Appen式によるガラス物性推算法

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MAGICIAN養成講座 > 過去の推算式を改良 >Appen式によるガラス物性推算法

[1. 概要]

1970年にAppenはガラスの物性推算式を発表した。
物性値=1/100*Σfi * Pi fi: factor、Pi: mol%で物性を計算する。
モル体積, 屈折率, 線膨張係数, ヤング率, 剛性率, 表面張力, 誘電率推算用のパラメータが公開されている。
50年以上経った現在、物性値のデータは増えたであろう。推算式に関してはニューラルネットワーク法[*1]などの非線形方程式を使うことが増えてきた。非線形方程式は精度は高いかもしれないが、ガラスの物性に関する洞察は得られにくい。
Appen式をベースに拡張を図る。式のベースは定数項なしの重回帰式となる。

[2. Appen法で使える酸化物]

Al2O3, As2O3, B2O3, BaO, BeO, Bi2O3, CaO, CdO, CoO, Cs2O, CuO, FeO, Ga2O3, GeO2, HfO2, In2O3, K2O, La2O3, Li2O, MgO, MnO, Na2O, Nb2O5, NiO, P2O5, PbO, Rb2O, Sb2O3, Sc2O3, SiO2, SnO2, SrO, Ta2O5, ThO2, TiO2, Tl2O, Y2O3, ZnO, ZrO2のパラメータが公開されている。表1に示すように値が求まっていない酸化物も多い。

酸化物モル体積屈折率線膨張係数ヤング率剛性率表面張力誘電率
Al2O340.41.52-3.51118485.45809.2
As2O31.57
B2O328.31.59-25931.5367.55.5
BaO221.8820612.9171.647020.5
BeO7.81.5954.51068.945139013.8
Bi2O3453.15
CaO14.41.73131093.4485.451017.4
CdO17.61.81511.5559269.743017.2
CoO14.55833.6357.943015.2
Cs2O471.71
CuO3
FeO16.55.5509.9186.349016
Ga2O342.51.77-2
GeO21.64
HfO227.51.96-101961.3833.6
In2O32.34
K2O34.11.57546.5402107.916
La2O3402.57
Li2O111.69527784.5294.245014
MgO12.51.616902.2372.652015.4
MnO17.210.5598.225539013.8
Na2O20.21.5939.5583.5171.629517.6
Nb2O5562.82
NiO1351265490.340013.4
P2O51.3114
PbO22.22.2516421.7142.222
Rb2O431.63
Sb2O3472.577.5
Sc2O3282.24
SiO226.71.4672.15669279.52903.8
SnO228.81.94-4.5350
SrO17.51.77516946.3441.349018
Ta2O5522.74
ThO231.7-31618.1696.3
TiO220.82.130.51677681.625025.5
Tl2O632.44
Y2O3352.26
ZnO14.51.715588.4284.445014.4
表1 Appenの酸化物パラメータ

値にマークしてある酸化物は値が1つに決まっていないものだ。このブランクの部分を新しいデータから埋めたい。

[3. Appen式の拡張]

Appen式の形は重回帰式だ。

=α1x1+α2x2αnxn    αx物性 = α1*x1 + α2*x2 ・・・αn*xn      α:係数、x:説明変数

係数が未知の酸化物を重回帰法[*1]を用いてα:重回帰係数を求めれば良い。
非線形回帰式を用いると過学習を起こし予測性能が低下する[*2]ことはよく知られている。重回帰法を用いる場合にも過学習を起こすことがある。
pirika.comで開発されたLASSDGE法[*3]を使うと過学習を抑えることができる。

図1 係数が未知の酸化物の係数を決定する。[a]通常の重回帰法、[b]LASSDGE法

原料を拡張したガラスのDB[*4]を重回帰法で解析し回帰係数を求める。この回帰係数をAppenの係数と比較すると図1[a]になる。相関は低い。Appen式では13.8の酸化物(MnO)が-580.8となったりする。統計的には正しいのかもしれないが係数自体は意味がない。重回帰係数の意味が無くなる例を多重共線性[*5]で説明した。
それに対してLASSDGE法で求めた係数図1[b]は大まかに似たような値を返している。
(LASSGE法をどこまで深く計算するかはまだ議論の余地がある。)

[4. ガラスの物性異常]

Appenの係数が一つに定まっていない酸化物がある。物性のビッグ・データがあれば現在のDLを使い非線形に推算式を作ることができる。すると何故、係数が一つに定まらないかを考えることをしなくなる。知識が失われる。
よく知られているガラスの異常を書き留めておく。

混合アルカリ効果
図2混合アルカリ効果

SiO2の70%, 75%, 80%の残りをKとNaに割り振った場合ヤングモジュラスの値は上に凸になる。これは化学強化ガラスの基本原理になる。小さなNa+が大きなK+に入れ替わる事によって大きな張力が発生する。

ホウ酸異常
図3 ホウ酸異常

Na2O-SiO2(17-83mol%) の系のSiO2を他の酸化物に置き換える。
[BO4]は四面体構造をとり熱膨張率(TEC)は小さくなる。[BO3] は3面体構造になりTECは大きくなる。B2O3と同様の構造を取るAl2O3の場合もTECは下に凸になる。

アルミナ異常
図4 アルミナ異常

SiO2-Na2O(75mol%-25mol%)のNa2OをAl2O3に置き換えると密度や屈折率で下に凸になる。
[AlO4]と[AlO6]の構造変化によると考えられている。

これは、非線形現象なので通常の重回帰式では表現できない。
線形回帰の見通しの良さと、非線形性の効果を導入したクロスターム重回帰法[*6]で解析するのが良い。

[5. Appen法スプレッドシート]

図5 Appen法計算スプレッドシート

組成を入力すれば物性を計算するスプレッドシートは簡単に作成できる。
Office Scriptやソルバーを使えば逆設計もできる。

[6. 異常現象を見出すことができるか]

教科書に載っていないガラスの異常現象をどうやったら見つけることができるか?
AIは人間の代わりに見つけてくれるか?
大事なポイントだ。

[7. Pirika内リンク]

*1 重回帰法
*2 過学習と予測性の欠如
*3 LASSDGE法
*4 ガラスの誘電率推算法
*5 多重共線性
*6 クロスターム重回帰法


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