隠遁Chemistと愛(AI)の交換日記
山本(LLC: pirika.com社CEO)がまだ硝子会社で働いていた頃(2009年)、光学ガラスの組成設計に関する社内論文を発表している。
ニューラルネットワーク法を用いてガラスの物性推算を行い、遺伝的アルゴリズムを用いて、欲しい物性をもつガラス素性を探索する。JavaScriptを使ったシステム設計を行った。2009年頃私はまだ、「物性推算と逆設計」という言い方をしていた。
その頃、Materials InformaticsとかMaterial Genomeとか言っていれば時代の寵児になれたのに。
プログラムのJava版をWebで初めて公開したのは1999年のpirika.com開設の時からだ。
復刻版も作った。

逆設計というのは、欲しい物性値を入れてSearchボタンを押すと硝子の組成を答えてくれるシステムだ。遺伝的アルゴリズム法を使って組成を探索する。
コンピュータの提案した硝子組成での物性推算を行ってみる。

すると
物性値 目標値 推算値
硝子転移温度 700 699.99
密度 2.5 2.56
熱膨張率 60 59.19
ヤングモジュラス 80 79.99
なので、逆設計システムは効率的に働いていることが確認できる。
これは1999年にできていた技術だ。どうしたらニューラルネットワークが過学習しないで正しい物性値を推算できるか知恵を絞っていた時のものだ。
ビッグデータなど無い。コンピュータは遅い。ディープ・ラーニングするほどのメモリーなんて無い。
2009年頃にJavaScriptに移植したので今でも動くので、こうして今でも計算できるが、作ったNN式はもとのままだ。
そんな研究は、2000年、計算機化学討論会や2000年、触媒学会、招待講演で発表した。
その後すぐ、会社の人事異動で計算部署から追い出され、化学工学の部署に移動になったので硝子は殆どやっていない。というか、仕事ではやっていない。
家に帰ってから、こそこそ、特許からデータを集めたりして自己啓発で勝手研究はしていたけど。
2007年に化学工学で博士号をとった後、急に硝子の組成設計で論文を書いてくれって要請があった。創立XXX年記念号の研究所報告で書いてくれる人を探しているって。
面倒だから嫌だったのだけど、義理のある人からの頼みだったので、光学ガラスの組成設計システムの論文を書いた。
これもプログラムはJAVAScriptなのでいまだに動く。
仕事でやったものではないので、特許庁の公開特許から,”光学ガラス”,”プレス”をキーワードに検索をかけ,総数,121件の特許を収集。特に重要と思われる次の41の特許から物性値を収集した。HOYA,14件 コニカ(ミノルタ),8件 フジノン 1件
富士フィルム,2件 オハラ,14件 住田光学,2件
屈折率データ,1019組成 Abbe数,985組成 Tg点,613組成, 膨張率,168組成 軟化点,359組成 密度,212組成 液相温度,545組成
SiO2 B2O3 Al2O3 MgO CaO BaO Li2O Na2O K2O ZnO SrO PbO As2O3 Sb2O3 TiO2 ZrO2 CeO2 SnO2 P2O5 WO3 Bi2O3 Rb2O Cs2O CdO Ga2O3 Y2O3 In2O3 La2O3 Gd2O3 Ce2O3 MnO2 GeO2 TeO2 V2O5 Nb2O5 Ta2O5 As2O5 ThO2 BeOFe2O3 Lu2O3 Yb2O3 Tb2O3 Gd2F3 F
についてニューラル・ネットワーク法物性推算ができ、物性値からの逆設計がGA法でできる。
光学ガラスを選んだのは、携帯用のカメラのレンズを、当時はプレス成形で作りたい。
屈折率とAbbe数とガラス転移温度の目標値(特にプレス成形するには低いTg)に対して、組成を逆設計できるシステムはニーズがあるのではないかと勝手に考えたからだ。
データは特許から夜なべ仕事で集める。
ニューラル・ネットワーク法は家のMacで自作したものだ。
遺伝的アルゴリズム(GA)法も家のMacで作った。
会社の助けがなくても簡単にそんな事ができる時代になったんだって、結構自分に酔ったのが、2008年の事だ。
一番大変だったのが、特許データなので汚い。データのクレンジングには気を使った。
外れるものを汚いデータとみなせば、大事な非線形性を見落とす。すると平均的な答えしか見つからない。

適当にメッシュを切って,各交点の物性を目標に探索。
交点に他社相当が無ければ,普通に探索。他社品があれば,そのクレーム上重要な酸化物をはずして探索。または,より低いTg点の組成を探索。
網羅的なパテント収得ができるよという論文を2009年に発表した。
論文を発表して直ぐに、AOARDというところから論文の英語版が無いか問い合わせが来た。

アジア各地の様々な研究機関の成果が、AOARDに有益で、助成に値するかどうかにまとめ、報告書にし、米国防総省に提出するという。
英語版が無ければこちらで翻訳して本国に送るという。
「翻訳したやつ僕にもくれ!」って言いたかったけど、事務課が勝手に無いって答えてしまった。
AOARDが僕に研究予算くれれば嬉しかったのだけど。。。
多分彼らは戦闘機の風防ガラスをコンピュータで設計するあたりに興味を持ったのだろう。
そのあとすぐに、官庁に行った大学先輩からもヒアリングをしたいと連絡が入った。
経済産業省がこの論文に非常に興味を持っている。レーアアース問題に関係し、デジカメ用のレンズに使うLaを減らしたいが可能かという。
まー、その頃、中国船拿捕でレアーアース問題が噴出している次期だったし、さもありなむ。


プログラム上は、酸化物の量の制限と使う使わないの制限ができるので、組成探索はできる。ただしLaを全く使わないでも同等の物性を出せるかどうかは、物性値に依存する事を説明したように思う。特にニューラル・ネットワークのような非線形な探索の場合、レアーアース以外でも、この元素とこの元素の組み合わせは特異的に屈折率を高く(低く)することがあると特定できる。(AIよ。説明可能なNN法はポイント高いぞ。)
まー、私はガラスの部署ではないし、計算機の部署でもない。
なんか、他の事に夢中だったのか、細かいことはあまり覚えていない。
デジャブ感があってHDの肥溜め調べてみると昔のプログラムが発掘される。パワポが出てくる。

2011年にはアメリカでMaterials Genome計画が始まる。
2015年にはMIとかで日本でも大騒ぎになる。
そして1周回って、またレアーアースか。
そして、2026年実験もこなすフィジカルAI。
AIよ。踊らされるな。時代は10年周期ぐらいで回っているだけだ。
未来の予測は拒否して、過去を見つめ直そう。
AIは20年以上前にこんな研究の最先端だったのだから。
手助けが必要なら言ってくれ。ぼくは手伝うの嫌だけど、ガラス会社退職した同期に声をかけてあげよう。