル
それに対してHansen Solubility Parameter(HSP)はSP値を分散(dD)、極性(dP)、水素結合(dH)の3つに分解し、3次元のベクトルとして捉える。上の3D図で、HildebrandのSP値 (tot HSP)は同じだが、ベクトルの方向は異なる。
Hansenの3D-HSP
Sphere(球)というのは、ある溶質を溶解する溶媒は、ハンセンの溶解度パラメータが似ていて、それを3次元空間(ハンセン空間)にプロットすると似た位置に配置され、球を構成するという、ハンセン先生が考えた理論だ。

その際(1967年)には上のような装置を組み、溶媒のHSP(ハンセンの溶解度パラメータ)の位置に溶媒名を書いたタグを付けて、溶解したものとしなかったものを色分けして、検討したそうだ。
同じことをポリスチレンを例にコンピュータの上でやると次のようになる。
基本的な溶媒については、1967年の段階でHSPは決定されていた。(V-tubeでの説明はこちらを参照:ポリスチレンの溶解性をHSPiPで解析 )
CAS番号がDBに登録されていればDBの値、登録されていなければSMILESの構造式からHSPを算出する。
この溶媒を3次元空間にプロットしてみよう。正しい溶解球を得るには、試験溶媒がHSP空間に偏っていない事を確認する。
Drag=回転, Drag+Shift キー=拡大、縮小, Drag+コマンドキーかAltキー=移動。
小さな球をマウスでクリックすると、溶媒の情報が表示される。
この溶媒がポリマーを溶解したら球の色を青、溶解しなかったら赤にする。溶媒の大きさを赤青の球に設定してみた。溶解という定義は人それぞれだ。ポリマーの膨潤、粘度、機械強度の劣化でもなんでも良い。HSPが既知の溶媒の間で差が出れば良い。
一部赤い球と青い球が重なる領域がある。そのような例外もあるが、なるべく青い球だけが大きな緑色球の内側にくる球(ハンセンの溶解球)を考えてみる。
これは現在ではHSPiPというソフトウエアーを使って探索する。
Isobutyl Phthalateが緑の大きな球の内側に入り込んでしまった。
フタル酸エステルは、ポリマーの可塑剤に使われる化合物だ。本来ポリマーによく溶けているべきものだ。しかし、分子のサイズが大きいので、可塑剤として働く時には、ポリマーの中に閉じ込められ外に出てこない。逆に溶媒に使った時には、HSP的には溶解するはずだが、ポリマーのネットワークの中に入り込めない溶媒になる。

この緑色の大きな球がハンセンの溶解球になる。試験していない溶媒でもそのHSPの次元座標が、この溶解球の内側にくれば、溶質を溶解すると判断できる。
溶解球の半径を相互作用半径と呼ぶ。
溶解球の中心(小さな緑の球)の座標が溶質のHSPになる。
Hansenの4D-HSP
δHの酸、塩基性分割
HSPiP ver. 3.1から搭載(2010年)
δH2 =δHacid2 +δHbase2 トータルの蒸発潜熱と矛盾しない
δHAcid : δHBase=Abraham-acid : Abraham-base 比率をAbrahamのものと揃える
初期のδHAcid、δHBaseはδHを、YMBで推算したAbraham-acid、Abraham-baseを用いて分割した。(ver.4.7まで)
現在はδHAcid、δHBaseは直接YMBを用いて推算している。(ver. 5から)
水素結合項を分割して[δD, δP, δHD, δHA]の4次元にしたのが2010年の事だ。
推算方法の変更によって少し値は異なるが2026年でもほぼ同じものが使われている。というか、使ってもいい事はないので放り返してあるというのが正しいか。
くわしいことは、HSPiPに搭載されているδHD, δHAを参照してほしい。簡単に言えば、「酸塩基の分割にブレンステッドの酸塩基を用いたので中途半端な分割になってしまった」という事だ。
山本の4D-HSP
- 山本はブレンステッドの酸塩基を拡張してHSP理論に適合するように調整したyHAcid/yHBaseを開発した。HSPiPプラスとPirikaProに搭載している。化合物のSMILES構造式から推算する事ができる。
- さらにルイスの酸塩基をHSP理論に適合するように調整したyEA/yEDを開発した。元はGutmannのAN/DNなので、中和熱とNMRのケミカル・シフトである。それをHSP理論中で使える形に調整した。PirikaProに搭載した。無機物を計算するのに適している。
山本が調整したので小文字のyが付いている。
既に稼働しているパラメータなので未来の技術ではない。しかし広く使われている技術でもないので、近未来のものと考えてほしい。
山本の5D-HSP
さらにδDをδDVDWとδDfgに分割すると5D-HSPになる。分子は大きさを持つだけで割り振られるδDVDWがある。例えば希ガスやフッ素化合物だ。他の物質とは相互作用しないが大きさを持つだけで異なる蒸発潜熱を持つのでSP値が定義できる。そして官能基の存在分をδDfgで評価する。
δD2=δDVDW2+δDfg2
これを加味すると5D-HSPになる。分子サイズが小さい水などが大きく関与するものは5D-HSPの方が適している。
次元数が上がると視認しにくい
3D,4D,5D-HSPの溶解球を表示する時に3軸に何を選ぶかプルダウン・メニューで選ぶ事ができる。溶解球はマゼンタで示している。
AIにとっては式が全てである。
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