2026.6.20
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溶解度パラメータの現在・過去・未来 > 溶かさない溶媒設計ーレジスト現像液
[0. ストーリー]
レジスト用のポリマーは露光の前後で溶解度が変わる。ネガとポジで機構は異なるだろうが、所詮元のポリマーは同じだ。溶かしすぎる良溶媒を現像液に使うことはできない[*1]。ハンセンの溶解球は溶けるか溶けないかの境界を表す。HSPiPを使えば境界付近にある溶媒を探索することができる。問題は溶媒の酸塩基性を設計の指針に使えないことだ。次世代のHSP2、pirikaPro[*4]を使うと解釈がどう広がるか示そう
[1. データ]
AZエレクトロニックマテリアルズ(株)特許[*a]に現像液と残膜率の関係が記載されていた(図1)。まず解析するために溶媒のSmilesの構造式を準備する(表1)。図2に示す様にPirikaProを使うとSmilesの構造式から拡張HSPiPフォーマットが簡単に得られる。また同じSmilesから図3の水素結合分割項が得られる。拡張HSPiPフォーマットの水素結合分割項を入れ替えながらハンセンの溶解球探索(図4)を行うことができる。
[2. レジスト・ポリマーの溶解度パラメータ]
- 1次元のSP値
図5に1次元のSP値と残膜率の関係を示す。SP値が17.2以下で残膜率がほぼ100%であるとわかる。butyl acetate(17.6)、2-hexanone(17.7)、2-Ethoxyethyl propionate(17.8)で急激に残膜率が小さくなることは理解しにくい。 - 3次元のハンセン溶解度パラメータ(HSP)
3次元のHSPを用いた現像液探索に関してはV-Tube[*1]で解説した。溶解球の表面RED=1の(混合)溶媒を簡単に設計できる。Probe法[*3]を使うのも良い。図6に示す様に溶解球の中心は[17.1, 6.9, 7.5]と求まる。特許には[[13.9, 8.8,9.9]と記載されている。δDが非常に小さい。大まかにはHSP距離が短いほどよく溶かしていることがわかる。Propylene Glycol Monomethyl Ether(PGME)だけは3次元のハンセン空間中で中心から逆向きに位置する。1DのSP値ではSP値が小さいものが貧溶媒であった。しかし、PGMEの方向の先、溶解球の先にも貧溶媒の領域は存在するように思える。同じ様なHSP距離であってもPGME(残膜率15.1%)とdiethyl ether(残膜率99.5%)の違いは説明できない。単純なδHだけでは不十分な可能性がある。 - 4次元のHSP(HSPiPに搭載のδHDとδHA)
HSPiPに搭載されている酸塩基分割はブレンステッドの酸塩基をベースにしている。δHDがゼロより大きくなるのはアルコール、カルボン酸、アミンだけである。そこで図7に示す様にPGME以外の溶媒はδHDがゼロになる。そこで溶解する溶媒も、溶解しない溶媒もδHDがゼロならハンセンの溶解球のδHDもほぼゼロになる。
Euclid距離=SQRT(4*(dD-17.0)2+(dP-6.9)2+(δHD-1.2)2+(δHA-7.5)2)
Beerbower距離=SQRT(4*(dD-17.2)2+(dP-6.8)2+2*(δHD-1.0)*(δHA-6.3))
PGMEのHSP距離は3D-HSPと比べてもかえって悪くなる。HSPiPに搭載されているのはBeerbower距離であって、PGMEの結果はとても悪い。HSPiPに搭載されている酸塩基分割がほとんど使われないのはこの為である。
BeerBower式の2*(δHD-1.0)*(δHA-6.3)はδHD<1.0 δHA>6.3かδHD>1.0 δHA<6.3で値がマイナスになる。その領域の溶媒は酸塩基の交換反応で距離が短くなる。 - 山本法による酸塩基分割
山本はHSPiPに搭載のδHD/δHAを改良する為新たな分割方法を開発した[*5]。この分割では多くの溶媒でyHAcidはゼロにならず、バランスがとられた値になる(図8)。HSP距離の式は次の様になる。
Euclid距離=SQRT(4*(dD-17.2)2+(dP-7.0)2+(yHac-3.2)2+(yHbs-4.3)2)
Beerbower距離= SQRT(4*(dD-17.3)2+(dP-6.9)2+2*(yHac-2.9)*(yHbs-3.7))
図8の残膜率とEuclid距離の関係ではPGMEの距離も短くなり、HSP距離が短くなるとよく溶かす関係が成立する。Beerbower式では相関が低いので酸塩基交換反応は考えなくて良いようだ。yHac=3.2、yHbs=4.3の時、ほんの弱い塩基で距離を短くする。 - ルイスの酸塩基(山本による調整済みyED/yEA)
山本はGutmannのDN/ANをベースに、HSP理論に矛盾しない様にElectron Donor/Acceptor(yED/yEA)を定めた。図9に示す様に今回使った溶媒はハンセン空間に広く分布している。
Euclid距離=SQRT(4*(dD-17.1)2+(dP-6.8)2+(yED-9.6)2+(yEA-7.1)2)
Beerbower距離= SQRT(4*(dD-17.2)2+(dP-6.6)2+2*(yED-9.3)*(yEA-6.2))
この解析でもEuclid距離で解析したものが性能が良い。yED(ルイス塩基)が9.3、yEA(ルイス酸)が6.2の時に距離を短くする。
[3. 現像液の設計]
溶解球の中心が求まった。その中心から溶解球の半径より長いHSP距離の溶媒であれば溶かしすぎることはない。PGMEの距離を正しく評価するにはyHAcid/yHBaseかyED/yEAを使ったEuclid式を使う必要がある。溶媒リストがあればyHAcid/yHBaseやyED/yEAはすぐに計算できる。HSP的に溶かす溶かさないに加え溶媒の大きさまで加味した設計が重要になる。この解析ではPGMEの残膜率とHSP距離の相関がどれも釈然としない。図10にyED/yEAを使ったEuclid距離と分子体積の関係を示した。HSP距離は6以下で残膜率は21.5%以下になる。PGMEはEuclidのHSP距離が5.3と長めであるが分子体積が小さい。HSP距離が6以上だと分子体積が小さくても残膜率は高い。
[4. 図表]

Jspreadsheet CE
表1 解析用データ




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[5. 参照文献]
*a AZエレクトロニックマテリアルズ(株)特許 JP 2010-39260
[6. pirika.com内のリンク]
*1: 半導体用レジストポリマーの現像液設計 V-tube 2024.2.24
*2: QSphere: 溶解度を定量的に解析
*3: Probe法溶媒探索webアプリ 2022.6.18, 2022.7.6
*4: Pirika Pro
*5: 山本法酸塩基分割
PirikaProを用いたレジスト・ポリマーの設計 2025.7.20
電子線レジストポリマーのGs(100eVあたりの主鎖切断数) 2022.3.28
大学での授業 ポリマー設計 2012.1.12
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