環境ホルモンと疑われる化合物のHSP

2022.11.24改訂(2010.2.24)

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概要

内分泌撹乱作用を有すると疑われる化学物質67化合物について、HSPを計算した。
またHSPと分子体積を入力に用いて、これら67種類の化合物を自己組織化分類を行った。
大まかには6種類の分類になった。

また新しいHSPiPを用いて、これらの化合物の環境影響関連の物性値を計算し実験値と比較検証を行った。

内容

内分泌かく乱物質、環境ホルモン

日本の(旧)環境庁が1998年「内分泌撹乱作用を有すると疑われる化学物質」を67化合物発表した。その化合物の構造からHSPを計算した。

例えば、これらの化合物の、生物濃縮性、logBCF(bio concentration factor), logP, logS の情報は次のように求まっている。(HSPiPのデータベースに収録されている。HCodeというのはHansen Codeの略で、このコードを使いDBから検索できる。)

logS、水への溶解度(g/100g)の一番大きいものでも-0.55であるので、比較的疎水性の化合物が多いようだ。
logBCF(生物濃縮性)とlogP(オクタノールー水分配比率)には、おおまかな相関があるが、その範囲は広く、どういった化合物が環境ホルモンとして悪玉なのかはこうした指標からは分からない。

JSMEの使い方はこちらを参照して欲しい。

そこで、ハンセンの溶解度パラメータ(HSP)をHSPiP ver.3 を使って計算してみる。

結果は下の表のようになる。Hansen Solubility parameterの説明は他の記事に譲るとして、このHSPの値を使ってSOM(Self Organization Map)を使って分類してみる。

SOMへの入力ベクトルは[dD, dP, dH, sqrt(Volume)]とする。SOMはこの4次元ベクトルを2次元に、似たベクトルは似た位置にマッピングする。Readボタンを押してからStartしてみて欲しい。

結果は下の表のようになった。(乱数を使っているので全く同じにはならない)この結果から見ると大まかには6種類の化合物群に分けられる。

CodenonamedDdPdHsqrt(V)ClLogBCF
544912di-n-butyl phthalate17.38.13.716.302.22
209859cypermethrin19.17.15.218.122.62
64505butyl benzyl phthalate18.58.23.916.701.21
2052730trifluralin18.05.83.316.203.36
2098217fenvalerate19.46.25.318.712.85
Average18.47.14.317.22.45
2049111p,p’-DDE20.56.63.215.144.08
2091924octachlorostyrene20.95.72.314.383.91
2098126PCDFs21.55.03.813.743.61
905818HCB21.24.53.112.564.33
1287310p,p’ -DDT20.13.92.915.854.29
Average20.85.23.014.34.04
204872aldrin19.79.40.814.963.74
204898trans-, cis-chlordane19.412.71.415.484.29
2049220heptachlor19.411.51.114.873.94
2063814dieldrin20.011.01.215.063.95
2064116endrin20.011.01.215.063.87
Average19.711.11.215.03.96
2068321kelthane20.54.47.815.853.79
2052425PCDDs20.75.14.914.144.99
776728nonylphenol17.23.86.715.602.19
208781alachlor18.68.35.715.511.12
Average19.25.46.315.33.02
77614benzophenone20.47.54.612.801.08
205047carbaryl19.69.67.612.900.95
7576234-nitrotoluene19.47.24.111.000.90
Average19.88.15.412.20.98
77656bisphenol A19.05.912.114.501.64
8867132,4-dichlorophenol19.98.112.010.921.53
1654822malathion15.28.69.316.401.52
108063atrazine18.48.612.813.410.90
2069729simazine18.79.213.912.810.56
Average18.28.112.013.61.23
914227pentachlorphenol20.84.99.412.152.66
2074119hexachlorocyclohexane, BHC18.315.94.114.162.57
554015diethylhexyl phthalate16.85.63.419.902.77

