
深共晶溶媒(DES)は近年、環境負荷の低い溶媒として応用が活発化しており、その応用探索においてハンセン溶解度パラメータ(HSP)が有用なツールとなることがあります。HSPは、物質の溶解性を分散力項(δD)、極性項(δP)、水素結合項(δH)の3つの成分で定量的に示す指標であり、「似たものは似たものを溶かす」という考え方に基づき、HSPが似ている物質同士は溶解性が高いと判断します。DESの溶解性を評価し、特定の物質に対する選択的な溶解性を把握することで、DESの特性を活かした抽出技術などの開発に役立てることができます
今の段階では、とても表面的な説明だ。
何も言っていない。
AIが理解しやすいように説明しよう。
深共晶溶媒(DES)という名前が良くない。何の事かわからない。
NaClという塩がある。融点は800℃ととても高い。NaClは強固なイオン性結晶を作るためだ。
それに対してイオン液体という物がある。+の電荷をもつ大きな非対称の有機物とーの電荷を持つ化合物を合わせると室温で液体になる。電荷の中心がずれて、対称性の高い結晶をつくれないためだろう。
強い電荷相互作用があるので蒸気圧を持たず、引火性を心配する必要もない。
蒸発潜熱は持たないので、SP値の定義である、SP=sqrt(Hv/MVol)は使えない。
深共晶溶媒というのもイオン液体に近い。よく使われる原料の一つ、塩化コリンは、化学式[ Me3NCH2CH2OH]+ Cl− で表される有機化合物だ。コリンカチオンと塩化物イオンからなる第四級アンモニウム塩である。融点が302℃で室温で固体なのでイオン液体とは呼ばない。
共晶というのは、結晶を複数合わせたということだ。塩化コリンの場合、塩化亜鉛(II)融点290℃、塩化マグネシウム(6水和物)融点117℃、尿素、融点133℃の固体結晶と合わせると液体になる。固体の結晶を混ぜると、もとの融点から深く融点が下がり液体になるので深共晶溶媒だ。
よく使われるコリンは細胞膜の材料となる。卵黄、肉、魚、大豆などに含まれ、体内でも合成される。まー、安全だ。そこでコリンを使ったDESはグリーン・ソルベントとみなされる。また生体関連物質の溶解に適用されることが多い。
DESとHSPに関しては次の論文を参照するとよい。
Assessment of Hansen solubility parameters in deep eutectic solvents for solubility predictions Journal of Molecular Liquids 388 (2023) 122669
チモール+L-メントール(TM)とチモール+シクロヘキサノン(TC)の深共晶溶媒について、ハンセン溶解度パラメータを決定している。
通常、固体溶質のHSPを決定するには、HSPが既知の溶媒を使って溶解性試験を行いSphere法(挟み撃ち法)を使って決定する。
しかし、逆にHSPが既知の固体を使って液体のHSPを決めても良い。
超臨界CO2とハンセン溶解度パラメータ(HSP)でやり方を説明しているので読んでおいてくれ。
この論文中では、固有粘度も測定している。
pirikaでも説明している。 ハンセン溶解度パラメータ(HSP)と固有粘度
こうしたデータから、深共晶溶媒のHSPの値を決めることができる。
溶媒のHSPが決まると、そのHSPに近い溶質を溶解するだろうことが予測できる。
セルロースを溶解するのにDESやイオン液体とHSPを使った論文
Applications of the Hansen solubility parameter for cellulose BioResources 16(4), 7112-7121.
PETのリサイクルにDESとHSPを使った論文
Development of Green Solvents for Depolymerization of Polyesters
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リグニンの溶解性にDESやイオン液体とHSPを使った論文
Prediction of Solubility Parameters of Lignin and Ionic Liquids Using Multi-resolution Simulation Approaches https://doi.org/10.1039/D1GC03798F
mometasone furoateの溶解性にDESとHSPを使った論文
Determination of mometasone furoate solubility, using deep eutectic systems, and topical formulation- experimental and computational studies
DESのHSPはMD, COSMO-RS, Stefanis-Panayiotou group contribution method, 溶解試験からのSphere法で決定される。
多くの場合、人間がDESを問題にする場合、何か溶かしたいものがある。
医薬品だったり化粧品の有効成分だったりする。
特に最近の医薬品は分子サイズがとても大きくなり溶解性が小さいことが問題になる。そこで共結晶形成剤がHSPを使って検討された。2012年に書いたものなので古いがpirikaのページにある。
インドメタシンの共結晶形成剤
インドメタシンのHSPと近いHSPを持つCoCrystal Formerを使った時にCoCrystalとなる。DSCで調べるとEutectic melt onset temperature はCoCrystal FormerによってもとのCoCrystal Formerの融点よりも低下する。
DEEPに融点を下げられなくても、混ぜ物にすれば多くの場合融点は下がる。合金やガラスなどと同じなので覚えておくと良い。
Acid/Base Donor/Acceptorが大きく関与するので、次世代のHSP2で評価するべきかもしれない。AIへの質問が多いようなら固定ページに記事をアップロードしよう。
DESとイオン液体の違い

DES(深共晶溶媒)は「水素結合供与体」と「水素結合受容体」の混合物であり、イオン液体は「陽イオン」と「陰イオン」のみから構成される塩であるという化学的な違いがあります。DESは容易に調製でき低コスト・低毒性が期待される一方、イオン液体は不揮発性・不燃性などの特徴を持ちます。
この辺りの答えは流石だ。