2026.6.25
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溶解度パラメータの現在・過去・未来 > レジストの溶媒設計-THF代替
pirika.com レジスト関連のまとめ
[0. ストーリー]
ある高価な溶媒、ある毒性の高い溶媒、ある機能の劣る溶媒を、混合溶媒で代替したいことは良くある。HSPiPはそうしたニーズに答えるため2008年11月にリリースされた。2023年に行ったレジスト溶解の講習会で解説したパワポにあったおまけが発掘された。2008年に台湾のメーカーがTHF代替の混合溶媒をHSPを利用して設計し、特許をだしていた。HSPiPの販売以前の事だ。今時のやり方を使うとどうなるか示そう。
[1. レジストを希釈、洗浄などに使う溶媒設計]
混合溶媒でTHF相当のHSPを持つ溶媒を作る
表1に溶媒リストを示す。シクロヘキサノン(CHN)/PGMEA/キシレン(XYL)を配合しA-Hの溶媒を作る。特許では重量比であるが、HSP理論では体積平均で混合HSPを計算する。密度があれば簡単に変換できるが、ここでは簡便に体積比で計算した。
- 1次元の溶解度パラメータ
SP値に加成性があるなら
19.5=(20.3*a+19.3*b+18.1*c)/(a+b+c)の解を求めれば良い。無数の組みが求まる。 - 3次元の溶解度パラメータ(HSP)
混合溶媒のHSPは体積分率をa,bとして次式で計算される(図1参照)。
[dDm, dPm, dHm]=[(a*dD1+b*dD2), (a*dP1+b*dP2), (a*dH1+b*dH2)]/(a+b)
この混合ベクトルがTHFと同じ時に一番よく溶解すると考える。HSPiPを持っているならSolvent Optimizer機能を使えば簡単に比率が求まる。図2に示すようにHSPを3次元のベクトルとみなせば溶媒のHSPは3次元空間中の1点を示す。それに対して1次元のSP値は原点からの距離でしかない。原点からの等距離(球の表面)なので無数の解が発生してしまう。他にもHSPiPで混合溶媒を設計するにはGrid法、3DO法がある。マニュアルを参照してほしい。ここでは溶媒と混合溶媒のHSPをハンセン空間に示す(図3)。赤い球はターゲットのTHFを示す。特許ではキシレン(青:XYL)の量はDの20%以外は全部10%である。そこで混合溶媒でPGMEA(水色)とCHN(緑)の量を変えた混合溶媒(オレンジ)はPGMEAからCHNのほぼ直線上に配置される。混合溶媒C,Eは評価が良好であったので球の色を黄色にしてある。クラッシックの3D-HSPではPGMEAはTHFの位置にかなり近い。混合溶媒のHSPはTHFの方向へは向かっておらず、C,Eが溶解するというのは少し理解し難い。 - 4次元のクラッシックHSP
HSPiPに搭載されている水素結合項の分割δHD,δHAはあまり使われていない。図4に示すように表1の溶媒のδHDはほぼゼロ(0.1)なので3軸をどう選ぼうが3次元空間中で平面にへばりついてしまう。従ってターゲットのTHFに近いのはどの溶媒なのかは判然としない。3次元のHSPよりもかえってわかりにくくなっている。図5で実際に動かし確認できる。 - 次世代のHSP2, 山本法の水素結合項の分割 yHAcid, yHBase[*1]
pirika Proに搭載されているYMBではSmilesの構造式からyHAcid, yHBaseを算出できる。[δD, yHAcid, yHBase]、[δD, δP, sq(yHAcid*yHbase)]、[sq(4*δD2+ δP2), yHAcid, yHbase]の3種類をプロットする。結果を図6に示す。図4と比べ3次元空間中にひろがる。評価が良好な混合溶媒C,E(黄色の球)の位置がTHFに近くなるかは4次元を3次元で見ているのでなかなか判断が難しい。少なくとも4次元のクラッシックHSPよりは評価とハンセン空間中の距離はより理解しやすくなっている。 - 次世代のHSP2, 山本法の水素結合項の分割、ルイスの酸塩基yED/yEA
Gutmannのルイスの酸塩基DN, ANはそのままではHSP理論に取り込んでもうまく動作しない。山本がバランスをとって調整したyED/yEAを利用する。図8に示すように評価が良好な混合溶媒C,E(黄色の球)の位置はかなりTHFに近くなる。δPが少し大きすぎる。そこでyED/yEAを使って溶媒設計するのであれば、キシレンの代わりにδPだけがより小さな溶媒を20%ぐらい利用する事である。
[2. 応用]
THFを使った事のある実験化学者なら、この溶媒の不思議な特性をよく知っている。水に100%溶解する。しかし疎水的なポリマーもよく溶解する。とても広い範囲のHSPの化合物を溶解する。官能基としては環状のエーテルだけである。その性質を表すのにクラッシックの3D-HSPでは不十分である。δHD, δHAを使うのであればかえって悪くなる。最低限yHAcid/yHBaseを使う必要がある。yED/yEAを使った方がより好ましいのかもしれない。しかし実際にはyED/yEAを使うと溶媒の混合則が複雑になる。ただしHSPiPの体積分率による混合溶媒HSPは理想溶媒混合式でこれはこれで明らかに間違っている。深共晶溶媒(DES)のようにルイスの酸性溶媒とルイスの塩基性溶媒が特殊な溶解性を持つ効果を考えるならyED/yEAを使い解析を進め経験値を上げておくことが今後の応用につながる。
[3. 図表・デモ]
Jspreadsheet CE
表1溶媒リストJspreadsheet CE
表2 混合比率


図3 溶媒と混合溶媒のハンセン空間へのプロット

図5 HSPiPのδHD, δHA分割
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図7 Pirika ProのyHAcid, yHBase
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図8 山本法yED/yEAを使ったプロット
図9 Pirika ProのyED, yEA
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[4. pirika.com内のリンク]
*1: HSP、水素結合項の新しい分割法yHAcid/Base
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