緑と黄色で示された化合物は比較的似ている。
大きなdDの値と小さなdHを持ち、多くの塩素原子がついた、logBCFが4付近の化合物である。

違いはdPの値の大小である。このSOMの計算には塩素の数やlogBCFの情報は入れていない。それなのにSOMは結構賢く分類していると思う。

水色の化合物は大きなdHを持つ化合物である。
ピンクの化合物はオレンジの化合物群に似ているが、分子の大きさが小さく、logBCFの値も小さい。
紫の化合物は他に分類し直した方が良いかもしれない。
25はグリーンに、28はオレンジに、21と27は新しいグループに。1は例外。

自分は生体の事はあまり詳しくないが、HSPの言う事は、似たHSPの化合物は似た溶解性を持つということだ。

生体が持っている様々なホルモンがこの分類表のどこに位置するかを考えた時に、これらの化合物の作用機構が分かるのではないかと思う。

21488 ESFENVALERATE19.46.25.318.7118.7
20764 heptachlor epoxide19.713.11.514.9714.9
20508 2,4-dichlorophenoxyacetic acid19.88.610.712.3212.3

こうしたHSPを使うと、上のような化合物がどこに分類されるかはHSPと分子サイズからだいたい見当がつく。

例えば Benzo[a]pyrene のHSPは下のような値になるのだが、これはどこに分類されると思うか?

11548Benzo[a]pyrene22.84.81.814.28285686014.3

こうした定性的な解析をせずに、いきなりQSARモデルを考えても、あまり成功はしないように思える。専門家の意見を聞いてみたいものだ。

2011.4.25

Drag=回転, Drag+Shift キー=拡大、縮小, Drag+コマンドキーかAltキー=移動。

これらの化合物がそのような位置関係にあるか3次元表示してみる。小さな球をクリックすれば撹乱物質の名前が現れる。実際に試してみていただきたい。

表示されない場合

この例題は分子体積は使っていない。

HSPiのデータベースには10000化合物のデータが収録されている。
そこで緑色にマークした範囲の化合物を検索してみた。
dD= 20 – 22
dP= 4 – 6
dH= 2 -4

66化合物がヒットした。その多くは塩素化合物であったが、下に示すものもグリーンの領域に入る。

これらは環境ホルモンだろうか?

少なくとも(旧)環境庁が指定した67化合物だけを管理すれば良いと考えるのは間違いな気がする。

化審法などを考えている人たち,公的な機関の人たち,大学の先生方、WebKis-Plusなどのデータベースをやっている人たちがこうしたHSPの有用性に気づいてくれればと思う。

環境関連物性値の推算

  1. HSPiPを使うと、Smiles, InChIの構造式から簡単に物性推算をすることができる。

テキストフィールドにSmilesの構造式を入れる。

計算ボタンを押す。
すぐに推算結果が現れる。

Y−MBの推算式をVer. 3.1にアップグレードしたので、その精度を環境ホルモンの化合物を使って検証してみた。
データは
http://www.ecosci.jp/env/eh_logp.htmlにあるものを使った。

ひとつだけ (HCode=21051) 大きく外れるものがある。

HCode 21051
logP=3.18
HCode 20877
logP=5.94
HCode 20927
logP=6.31
HCode 20928
logP=6.23
HCode 20929
logP=6.63
HCode 20931
logP=6.67

HSPiPのデータベースから似たものを検索すると、他のものは皆6付近なので、21051の化合物のデータが誤りだと思う。

HomePageでは他の計算ソフトを使った場合の結果が記載されていた。
SciQSAR, ScilogPなどと比べて圧倒的にY−MBの精度が高い事が分かった。
(もしかしたらバージョンが古く、今はもっと良くなっているかもしれないが)

logSとlogPには上のような関係がある事が知られている。
しかし、logPからlogSを推算するのはちょっと無理があるだろう。

原子団寄与法をベースにするY-MBではこのぐらいの精度でlogSを推算する。
構造式のみから推算する方法としては最高の部類に入るだろう。

logBCF(生物濃縮性)についても、そこそこの精度で推算することができる。

環境影響評価をする上で、かなり大きなこうした分子が構造式だけから、こうした物性を推算する事ができる。Y-MBの新版2021にご期待ください。


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