ガラスのハンセン溶解度パラメータ(HSP)

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[1. 概要]

無機物のハンセンの溶解度パラメータ(HSP)は実測で求める。HSPが既知の溶媒を用いて分散試験を行う。定性的な解析を行うなら良溶媒と貧溶媒に分ける。何を尺度に良溶媒と貧溶媒を分けるのか、によって求まる無機物のHSPは異なる。尺度としては、古くは無機物の沈降時間[*1]や沈降高さで評価することが多かった。沈降時間に関しては、溶媒の粘度や密度の関数になる。最近の研究としては遠心沈降方式のLUMISIZER[*2]やパルス(緩和時間)NMR[*3]の測定結果を尺度に使う。ある無機物が一つに決まり、その実測によりHSPが決まる。
次に任意の組成のガラスのHSPを求める。
HSPの値とガラスの組成のペアがあれば各々の酸化物のHSPを重回帰法[*4]で求めることができる。全ての酸化物(フッ化物)のHSPが決まって、ガラスのHSPが構成する原料の組成mol%と原料のHSPで決まるならガラスのHSPは計算で出すことができる。
全ての原料のHSPが決まっていない場合には組成とHSPの相関を考えるのではなく、HSPとガラスの物性値の相関を考える。ガラスの物性値の推算式の構築はpirikaの研究で既に行っている。

[2. 実測によるガラスのHSP]

ガラスの分散試験

(JPA 2022151479 AGC特許ー光学フィルター)

NameCASA1A2A3A4A5A6
Acetonitrile_75-05-8000110
γ-Butyrolactone96-48-0001100
m-Cresol108-39-4000000
Diethyl Ether60-29-7000000
Dimethyl Formamide_68-12-2001111
Dimethyl Sulfoxide67-68-5111111
Ethanol64-17-5001010

どのようなガラスがどんな溶媒に分散したか、しなかったかの実測からHSP決めている。でも、そのガラスがどんな組成かはわからない。

沈降時間からHSPを決める

[資生堂基礎科学研究所 色材、65(4), 164-270 (1992)]
TiO2単体のHSPは決定できる。

沈降高さから決める[*5]
図1無機物の分散性
図2 横軸:25-沈降高さ、縦軸:HSP距離

沈降高さ法で無機物のHSPを決めるにはとても時間がかかる。粒子のサイズにもよるが1ヶ月近く放置する事もある。ここで問題になるのが、沈降高さが低いものが良溶媒なのか、それとも貧溶媒なのかだ。沈降時間で見ると図1のAはどの溶媒に対しても一番早く沈殿してしまうように思える。Eの無機物は沈殿しにくく、どれも良溶媒に見える。しかし、十分な時間をおいて沈降高さをとった場合、図2に示すように沈降高さは低くなるものの方が良溶媒と考えた方がHSPの理論に合う。

ガラス組成が既知で沈降高さ法でHSPが決まった処方が数十点準備できた。

No物性値SiO2B2O3MgONa2OTeO2dDdP
118.130.0 0.0 0.0 0.0 0.0 18.1315.82
220.3113.5 23.2 0.0 0.0 0.0 20.3112.5
320.250.0 20.2 0.0 0.0 0.0 20.2511.47
417.9460.4 15.7 0.0 2.0 0.0 17.9415.71
518.330.0 0.0 0.0 0.0 0.0 18.3313.77
618.5530.0 45.0 0.0 3.0 0.0 18.5513.88
3020.40.0 19.5 0.0 0.0 0.0 20.412.42
3121.4255.6 0.0 22.2 0.0 0.0 21.4213.32
3220.9955.6 0.0 22.2 0.0 0.0 20.9912.74
3320.235.9 40.6 0.0 0.0 0.0 20.2312.98
3419.4981.6 16.6 0.0 0.0 0.0 19.4914.46
3520.190.0 27.5 0.0 0.0 0.0 20.1913.66
3619.930.0 27.5 0.0 0.0 0.0 19.9314.35
3720.6913.5 23.2 0.0 0.0 0.0 20.6912.07
3820.5413.5 23.2 0.0 0.0 0.0 20.5412.85

重回帰法を使うと各酸化物のHSPを決めることができる。

それでは、このテーブルにない酸化物のHSPを予測したい場合にはどうしたら良いだろうか?

[3. ガラスの物性値とHSPの相関]

HSPの理論ではtot HSPは蒸発潜熱、dDは屈折率、dPは誘電率と相関付けられている。
求まったガラスのHSPに対して、物性値とどのような相関があるか検証した。用いた物性値はガラスの組成から計算した推算値である。

理由は明らかではないが、HSPの値を密度で割ることによって相関が得られた。
[a] ガラスのδD(分散項)は屈折率と相関がある
[b] ガラスのδP(分極項)は誘電率と相関がある
[c] ガラスのtot HSP(トータル分)はTgと相関がある
[d] ガラスのδH(水素結合項)は膨張率と相関がある

これを相関を使うことによって、ガラスの物性推算が行える酸化物についてはHSPの予測値が得られる。

[4. ガラスの物性値推算]

計算機化学討論会2000[*6]、触媒学会2000[*7]、AGC研究報告ガラスの組成設計[*8]でガラスの物性推算法を構築してきた。熱膨張率、ヤングモジュラス、密度、ガラス転移温度、屈折率、Abbe数はガラスの組成がわかれば計算で出すことができる。
新たにガラスの誘電率[*9]の推算式を構築しなおした。この誘電率の推算はpirikaのもつ解析ツールを利用したものになる。ツールによってどのような知見や洞察が得られるか考える良い例題だ。

[5. Pirikaのリンク]

*1 化粧品用の酸化チタンの表面修飾とハンセン溶解度パラメータ(HSP):沈降時間法
*2 微粒子のハンモック、δNet : 分散に対する新しい指標 : LUMISIZER
*3 HSPとパルスNMR
*4 重回帰法
*5 インクジェット用インク設計:沈降高さ法

*6 ガラスの物性推算と逆設計:計算機化学討論会2000
*7 ガラスの物性推算と逆設計:触媒学会2000
*8 AGC研究報告 光学ガラスの組成設計
*9 ガラスの誘電率の推算式構築




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