沸点、蒸気圧、臨界温度、臨界圧力

2011.5.30

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HTML5版、沸点、蒸気圧、臨界温度、臨界圧力

最新の推算方法は、HSPiP に搭載されました。

プログラムによってどんな原子団が使えるかはこちらで確認のこと

蒸気圧(じょうきあつ)とは、任意の温度に対して、その物質の気体が液体状態あるいは固体状態と平衡になるような圧のことである。(WikiPedia)その場合の特殊な点として、圧力が大気圧に等しくなる温度を標準沸点と呼ぶ。このある温度と蒸気圧の組をプロットすると、一般的には曲線が得られ、これを蒸気圧曲線と呼ぶ。その曲線をどんどん伸ばしていくと、臨界点(臨界温度(Tc)、臨界圧力(Pc))にたどり着く。

沸騰の科学についてまとめました。こちらから参照してください

BP-Tc

これらの、沸点、臨界点の推算技術とアントワン定数の推算技術を使って、蒸気圧曲線を得るHTML5+CSS3+JavaScriptのプログラムを作ってみた。
HTML5制限バージョン(統合化バージョン 2011.6.13)
(Pass Codeがない場合、重原子は8つまで。S, F, Clは使えない)

分子の描き方はこちらを参照してください。

YMBシミュレータ(HTML5 プログラム 2011.6.10 PassCodeを持っているならより精度が高くより広範に計算できる。)

iPhone/ipod Touchをお使いの方はこちらのプログラムを試して頂きたい。(マウスではタッチイベントが発生しないので分子が描けない)

それでは、使い方を説明しよう。

BP-Joback

エチレン・グリコールの分子を描き、Temp.-Pressureボタンを押す。
するとプログラムは分子を原子団に分割し物性推算を行う。

もし、実験値の沸点がある場合には、それを入力すると、AntoineのAのパラメータは実験値から計算される値を使う。
沸点の推算値は471.68Kで、実験値の沸点は470.45Kなのでかなり良く推算できていることがわかるとおもう。

計算結果をコピーすると、以下の情報が得られる。
(Macではコピーが禁止されることがある。その場合は、必要な部分を選択しておき、テキストエディターなどにドラッグ・ドロップする。)

臨界温度は720K、臨界圧力は8.2MPaなので、ちょっと誤差が大きいように見えるかもしれない。
しかしこの臨界点はデータベースよって値が大きく異なる。データ集によっては臨界温度は645K臨界圧力は77Barのものもある。
(沸点、臨界点の推算式は10年以上前のルーチンをそのまま使っているので精度が余り出ない。YMBシミュレータでは最新のパラメータを使っている。)

アントワン・パラメータは実験値は、[7.557, 1697.7, 165.69] なので、悪くない推算値になる。

そして、室温から沸点まで20等分した温度での蒸気圧の計算値が出力される。これを表計算ソフトにペーストしてグラフを描いてみる。

BP-Joback

このように簡単に蒸気圧曲線を描くことができる。一番右の点は臨界温度での蒸気圧(臨界圧力)になる。このテーブルの2番目のカラムにはCoxの変換温度が記載されている。

BP-Joback

これと蒸気圧をプロットすると、蒸気圧曲線は直線になる。
Cox線図の詳しい説明はこちらをお読み頂きたい。

エチレングリコールは非常に強い水素結合があり、実験値も大きくずれる事がある。それにしては非常に良い推算式になっていると考えられる。こうした検討が分子構造だけからできる意味合いは大きいといえる。

この沸点と臨界定数は対応状態原理を使って他の物性を推算する際に無くてはならない物性値になる。ところが、自分が最も信頼するデータベース、Dipper801データベースの化合物を調べてみると

BP-Joback

1319化合物のうち、実験値はこの程度しかない。

また、実験値の無いものについては、臨界温度が非常に高温になり測定自体が難しい、高温での分子の熱安定性の問題からこれ以上の実験値が増えることは期待できない。
そこで、臨界点の推算に関しては精度の高い方法が待ち望まれる。
詳しい説明は以下を参照していただきたい。
臨界温度
臨界圧力
臨界体積

臨界点の推算に関してはJOBACK法を改良したものが色々開発されているが、JOBACK法は臨界点の推算に沸点の値が必要になる。

その沸点が推算値だった場合には誤差が伝播して臨界点の推算値が大きくずれる。

Pirikaの推算式は沸点を使わず、原子団のみからNN法で推算してしまう。それにしても、NNに使うデータ数が少なく、学習が完全ではない。

BP-Joback

Cox線図の説明でも触れたが、Cox線図では同族の化合物の蒸気圧直線を延長すると、Cox点という一点で交わる。臨界点はその手前にあるのだが、そこを拡大してみてみよう。

BP-Joback

このように、臨界点はCox-Antoine線図の上にあり、分子が大きくなると温度は高い方向へ、分子が球状になると温度は低い方向へ行くことが判る。

これからすると、臨界点はAntoine定数と、形状パラメータから推算することが可能であることがわかる。
(この内容は、2007年、化学工学会、北海道の展望講演で紹介した。)

BP-Joback
BP-Joback

このような、手法は定量的構造物性相関(QSPR)というPIRIKAで多用する推算方法である。

BP-Joback

この推算式を使って、臨界定数の値の無い、1,2プロパンジオールを推算してみた。
原子団寄与法を使って推算すると青丸で囲った位置に、Antoine定数を使った推算では赤丸で囲った位置にくる。
赤丸で囲った位置はCox-Antoine線の上にあり、推算値としてどちらを採用するかと考えたら、自分はこちらを採用するがいかがだろうか?

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